第五夜 ②ー2
そうエラが心の中で叫んだと同時か「聖女様がまだ森の中に取り残されてるぞ!」という叫び声が聞こえた。
「何だと!?聖女様まだ森ん中に居んのかよ!?」
アイザックがそう叫びながら燃え盛る森を眺め「じゃあ、助けに行かないと!」と言ってイオニコフとイドラが助けに行こうとした時、さらに叫び声が聞こえた。それもエラにとっては最悪な言葉で。
「あいつだ…!!灰かぶりのエラが聖女を亡き者にしようとしたんだ!」
「火を放ったのはあの“灰かぶりのエラ”だ…!!」
生徒や教師がパニックになっている最中、聞こえたその叫び声に一斉にエラへの視線が集まる。それも「あいつならやりかねない」そんな冷たい視線。隣に居たイオニコフやアイザック、イドラも疑うような視線を向けてきた。
…やめて…そんな目で私を見ないでよ…!!私は何もしてないわよ…!!!
向けられる視線に恐怖を覚えたエラは後退りした。誰も彼もが犯人だと思っている。これは、昨日の半覚醒が影響しているのだろうか。闇属性を嫌う光属性の本能が彼らを突き動かすのだろうか。何の根拠もなくとも犯人に仕立て上げるだけの暴挙を許すのだろうか。
度々見せるイオニコフの態度やアイザックのような脇キャラが灰かぶりのエラの変化に気が付いたりといった出来事に都度淡い期待をしてしまう自分を呪いそうだ。何度、誰も味方になんてなってくれないのだと、再認識すれば気が済むのだろうか。
そう俯いたエラの前に誰かが立つ。思わず見上げて相手を確認する。それは男の人の背中。その背中が逞しく見えた。
「いや、お前らちょっと落ち着けよ!こいつはずっと俺と居たんだ。何にもしてねぇよ…!!!」
アイザックだ。まさか彼がエラを庇うとは誰も思わなかったようで驚いて口をつぐんだ。
…何故…脇キャラのアイザックが私を庇うの!?
信じられない。そんな気持ちでアイザックの背中を見つめる。エラを庇うアイザックを誰もが驚いた様子で呆然と眺めた。
「…アイザック…お前…そいつに何か弱味を握られたんだろ?だからそんなやつを庇うんだろ!?」
「はあ!?お前ら何言ってんだよ!いくらなんでも最近まで落ちこぼれだった奴にそんな小細工できるわけないだろ?!」
生徒の一人が叫んだ言葉にアイザックが言い返す。だが、
…それ…フォローになってないわアイザック…。
彼が必死に庇ってくれていることはわかるのだが、少々ずれている。だがそのお陰で少し冷静になれた。
…アイザックの言うとおり、これは私じゃないわ。ゲームでもエラの仕業では無かったはず…。
ゲーム。そう、この林間学校ではイベントが起きたはず。一つは宝捜しイベントでもう一つはスチルがあるイベント。
…そうだ…この火災はリチアのイベントの一つ…!確かキースの好感度が他のキャラより高い場合に発生するもの…!このイベントの結末は…。
大丈夫。これは覚えている。
エラはアイザック越しに周りを見渡す。アイザックが庇ってくれてはいるが濡れ衣は晴れていない。冷たい視線が体を貫いてくる。ちらりとイオニコフとイドラを見るがこちらも疑うような目をしていた。




