スピンオフ1話 すれ違う放課後
スピンオフちょっとだけ続きます、読んでくれると嬉しいです。
放課後。
いつもの教室。
「じゃあまた明日!」
「うん、またね」
陽向と結菜は校門前で笑い合っていた。
いつも通り。
自然に並んで歩き出す。
……はずだった。
「陽向先輩!」
不意に、後ろから声が響く。
振り返ると、1人の女子生徒が立っていた。
見覚えはある。
1つ下の学年の後輩だ。
頬を赤くし、どこか緊張している。
「ちょっと、話があるんです」
「え? 俺?」
陽向が目を丸くする。
「少しだけでいいので……」
その真剣な様子に、陽向は戸惑いながらも頷いた。
「ごめん結菜、先帰ってて」
「う、うん」
結菜は少しだけ不思議そうにしながらも、小さく手を振って1人で帰っていった。
翌日。
放課後。
今度は結菜が校門を出たところで、一人の男子生徒に呼び止められた。
「結菜先輩!」
振り返る。
同じく後輩。
少し緊張したように立っている。
「話したいことがあるんです」
「え?」
結菜は首を傾げながらも足を止めた。
その日もまた。
陽向と結菜は別々に帰った。
学校ではいつも通りだった。
休み時間。
楽しそうに笑い合い、
昼休みも自然に会話している。
何も変わらない。
なのに。
放課後だけ、別々になる。
その異変に気づいたのは黒瀬だった。
帰宅途中。
ふと前を見る。
そこには陽向がいた。
そして、その隣には見知らぬ女子生徒。
「……え?」
黒瀬は思わず立ち止まる。
遠目でも分かった。
髪型が違う。
背丈も違う。
結菜ではない。
「なんで……?」
その日の夜。
黒瀬はすぐに陽向へ電話をかけた。
『もしもし?』
「陽向。最近、結菜とケンカしたのか?」
『え?』
受話器の向こうで、陽向が明らかに動揺する。
『してないけど……いきなりどうしたんだよ?』
黒瀬は低い声で言った。
「今日、お前知らない女と歩いてたよな」
沈黙。
『……っ』
「制服、同じだったぞ」
陽向はしばらく黙り込んだあと、
明らかに不自然な声で言った。
『み、道を聞かれたんだよ!』
「……は?」
『ご、ごめん! 呼ばれたから切る!』
ぶつり。
通話終了。
黒瀬はスマホを見つめた。
静まり返る部屋。
「……結菜のこと、嫌いになったのか?」
すぐに首を振る。
「いや……」
結菜を見るたび、あいつは分かりやすいくらい嬉しそうだ。
あんなに好きそうなのに。
「じゃあなんなんだよ……」
同じ頃。
白石もまた、帰り道で結菜の隣に知らない男子生徒がいるのを目撃していた。
翌日。
白石は結菜を問い詰めた。
「陽向はどうしたの?」
「え?」
「嫌いになったの?」
「ち、違うよ!」
白石が鋭く見つめる。
「じゃあ、あの男は誰」
結菜は目を泳がせた。
そして。
「み、道を聞かれたんだよ!」
白石は頭を抱えた。
(陽向と同じ言い訳……この2人…)
その日の放課後。
学校ではいつも通り楽しそうに話していた2人。
黒瀬と白石は少し安心する。
だが――
また別々に帰っていく。
そして。
昨日と同じように、それぞれ別の異性と合流した。
「……もう聞くしかねぇ」
黒瀬は意を決して陽向へ歩み寄った。
「陽向。その人、誰だ?」
「ひっ!?」
陽向が漫画みたいに肩を跳ねさせる。
「なんだそのリアクション」
「な、なんでもないよ!」
隣の女子生徒は顔を真っ赤にして俯いていた。
「ちゃんと説明しろ。結菜はどうした?」
陽向が困ったように頭をかく。
「……バレちゃったか」
そして。
陽向は女子生徒の方を向いて言った。
「ごめん」
黒瀬の頭が混乱する。
(は?)
「どういうことだよ!?」
陽向は女子生徒に優しく促した。
「ちゃんと言おう」
女子生徒は震える声で言った。
「わ、私……」
「紗奈です…」
ぎゅっと制服の裾を握る。
「黒瀬先輩のことが……好きなんです」
黒瀬は固まった。
「……は?」
陽向が苦笑する。
「相談されてたんだよ」
「黒瀬のことが好きだから、どうしたらいいかって」
同じ頃。
結菜もまた、白石に同じ説明をしていた。
後輩男子、悠斗が真っ赤になりながら頭を下げる。
「白石先輩が好きなんです!」
数分後。
事情を知った黒瀬と白石の心の声は、綺麗に重なった。
(俺より、お前は自分のことだろ!!)
(私より、あなたは自分のことでしょ!!)
やがて。
黒瀬は真剣な顔で紗奈に向き直った。
「……ごめん」
「今は、恋愛できる状況じゃない」
「だから、ごめんな」
紗奈は目を潤ませながらも、しっかり頷いた。
「……はい」
少し間を置いて。
「でも、好きでいるのは……いいですか?」
黒瀬の顔が赤くなる。
「……ああ」
「ありがとな」
白石もまた、誠実に断っていた。
そして。
紗奈と悠斗たちが帰ったあと。
陽向がぽつりと言う。
「付き合えばよかったのに」
結菜も頷く。
「お似合いだったよ?」
一瞬の沈黙。
そして。
黒瀬と白石の声が綺麗に重なった。
「「お前が言うなぁぁぁーー!!!」」
夕暮れの空に、
その叫びが響き渡った。
読んでいただきありがとうございます。
もう少しお付き合いください。




