表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は灰かぶり  作者: 紗吽猫
サブイベント~転生者~
32/166

第六夜 ①



目が覚めたのは見慣れない天井の部屋。

ぼんやりとした頭で周囲を見渡すとそこは学園の保健室であることがわかる。

…保健室…じゃあ、ここは林間学校じゃない…?


ここが林間学校じゃないのならあれから何日経ったんだろうか。起き抜けでぼんやりする頭で考えても埒が空かない。そう思って起き上がろうとしたエラに話し掛けたのは保険医だった。


「あら、起きたのね。体調はどう?」


保険医である女性教師に連れられてエラは再検査を受け、大きな問題はないとのことで寮に帰ることを許された。





寮の自分の部屋に帰って来たエラはまずは今日の日付を確認する。林間学校のあの出来事から五日は経っていた。そして今日は日曜日。授業は休みの日だった。

一息入れたエラはベッドに腰掛けて今後の事を考えようとした時、ふと自身の傷だらけの体を見た。気を失った後、誰かが治癒魔法を掛けてくれたようで擦り傷はほとんど治っていた。だが、火傷の痕や噛み付かれた傷までは治りきっていなかったようで包帯がぐるぐると巻かれている。それでも痛みという痛みはなかったのでこれが魔法なんだなとしみじみと思った。


…そういえば…イオニコフは魔法掛けてくれようとしてたっけ…。

炎獅子の子供から受けた傷を治そうとしてくれたが、一刻も早く炎獅子の親の元に行きたかったからとそれを断った。ギーウィの背中に乗っている間もイオニコフは気に掛けてくれていた。


…それに比べて…。

沸々と怒りが込み上げる。思わずダンッ!と床を勢い良く踏みつけた。


…一体なんなのよあのヒロインと騎士もどきは!!!!目の前にずたぼろの人間がいるのになんの一言も無いなんて!!あの目は飾り???節穴なのかしら!!?


思い起こせばあの場に居たのにリチアもキースもひとっ言も触れてこなかった。いくら本編通りに進むのがお約束と言えどあんまりだ。これがリチアだったら違ったのだろうかとか考えたが、イオニコフやアイザックのように独断で動いていると思われるキャラもいるのだからあの二人も独断で動いてもおかしくないはずだ。

エラはその場で地団駄を踏んだ。全くもって嘆かわしい。本編でかっこよく見えたキースも平凡ながらも聡明だったリチアも、エラの視点から見るとボロが出てくるようだ。そして、如何に彼らにとってはエラという存在が大した価値のなきものであることがはっきりとわかる。そもそも、人としての大事なものも何処かに忘れて来たようでもある。


…所詮は良いとこ取りだもんね。物語なんて。

人が作る物語なぞ基本的に主人公側さえ幸せであればいいというスタンスが多い。そこに至るまでにどれだけの犠牲を払おうとも。


「だけど、私にとっては死活問題よ、これは」


物語の設定上どう足掻いたところでエラにとって不利なのは変わらない。全てが主人公リチア至上主義の世界なのだから。


…そう考えると、イオニコフやアイザックは特殊?本編のイベントではイオニコフとイドラがリチア達の元に駆けつけたのはキースが炎獅子を倒した後のことでしょ。でも今回はイドラは駆けつけて来なかったしイオニコフも何故かリチアの方ではなく私の方を追い掛けて来た。これは…どういうこと?


暫く唸ってはみたものの答えは出そうになかった。確かにリチア至上主義な世界なのは変わっていないと思うし、エラが魔女である以上録な目に合わないのも変わらないだろう。ただ、ただ何かが変わってきている気がする。

…そうよ…こんなに大幅にイベント発生時期だって変わってるもの。エラの居ないところでリチアが確実に攻略対象との親睦を深め好感度を上げているのにも関わらず、物語はあべこべのまま。エラが半覚醒したことだってまだ触れられていない…。


もしかしたら何かまだ手を打てるのかもしれない。

今まではリチアとの縁をほどほどに自分の人生を謳歌することが第一目的と言えばそうだったかもしれないが、魔女として半覚醒した身ではそもそも人間達の社会の中で幸せを掴むこと自体難しいだろう。それ故に目的とするわけにもいかない。


「だとしたら…円満に学園を卒業しつつ魔王軍側に混じるのが無難かしら。でも、いくら魔女でも魔王側に入るのもなぁ…まともな幸せなんてなさそうだし…。けどそもそも半覚醒した身でこの先安穏と卒業までいけるのかしら?そんなわけ…」


ないな。とエラは盛大なため息をついた。少し気を落ち着けようと部屋の中にある簡易キッチンで何か飲み物を飲もうとした時、コップを掴む手に巻かれた包帯が目に映る。


…そうだわ…。あの時のお礼と謝罪を言っておいた方がいいかもしれない。


全身の怪我を心配してくれていたイオニコフにまだ何も伝えていない。彼が味方か敵かはっきりしないからと距離を取っているつもりだが彼は確実に身を案じてくれた場面もある。エラのこのルート上イオニコフはキーパーソンであることは変わらないのだし、印象を悪くしすぎるのは悪手かもしれない。


「…ご機嫌窺いくらいはしておいた方がいいかもしれないわ」


それから、彼が魔女の半覚醒について何処までわかっているかも探りを入れておくべきだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ