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棒人間の冒険  作者: 五井緑 ナサ
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第5章 悪魔襲来

同時刻 廃墟街

 彼らの前に現れた巨大な影は、異様な圧を放っている。

「こいつがSか…」

「油断するな!どんな攻撃を仕掛けてくるか分からないぞ…!」

 全員が警戒を解かず、緊張に満ちたまま戦闘態勢を維持する。

 すると巨大な影の奥から声が聞こえてくる。

「この世界に異物を検知した」

一人で喋っているはずなのに、背後に何十人もの囁きが付きまとっているように聞こえる。

「貴様らか」

 ゆっくりとカイトと美咲を指差す。

「見た所、"過去に現れた異物"とはまた別物のようだな」

 次の瞬間、二人を掴み取るかのように巨大な手が伸びる。

ルーはその手を素早く薙ぎ払った。

「二人とも我々の後ろにいるんだ!こいつは危険だ!」

 号令と同時に部隊の兵が一斉に攻撃を仕掛ける。

「お前らに用はない」

低く響く声とともに振るわれた腕が、前列の兵士たちをまとめて吹き飛ばした。

 その勢いは凄まじく、目の前にいた部隊の兵が一瞬で吹き飛ばされ、瓦礫に叩きつけられた。

「はあぁぁっっ!!」

ルーとアナベルが凄まじい速度で攻撃を仕掛ける。しかし傷一つ付いていないようだ。

「な、なにっ…?!」

「私のナイフでも通じないのか…!」

 刃は確かに触れているはずなのに、まるで存在していないかのように弾かれていた。

「邪魔だ」

 巨大な体の各所が一斉に発光する。次の瞬間、無数のビームが放たれた。建物も瓦礫も、光に触れた瞬間に溶解していく。周囲を薙ぎ払うように破壊したその光が、美咲へ収束する。

「まずは貴様だ」

「逃げろっ!!」

 ルーの叫びが響く。

「……え…?…」

 恐怖で体が固まっている。ビームは、美咲に向けて発射される。そこで不思議な事が起こった。美咲に当たるはずだったビームは突如として軌道を変え、Sに向かっていく。それを間一髪で避ける。

「な、何が起こったの…?」

 カイトが駆け寄る。

「大丈夫?!」

「うん…特に何も……」

 息を整えながら答えるその姿を、Sはじっと見下ろしていた。

「なるほど…貴様がそうなのか。ならいい、今回は退かせてもらう」

 次の瞬間には、廃墟の闇へと溶けるように消えていた。

「消えた…」

 張り詰めていた空気が、わずかに緩む。

「何が目的でここに現れたんだアイツは…」

 アナベルは倒れていたルーに手を差し出し、引き起こす。 

「分からない。だけど私はあっちの方が不思議に思った」

 ルーは美咲の方を見る。

 (なぜビー厶を弾いた?あの子は、まだ何か隠している事があるのか?それとも本人は気づいていない何かがあるのか?)

 これは、まだ全ての出来事の始まりに過ぎない。しかし確実に真相へと近づいていた。

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