第五夜 ①ー2
その日の夜。飯盒炊飯で行われる夕飯を済ませた所で、教師が肝試しをすると発表した。肝試しを行う森には教師が用意した仕掛けが配置されておりホラー演出の魔法が使用されそこに配置された籠の中にある割符を回収するというもの。生徒はペアを組み、組み合わせは教師があらかじめ決めていたものでするらしい。ゲームをプレイした時はこのシナリオに「小学校か!」と突っ込んだものだ。
…飯盒炊飯、班がリチア達とおなじだったお陰で食いっぱぐれることがなかったのは助かった。他の人が同じだったら私の分は抜きにされるかひっくり返されたりしてただろうし。
そんな事をして一体誰が得をするんだろうといった事をしてくるのが虐めっ子だ。昨日の事を騒がれないだけでも喜ぶべきなのだろうけど。
…属性の問題で虐められるなんて理不尽にも程がある。私が直接何かしたなら報復もわかるけど。
もやもやと考えながら食器の後片付けをしているとリチアがやって来る。
「ねぇ、エラ。今、お話しできる?」
「ええ、構いませんけど…どうかしました?」
「えっと…さっき肝試しのペアが発表されたでしょ?」
「ああ…もしかして交代してほしいという話ですか?」
…確かゲームではリチアのペアは単なるクラスメイトだったはず。でも私のペアはキース・エドワルド。本来の流れるで言うと攻略対象が割り当てられるはずだから今はキースルートということ?
ぼんやりと考えながら受け答えをする。
…そういえば肝試しイベント、これはゲームのシナリオ通りの流れだな。
「えっと…その、言いにくいのだけど…お願い出来る?」
上目遣いで顔の前で手を合わせてお願いしてくる。こういう仕草が出来るのは主人公ならではか自分の可愛さを知っているからか。そんな風にしか考えられない自分を少し嘆かわしくなりながらも話を進めようとした時、ふと思い出す。
確か、話の流れでは肝試しのペアを入れ替わるがこの時エラの順番に合わせて虐めっ子達が罠を仕掛けていた。だがエラの順番と入れ替わったことが原因でリチアと攻略対象がその被害に遭ってしまう。それが恋愛イベントと言えばそうなのだが、聖女様が被害にあったとしてその罠を仕掛けた犯人は灰かぶりのエラだと騒がれるところまでが一連の流れ。
…どうせ肝試し自体はパスするつもりだし…イドラにも警戒されてるわけだからここ変に断ると外聞がよろしくなさそう…。でも本編通りに変わってもダメだから…。
「ええっと、ではエドワルド様とリチア様のペアの方で変わってもらってはいかがでしょう?」
「え?私達ではなくて?」
「…何故、そうなるんだ?」
二人で話し込む洗い場にキースが現れる。その後ろにはクラスメイトの男子。どうやらいなくなったリチアを捜していたようだ。
「簡単な話です。ペアは先生がお決めになったわけですし、聖女様ともあろう方がペアを交代を言い出したなどとは外聞がよろしくないでしょう?それに殿方のイメージにもよろしくありませんし、それでしたら元より王国騎士団の騎士団長様がご両親であるエドワルド様が聖女様を守るために交代を申し出た、という形をとるのがいいかと考えたまでのこと」
出来るだけ淡々と話すようにした。「まぁ、許可が下りればの話ですが」とも付け加えた。全て口から出任せではあるのだが、そういうことにしておけば丸く収まるだろうと考えた。
「…なるほど。では、アイザックには悪いが…俺と変わってもらえるか?」
エラの提案を素直に受け入れたキースがクラスメイトの男子に打診した。
…何て言うか、キースって正義感の塊のような人だけど、結構天然なのよね。おまけにリチアには甘々。
そんなところが女性ウケしたキャラクターだが、こうして一歩引いて見てみるとわかることだがこの男、主人公に忠実過ぎて全く騎士っぽくないのだ。
「…犬かっつーの」
思わず唇を尖らせながらボソッっと周りに聞こえないくらいの声で呟いた。




