第7話 勉強会と近すぎる距離
いつも読んでいただきありがとうございます。
体育祭が終わって数日。
教室には、重たい空気が漂っていた。
黒板に大きく書かれた文字。
中間テストまで あと7日
「終わった……」
陽向が机に突っ伏す。
「まだ始まってもないよ?」
結菜が呆れながら笑った。
「無理だって……」
「数学とか呪文だろ」
「英語も何言ってるか分かんねぇし」
完全に諦め顔だった。
その日の放課後。
廊下。
黒瀬は陽向を呼び止めた。
「勉強しろ」
「してる」
「してねぇ顔してる」
「なんで顔で分かるんだよ」
黒瀬はため息をつく。
そして。
「結菜に教えてもらえ」
陽向が止まる。
「え?」
「結菜、頭いいだろ」
「まぁ……」
「なら決まりだ」
「でも迷惑じゃ――」
「ならねぇよ」
即答だった。
一方その頃。
別クラス。
白石も結菜に声をかけていた。
「陽向に勉強教えなさい」
「えっ?」
「どうせ危ないんでしょ」
「う、うん……」
「なら決まり」
結菜は少し頬を赤くする。
「2人で……?」
白石は真顔だった。
「当然よ」
翌日。
放課後。
図書室。
「よろしくお願いします……」
陽向が妙に緊張している。
「こちらこそ」
結菜も少し赤い。
静かな図書室。
2人きり。
なんだか落ち着かない。
「じゃあ、まず数学から」
「やだ」
「やるの」
即答だった。
結菜がノートを広げる。
「ここ、なんでこうなるか分かる?」
「全然」
「じゃあ見るね」
結菜が陽向の隣へ移動する。
ぴたっ。
肩が触れた。
陽向、停止。
結菜も少し固まる。
「え、えっと……」
「ご、ごめん」
離れようとする。
だが。
机が狭い。
思ったより距離が取れない。
結局。
そのまま。
「ここはこう」
結菜がノートに書き込む。
ふわりと揺れた髪が、陽向の肩に触れる。
ほのかに甘い香り。
陽向、完全停止。
「陽向?」
「……へ?」
「聞いてる?」
「聞いてる!」
聞いていなかった。
結菜がくすっと笑う。
「集中してよ」
陽向は思わず本音を漏らした。
「無理」
「なんで!?」
結菜が真っ赤になる。
「近い」
一瞬、沈黙。
「~~っ!」
結菜は慌てて離れようとする。
だが。
椅子の脚が引っかかった。
「きゃっ」
倒れそうになった結菜を。
陽向が反射的に支える。
気づけば。
結菜は陽向の腕の中。
顔の距離、数センチ。
「……」
「……」
空気が止まる。
その時。
司書の先生が通りかかった。
そして。
にっこり笑う。
「学校だから、ほどほどにね」
「「違います!!」」
声が綺麗に重なった。
数時間後。
勉強終了。
「ありがとう」
陽向が素直に頭を下げる。
「ううん」
結菜が笑った。
「ちゃんと分かってたよ」
「先生が良かったから」
結菜が少し照れる。
「そ、そうかな」
帰り道。
2人で並んで歩く。
夕暮れの道。
少し静かだった。
しばらくして。
結菜が小さく聞く。
「じゃあ……テストまで毎日、一緒にやる?」
陽向は少し驚いて。
それから笑った。
「お願いする」
結菜の顔がぱっと明るくなる。
「うん!」
翌日。
廊下。
黒瀬が聞く。
「どうだった」
陽向は少し照れながら答える。
「明日も結菜と勉強」
黒瀬、停止。
そして。
心の中で静かに拳を握る。
(よし)
同時刻。
白石も結菜に聞いていた。
「どうだった?」
結菜は嬉しそうに笑う。
「明日も一緒なの」
白石もまた。
小さく頷いた。
(ついに日常になった……)
テストまで、あと6日。
2人の距離は。
また少しだけ、近づいていた。
今後もよろしくお願い致します。




