第2話 恋愛映画のはずだった
いつも読んでいただきありがとうございます。
「映画?」
昼休み。
陽向は黒瀬の顔を見た。
「ああ。今週公開の恋愛映画、評判いいらしいぞ」
黒瀬はスマホを見せる。
いかにも女子が好きそうな青春恋愛映画。
「へぇ……」
陽向は少しだけ考え込んだ。
そして、小さく呟く。
「結菜、こういうの好きかな」
黒瀬は心の中でガッツポーズする。
(よし)
いい流れだ。
「誘ってみれば?」
できるだけ自然に言う。
陽向は真剣な顔になった。
「でもなぁ……」
「結菜、俺と2人とか嫌じゃねぇかな」
黒瀬、停止。
(何を言ってるんだこいつは)
毎日一緒に帰っている。
毎日昼を食べている。
毎日笑っている。
クラスでは完全に“付き合ってる扱い”だ。
なのに。
「大丈夫だろ」
黒瀬は即答した。
「映画?」
放課後。
結菜は目を輝かせた。
「陽向から誘われたの!」
白石は静かに微笑む。
だが内心は違う。
(来た)
ついに来た。
長かった。
ここで決まる可能性すらある。
「でも……」
結菜は少し顔を赤くする。
「これってどういう意味だと思う?」
「どういう意味?」
「友達として……だよね」
白石は遠くを見た。
(絶対違う…)
だが、ここで白石は考える。
一押し必要。
感情を揺らせば進む。
「ねえ結菜」
「ん?」
「私の知り合いも誘っていい?」
「いいよ!」
即答。
「陽向とも仲良くなりたいって言ってたし」
もちろん嘘である。
映画当日。
待ち合わせ場所。
陽向と結菜は、すでに楽しそうだった。
「結菜、その服可愛いな」
「え!?」
顔が赤くなる。
「そ、そうかな……」
「うん。似合ってる」
本人に自覚なし。
破壊力だけ高い。
そこへ。
「お待たせ」
白石が現れる。
さらに後ろから男子が1人。
「どうもー」
明るそうな男子だった。
陽向の眉が少しだけ動く。
「誰?」
「白石の知り合いだって」
結菜が笑う。
陽向は「ふーん」とだけ返した。
だが。
何か面白くない。
理由は分からない。
(効いてる)
白石は見逃さなかった。
陽向が、結菜の隣から男子を遠ざけるように歩いている。
嫉妬。
完璧だった。
「じゃあ私は帰るね」
白石が突然言った。
「え?」
結菜が驚く。
「予定思い出したの」
当然嘘。
目的は達成した。
あとは2人の感情が動けばいい。
館内。
席に座る。
陽向の隣に結菜。
その隣に男子。
映画が始まる。
暗転。
そして――
画面いっぱいに映る、血まみれの女。
「…………え?」
結菜が固まる。
次の瞬間。
絶叫。
完全にホラー映画だった。
「陽向」
男子が引いている。
「これ恋愛映画じゃないの?」
陽向はチケットを見る。
数秒沈黙。
「あ」
嫌な予感。
「上映時間、間違えた」
その瞬間。
ギャアアアアア!!
館内に悲鳴が響く。
男子が立ち上がる。
「ごめん俺無理!!!」
逃げた。
早かった。
驚くほど早かった。
残されたのは。
陽向と結菜。
2人だけ。
「ひぅっ……!」
結菜が陽向の腕を掴む。
かなり強く。
「だ、大丈夫か?」
「む、無理ぃ……」
涙目だった。
次の悲鳴で、さらにくっつく。
近い。
近すぎる。
陽向の心臓がうるさい。
でもそれ以上に。
「守らなきゃ」
そればかり考えていた。
映画終了後。
結菜はぐったりしていた。
「こ、怖かった……」
「悪い、ほんと悪い」
陽向は苦笑する。
すると結菜が、小さく笑った。
「でも、楽しかった」
「え?」
「陽向いたし」
陽向、停止。
顔が赤い。
だが結菜は気づかない。
「また来たいなぁ」
その言葉に、陽向は笑った。
「じゃあ今度はちゃんとした映画見ようぜ」
「うん!」
翌日。
「映画どうだった?」
白石が聞く。
結菜は満面の笑みだった。
「楽しかった!」
白石、安心する。
(決まったな)
そう思った。
同時刻。
「映画どうだった?」
黒瀬も聞く。
陽向は笑っていた。
「かなり良かった」
「帰りも結構話したし」
黒瀬、確信する。
(決まりだな)
結菜&陽向
「今度はみんなで行こうって話した」
沈黙。
別の場所。
しかし。
2人の声だけが、綺麗に重なった。
「「何でだよ!!!!」」
映画作戦、失敗。
でも。
2人の距離だけは、また少し縮まっていた。
2話も楽しんで頂けたのなら幸いです。




