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親友、限界です。  作者: アル治


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12/15

最終話  名前のない気持ち

いつも読んでいただきありがとうございます。

最終話になります。

ありがとうございました。

修学旅行、3日目。

朝。

ホテル前には全員が集合していた。

2泊3日の京都も、今日で終わり。

少し眠たそうな顔。

名残惜しそうな表情。

それでもバスに乗れば、すぐに賑やかな空気に包まれた。

「お菓子まだあるぞー!」

「それ昨日買ったやつじゃん!」

「おい、お土産もう開けてる!」

ゲームをする者。

写真を見返す者。

思い出話で盛り上がる者。

楽しい時間は本当にあっという間だった。

気づけばバスは宇治へ到着していた。

平等院を巡り、

静かな参道を歩き、

宇治の街並みを楽しむ。

そして最後。

公園内で自由行動となった。

京都で過ごす最後の時間。

みんなそれぞれ、名残を惜しむように散っていく。

陽向と結菜は、公園のベンチに並んで座っていた。

手には冷たい抹茶ドリンク。

「もう終わりかぁ」

陽向が空を見上げる。

「早かったね」

結菜も小さく笑った。

「めちゃくちゃ楽しかった」

「うん」

「また来たいな」

結菜が頷く。

「うん。またみんなでね」

陽向も笑う。

「だな」

少し離れた場所。

その様子を見つめる二つの影があった。

黒瀬。

そして白石。

ふと。

2人の目が合う。

昨日と同じ。

だが今日は、どちらも視線を逸らさなかった。

黒瀬が顎で近くのベンチを指す。

白石が静かに頷く。

2人は少し離れたベンチへ腰を下ろした。

黒瀬が口を開く。

「聞きたいことがある」

白石も視線を向ける。

「私もよ」

少しの沈黙。

黒瀬。

「……白石、だっけ」

「お前、陽向狙ってるのか?」

白石の眉がぴくりと動く。

「黒瀬、だったわね」

「あなたこそ、結菜が好きなの?」

2人同時に目を見開く。

「好きじゃねぇよ!」

「違うわよ!」

言葉がぴたりと重なった。

沈黙。

どちらも目を逸らさない。

やがて。

黒瀬が少し笑う。

「……もしかして」

白石も小さく口元を緩める。

「ひょっとして」

そして。

2人の言葉が綺麗に重なった。

「「あいつらを付き合わせようとしてる?」」

数秒。

静寂。

そして次の瞬間。

2人は同時に吹き出した。

「ははっ」

「ふふっ」

黒瀬が肩をすくめる。

「同士か」

白石も頷いた。

「仲間ね」

黒瀬が少し照れたように言う。

「時間取らせて悪かったな」

白石は首を振る。

「ううん。話せてよかった」

2人は同時に、

少し離れた場所で楽しそうに笑う陽向と結菜を見る。

(これなら、いける)

そんな確信があった。

やがて観光は終わり。

京都駅。

新幹線ホーム。

旅の終わりの空気が漂っていた。

陽向はどこか寂しそうに立っている。

それに気づいた結菜が隣に立った。

「寂しいの?」

陽向は少し笑う。

「うん」

「楽しかったから」

結菜も頷く。

「私も」

少しの沈黙。

陽向がぽつりと呟く。

「もっとここにいたかったな」

結菜は優しく笑った。

「また来ようよ」

「え?」

「今度はもっとゆっくり、いっぱい遊ぼう」

陽向の表情が少し明るくなる。

「……そうだな」

「また来よう。絶対」

結菜が大きく頷く。

「うん!」

少し離れた場所。

黒瀬と白石が並んでその様子を見ていた。

いつの間にか、

ごく自然に隣に立っていた。

そして数日後。

日常が戻った。

学校では会っている。

話もしている。

いつも通りだ。

なのに。

陽向はどこか元気がなかった。

放課後。

黒瀬が声をかける。

「どうした?」

陽向はスマホを見つめたまま答える。

「いや……なんかさ」

言葉を濁す。

黒瀬は察した。

「結菜とちゃんと会ってるか?」

「学校で会ってる」

「学校以外は?」

陽向が黙る。

黒瀬が即答した。

「メールしろ」

「でも……」

「しろって!」

同じ頃。

結菜もまた、白石に問い詰められていた。

「連絡しなさい」

「で、でも……」

「いいから!」

そして。

黒瀬からのメッセージが白石へ届く。

『そっちは?』

すぐ返信。

『こっちも同じ』

二人はほぼ同時にいった。

『今すぐ連絡しろ』

ようやく。

陽向と結菜は互いにメッセージを送った。

待ち合わせ場所は、

いつもの公園。

夕暮れ。

先に来ていた陽向のもとへ、結菜がやってくる。

「久しぶり」

結菜がくすっと笑う。

「学校で会ってるよ」

一瞬の沈黙。

そして。

2人同時に笑った。

笑いが落ち着く。

静かな時間。

やがて。

陽向が口を開いた。

「旅行のあとさ」

「なんかずっと寂しくて」

結菜が驚いたように目を瞬く。

そして。

少し照れながら答えた。

「……実は私も」

陽向が少し笑う。

「やっぱり」

夕暮れの風が吹く。

陽向がまっすぐ前を見たまま言う。

「やっぱ結菜といると、一番楽しい」

結菜も微笑む。

「私も」

「陽向といると落ち着く」

陽向が振り向く。

今までで一番、嬉しそうな顔だった。

「俺たちさ」

「これからも最高の親友でいような」

結菜の顔がぱっと明るくなる。

「うん!」

「ずっと親友!」

「大人になっても?」

「もちろん」

「また京都も行こうな」

「絶対」

2人は、

今までで一番の笑顔で笑い合った。

その少し離れた場所。

木の陰から見守る二つの影。

黒瀬。

白石。

2人はゆっくり顔を見合わせる。

深く息を吸い込み。

そして。

声を揃えて叫んだ。

「「なんでだよぉーーーー!!!!」」

その叫びは夕暮れの空へ響き渡った。

この2人はまだ、

その気持ちに名前(「恋愛」)をつけられない。

それでもきっと――

いつか。

END

今まで読んでいただきありがとうございました。

スピンオフを後で載せるので完結は少し先になりますね。ご了承下さい。

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