第3話 良いお嫁さん
いつも読んでいただきありがとうございます。
昼休み。
「陽向、今日休みなんだって」
白石の言葉に、結菜が目を丸くする。
「風邪?」
白石が頷いた。
「結構熱あるみたい」
その瞬間。
結菜の表情が一気に曇る。
分かりやすい。
「だ、大丈夫かな……」
スマホを見つめながら、小さく呟く。
白石は確信した。
(重症ね)
風邪ではなく、恋の方が。
「お見舞い、行ってきなよ」
「えっ!?」
結菜が真っ赤になる。
「迷惑じゃないかな……」
「弱ってる時って、本当に好きな人が分かるの」
白石は真顔で言った。
結菜、停止。
耳まで赤い。
「す、好きな人って……!」
「あと料理」
「料理!?」
「手料理は強い」
「む、無理だよぉ!」
数十分後。
結菜はスーパーにいた。
スマホには、白石から送られてきたレシピ。
『簡単おかゆ』
「……簡単?」
結菜は不安そうだった。
一方その頃。
陽向の部屋。
「悪いな……」
ベッドの上で、陽向がぼんやり呟く。
その横には黒瀬。
マスク装備。
「いいから寝てろ」
呆れながらスポーツドリンクを置く。
その時。
陽向のスマホが鳴った。
『今からお見舞い行っていい?』
結菜。
黒瀬、停止。
(来た)
イベントだ。
完全にイベント。
「俺帰るわ」
「え?」
陽向が顔を上げる。
「なんで?」
黒瀬は真顔だった。
「空気読め」
「???」
全く分かっていない。
数十分後。
ピンポーン。
「結菜です……」
少し緊張した声。
「入れー」
陽向の声も、少し嬉しそうだった。
「うわっ……顔赤い」
部屋に入った瞬間、結菜が慌てる。
「熱ある?」
「まぁな……」
すると結菜は部屋を見回した。
「あれ、体温計は?」
「どっかいった」
「えぇ……」
少し悩んで。
結菜は、小さく言った。
「じゃ、じゃあちょっとだけ……」
そして。
コツン。
おでことおでこ。
陽向、停止。
近い。
近すぎる。
結菜の顔も真っ赤だった。
「……熱い」
「そ、そう?」
「うん……」
何故か2人とも黙る。
空気だけ恋愛だった。
その後。
結菜は濡れタオルを替えたり、水を持ってきたり。
妙に慣れていた。
「……ありがとな」
「ううん」
結菜が笑う。
「陽向、昔からすぐ無茶するし」
「そんなしてねぇよ」
「してる」
即答だった。
「そ、それでね!」
結菜が立ち上がる。
「おかゆ作ってきたの!」
「マジ?」
陽向が少し嬉しそうになる。
だが。
蓋を開けた瞬間。
2人とも固まった。
水分がない。
少し炒めたみたいになっている。
色もなんだか洋風だった。
沈黙。
陽向
「……ピラフ?」
結菜
「えっ!?」
結菜が容器を覗き込む。
「な、なんで!?」
「途中まではおかゆだったの!」
「途中で何があったんだよ」
陽向が笑う。
「だ、だって栄養あった方がいいかなって!」
「味もつけたくて!」
「そしたら水なくなって!」
「気づいたらこうなってた!」
陽向、笑い始める。
「ははっ……何それ」
「笑わないでよぉ……!」
でも。
陽向は1口食べた。
結菜、不安そう。
「……どう?」
少し沈黙。
そして。
「うまい」
「ほんと!?」
結菜の顔が一気に明るくなる。
「風邪じゃなかったらもっと食えた」
「やった……!」
本当に嬉しそうだった。
「汗すごいし、着替えた方がいいんじゃ……」
結菜が小さく言う。
陽向、固まる。
「……え?」
「い、いや!1人でできるならいいんだけど!」
結菜も真っ赤だった。
空気がおかしい。
その時。
ガチャ。
「あら?」
陽向の母だった。
数分後。
リビング。
「結菜ちゃん、ほんと優しいわねぇ」
「い、いえ!」
「小さい頃からずっと一緒だものねぇ」
結菜が少し笑う。
「はい。昔からずっと一緒なので」
母親は、楽しそうに微笑んだ。
「良いお嫁さんになりそうねぇ」
翌日。
「看病どうだった?」
白石が聞く。
結菜は照れながら笑った。
「すごく楽しかった!」
白石、確信する。
(決まったわね)
同時刻。
「どうだった」
黒瀬も聞く。
陽向は少し笑っていた。
「結菜来てくれてさ」
「なんか安心した」
黒瀬、確信する。
(決まりだな)
そして。
2人の声が重なる。
「まるで家族みたいだよねって話した!」
「兄妹みたいな感じだよなって!」
沈黙。
「「何でだよ!!!!」」
看病イベント。
進展、したようで。
やっぱり、していなかった。
今後もよろしくお願い致します。




