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棒人間の冒険  作者: 五井緑 ナサ
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第9章 儚く散る

同時刻 ヒロシマ基地

 先ほどの戦闘から帰還した四人は、傷の手当てを受けていた。

「隊長、何か戦果はありましたか?」

 基地の兵士がルーに尋ねる。

「かなり大きい戦果を得た。全員の準備ができ次第、情報共有と作戦会議を行う」

 その横で、美咲はベッドに腰掛けていた。

(大丈夫……かな……)

 ふと、ウプシロンのことを思い出す。

 その瞬間、辺りが紫色に光り、目の前に人影が現れた。

 ――ウプシロンだった。

「……ウプシロン……」

「ああ、美咲さん……でしたっけ」

 美咲は俯いたまま答えない。

「すみません。やられてしまいました。ここに呼び出されたということは、多分僕はもう……」

 美咲が顔を上げ、少し強い口調で言う。

「妹さんに……! 会うんじゃなかったんですか……!」

 彼は黙り込む。

「妹さんも……あなたに会うのを待っているはずです……だから……!」

「いいんです……妹が助かれば」

 静かに、しかしはっきりと彼は言った。

「元はといえば、僕が悪いんです……」

 彼はゆっくりと語り始める。

「その日……些細なことで喧嘩をしてしまって。怒った妹が家を飛び出して……心配になって後を追いかけたんです」

 一度言葉を切る。

「そしたら……妹が何人かに無理やり連れて行かれそうになっていて……。助けようとしたんですが、結局……二人とも捕まってしまって……」

「それなら……!!」

 美咲は思わず立ち上がる。

「生きて……生きて妹さんに謝ってください! 喧嘩のままなんて……そんな別れ方、悲しいじゃないですか……!」

 彼は目を見開いた。

 その瞳には、妹の姿が映っている。

「優です……僕の名前」

 静かに告げる。

「妹は、青山光って言います」

「……え……?」

「今こうして話せているのは……たぶん、僕たちの真力が共鳴したからでしょう」

 彼の姿が、徐々に薄れていく。

「待って……!」

「妹を……よろしくお願いします、美咲さん」

 涙を流しながら、彼は笑った。

 そして、そのまま消えていった。

 同時に、周囲は元の部屋へと戻る。

 美咲の頬を、涙が伝った。

(許せない……こんな残酷なこと……)

 美咲は涙を拭う。

「絶対に助けるから……見守っていて、優さん」

 その様子を、物陰からカイトが見ていた。

 美咲の言葉を聞きながら、彼もまた静かに涙を流す。

 この別れは、美咲をさらに強くした。

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