第四夜 ②ー1
遠くで宝捜し終了の合図を報せるホイッスルの音が聞こえた気がした。
それでもエラはふらふらと森の中をさ迷い続けている。
戻りたくなかった。このまま学園に戻ってしまうのは良くない。けれど何の解決策も見出だせないままだ。
ふと、足を止めて足元を見つめたまま思考を巡らせた。 何故、エラは学園に入学したのだろう。何故、闇の魔法を使えるのだろう。危険を承知で学園に入学したのだろうか。そんな目的も設定も思い出せない。ただ、わかるのはエラが魔王側の人間でこのまま学園に居続けるのは命の危険があるということ。もう、リチアの取り巻き人生なんて真っ平だ!なんて暢気なことは言っていられない。
ポタ…。
俯いたエラの瞳から大粒の雫が溢れ落ちる。
…何故、こんな思いをしなければならないの?エラは学園に入ってから一度だって反撃したこともなければ言い返したことだって無い。紗夜が転生した後だって争いは避けてきたはず。それでも、魔女なら殺されなければならないのかしら。
そんなの、あんまりじゃないか。そもそもエラはほとんどのルートでリチアの恋のキューピットを演じるだけのポジション。イオニコフルートからの分岐でのみ魔女として覚醒する。つまり、唯一無二の最悪のシナリオと言っても過言ではない。
無意識に瞳から涙が溢れてくる。
「どぉして…ぇ? なんで…こんなルートに転生しちゃうのよ…」
思わず膝から崩れ落ちる。その場にしゃがみこんだ。
地面を見つめる瞳から大粒の雫が溢れ、地面を濡らしていく。
灰かぶりのエラが虐められるのはきっと保有する闇属性の魔力が関係しているはず。魔王と戦ったイオニコフが魔女である灰かぶりのエラを認めるはずもなく、半覚醒している状態で彼が何処まで気づくかもわからない。
…模擬試験の時、彼が手助けしてくれたこと、本当に嬉しかったのにな…。
彼が目の前に現れた時のことを思い出す。
…彼が来てくれて、あの時は本当に嬉しかった。だけど…きっともうそんなことはあり得ないんだわ…。
急に目の前が真っ暗になる。半覚醒したということはいずれは完全覚醒してしまうということだ。仮に半覚醒状態で魔女であることを隠し通せても完全覚醒してしまえばきっと隠しようがない。それならいっそ、このまま学園を去る方がいいんじゃないか。
…そうだわ。リチアの良いようにはなりたくなかった。魔女として完全覚醒してしまえばこの学園で生きられるわけがない。それならいっそ…。
エラは目の前に広がる深い森を見渡す。まるで誰かに呼ばれたかのようにふらっと立ち上がり歩き始めた時だった。
パキン。
と、小枝を踏む音が聞こえてエラは反射的に振り向いた。
「エラ…どうしたんだい…?泣いてるの?」
そこには漆黒の髪を揺らしながら心配そうな様子でこちらを見てくるイオニコフが立っていた。彼の隣には相棒のドラゴン、ギーウィも控えている。
「…っ」
エラは咄嗟にその場を逃げ出した。




