第七夜 ④
☆
放課後、エラはふらふらと教室を後にしていた。今日もいつも通り虐めッ子達が教室を出ていってからこそっと寮に戻るのだ。リチア達と一緒に下校するという手もあるのだが、それをすると次の日に倍になって返ってくる可能性がある。どうにも“灰かぶり”が聖女様や英雄様達と親しくしている光景が気に食わないらしい。
それも“灰かぶり”、半覚醒した魔女だからだろうか…以前よりも過剰に反応されている気がする。
ぐぅぅぅ…。そんなこんなで毎度教室を出るのが遅くなるのだ。しかも今日はお昼にご飯を食べ損ねたので空腹率はMAXだ。
「うう…お腹空いたぁ…」
放課後の人気が少なくなった校内をとぼとぼと歩く。昼間に買ったパンは袋を浸透した水でべちゃべちゃになってしまっていてとても食べたいとは思えないものになっていた。
…あーあ…。買ったパンは食べれたもんじゃないし…エミーユと遭遇したから買い直すことも出来なかったし…。
盛大な腹の虫を鳴らしながらとぼとぼと校門をくぐろうとした時だった。その背に声が掛かった。
「お前、何してんだ?」
よぼよぼを力のない様子で声の方を振り替える。そこにはパンを頬張りながらこちらへと歩いてくるアイザックの姿があった。
「!!」
エラはその手に握られたパンが目に入る。
じゅるり。空腹のあまり見ただけで涎が垂れる。飢えた獣のような構えで目を光らせてくるエラにアイザックはドン引きした。
「はぁ!?お前…!?」
「シャアアアアアア!!!!」
バッ…!!と爪を立ててエラはアイザックに飛び付いた。狙いは勿論、彼の手の中にあるパン。
「こ、こっちくんなああああああ」
放課後の人気のなくなった校門付近でちょっとした悲鳴が響いた。
☆
「おらよッ!!!」
バシンッ!!と目の前に投げ付けられたのはサンドイッチとカレーパンだった。
「い、いっただっきまーす!!」
ぱくんッ!と袋を開けて与えられたパンを頬張る。 頬張るついでにこのパンを用意してくれた彼を見やる。寮までの道に備え付けられたベンチに座るエラとアイザック。空腹でアイザックを襲ったエラに餌付けするようにパンを買い与えたのだ。相当腹が減っていたのだろう。無心でパンに食らい付くエラを見てアイザックは盛大な溜息をついた。
「で、お前…なんで昼飯食いそびれたわけ?」
飽きれ顔でアイザックは紙パックのイチゴミルクを飲んでいる。足を組んで頬杖もついてベンチに座っていた。その隣にはパンをぺろりと平らげたエラが座っている。
「えっとね、それが…」
エラは口元を拭きながら昼休みの出来事を説明した。
「エミーユか…。本来は接触イベントないはずだからなぁ…いよいよ狂ってきてるなぁ」
「やっぱり?私も思ったわ…。てかこの間言ってた直後に出会うんだもの、びっくりしたわよ」
エラも溜息つく。
「んーつか、お前、エミーユに嘘ついてないよな?」
そう言われてドキッとした。嘘、というかのらりくらりかわしたりしたが…。
「えっと?」
「おい…お前忘れてるんじゃないよな?天使族は嘘を嫌うだろ。下手に嘘ついたら好感度がさがっちまうぞ」
「え…!?あ!!!」
そう言えばそんな設定だった。
…あれ?え、セーフ?アウト?兄弟のこととか不穏な空気になったわよね?
サァーっと顔が青くなる。天使族は嘘を嫌い、下手に嘘をつくと今後一切の言葉に信用をしてくれなくなるどころか取り付く島もなくなってしまうのだ。確かエミーユルートでは嘘を何回かつくとBADENDが確定する。




