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転生先は灰かぶり  作者: 紗吽猫
イベント~林間学校~
31/166

第五夜 ②ー5

「キース…!!!」


「大丈夫だ…!!リチア、下がっていろ…!」


四方八方の木々が燃えている。すっかり炎に囲まれてしまったキースとリチアはその場から逃げ出すことが出来ないでいた。

熱風で肌がチリチリと焼けていくのがわかった。リチアがキースの背に隠れ、キースは片手剣を構える。その視線の先には…。


グルルルル…。

唸り声を上げる大型の魔物。四つ足の獣。百獣の王のような風貌だ。


「こいつは…」


剥き出しの牙、獰猛な獣。鬣が燃え盛っていてその炎が周囲の木々を燃やしていっているようだ。


「…なるほど、こいつがこの火事の原因なんだな」


つまり、こいつを倒せばこの炎は収まるはず。そう考えたキースが自身の剣に氷を纏わせる。そして、剣を構えて大きく踏み込んだ。


「お待ち下さい!!!」


キースが獣に剣を振りかぶったその瞬間に静止する声が聞こえた。その声にキースはピタッと動きを止める。それから声の方を見やる。


燃え盛る森の空に浮かぶ人影。よく見るとそれは一人ではなく、二人おり片方がお姫様抱っこされているようだった。


「え、エラ!? それにイオ様まで…!!!」


空を見上げたリチアがそう叫んだ。


上空に姿を現したのはドラゴンに跨がったイオニコフと彼にお姫様抱っこされたエラだった。上空からドラゴンに睨まれた魔物が少し後退る。

イオニコフがドラゴンのギーウィから飛び降り、エラを地面に降ろす。地面に降ろされた彼女の腕の中には小さな炎の獣。


「…この子はそこにいる炎の獣…炎獅子の子供です」


エラはそう言うと抱えていた子供を地面に降ろす。すると子供は嬉しそうに親の元に駆け寄り、親子は少しばかりじゃれあった。

その様子を見ていたキースは剣をしまう。


「…炎獅子…。エラはよく知っていたな。しかし、どこであの子供を見つけてきたんだ?」


炎獅子とはちょうどこの林間学校と隣接する森のその最深部に生息する火属性の魔物だ。存在こそよく知られているのだがその姿を見た者はほとんど居ない。


…何処で、って…ゲームのシナリオで見たからとしか…。


「…エドワルド様は炎獅子の習性をご存知ですか?彼ら親子ははぐれた際に親が周囲を燃やして明るくすることによって子に居場所を伝えるのです。子はその炎を目指してやって来ますが、この時、子は風下に向かう習性もあるのです」


ゲーム内の展開や会話を思い出しながら説明する。だが、先ほど炎獅子の子に噛まれた腕から広がる痛みに、思考が纏まりきらない。今こうして立っているのだって痩せ我慢でしかないのだ。


「なるほど…」


キースはエラの話に納得したような素振りを見せる。


「じゃあ、この子達は闇雲に襲ってきたわけでは無いのね…。傷つけずに済んで良かったです」


キースの隣でホッと胸を撫で下ろすリチア。そんな彼女にキースも頷く。イオニコフも安堵の笑みを見せた。

それからしばらくすると森に広がっていた炎が消えていき、炎獅子の親子も森の奥深くへと姿を消した。


それを確認したリチアやキース達はその後の展開を物語通りに進めていく。ゲーム本編では子供捜しているだけだったと知らなかったキースに炎獅子の親は倒されてしまう。その後、子供も見つけ事を悟ったリチアがせめてもの罪滅ぼしにその子供を育てることにした、というまでがイベントだった。今回はエラが子供を見つけてきて、かつ親の命も無事だったのでこの後半のシーンはカットされたようだ。

立っているのがやっとだったエラの耳には遠くでする会話にしか聞こえていなかった。止血をしても完治しているわけではない。徐々に傷口から血が流れて失われていく。


…も、う…無理…。


視界が滲み、ぐらりと暗転する。微かに視界に映ったのは何かを叫びながらこちらへ駆けてくるイオニコフの姿だった。



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