第五夜 ①ー1
林間学校二日目。
午前中は教師指導のもと、クラス別魔法学の授業を受けた。
ここでも不思議だったのは昨日の事を誰も騒ぎ立てなかったことだ。
…おかしい…。半覚醒前だってあんなに執拗に虐めてきてたのに…。半覚醒した後で、しかも、あの時は目撃者だって居たのに何故何も起きないの?
この事には頭を傾げるしかなかった。相変わらずイドラはこちらを警戒しているようだが特に何かしてくるわけでもない。ただ、更に不思議なことと言えば、リチアの側にくっついているだろうはずのイオニコフが何故かエラの側にいることだ。
「…あの、オーデルセン様…?」
「ん?なんだい?」
演習の相手をしてくれているイオニコフに尋ねる。
「その…リチア様の方に行かれなくていいんですの?」
「…またそれかい?ボクが誰と一緒に居ようとボクの勝手じゃないか?それとも、相手がボクじゃ不服かい?」
「い、いえ…そういう訳ではありませんが…」
英雄と謳われるイオニコフに演習の相手をしてもらえるという事は光栄なことだ。だが、半覚醒状態の今、これはあまり好ましくない状況だ。
…もしかして、マークされてる?私の属性に気付いてて、様子を窺ってるんじゃ…。
エラはこの穏やかな時間が不気味で仕方がなかった。リチアもキースと演習をしていて、イドラもクラスメイトとしているようだ。他のクラスメイト達も…。確かに、今は教師がいるし表立って騒ぎ立てることはないが、魔女である証拠とも言える闇の魔法、その目撃者がいるのだ。教師に告げ口していてもおかしくはないはずなのに。考えれば考える程の不気味で仕方がない。
…おかしい…絶対におかしい…。そうだわ、この後のイベントってなんだっけ…?そこで何か起きる?
エラはイオニコフとの演習もそこそこに思考の沼に浸かる。林間学校のイベントにはリチアのイベントがあったはず。昨日の宝捜しではスチルはないイベントだった記憶があるのでもうひとつはスチルがある大きなイベントだった…と、うんうん唸る。
この時、うんうん唸っていたエラは気がついていなかったが演習相手を務めていたイオニコフはそんな彼女を見て思いっきり拗ねていた。
…このボクが相手してるのに…気持ちが明後日の方向に向いてるし…!
しかも、彼女はクラス分けでも上位のクラスに分けられるくらい見込みがあるとされたはずなのに全くもってやる気が無いのか小さな魔法でも不発を繰り返している。
…むむむ…。
イオニコフはムスッとした様子でエラを睨む。しかし哀しいかな、この演習中に向けられる彼の視線に記憶の引き出しを開けまくっていたエラには一向に届く気配は無かった。




