第七切通し異常事案・上申書
見難い火傷の子681
第七切通し異常事案・上申書
深淵ダンジョン第十七エリア、第四紀完新世層
鉄の時代
この地では、人を除く多くの生きものが八倍の大きさで生きている。
件名:第七切通し異常事案に係る境界案件認定並びに封鎖継続等要請の件
玄州関係上司各位
深淵ダンジョン第十七エリア第四紀完新世層工区第七切通しにおいて発生した異常事案につき、
現時点で確認した事項を下記のとおり上申いたします。
本件は当初、土木事故及び発熱者発生を伴う衛生案件として処理を開始したものですが、
その後の現場確認により、通常の事故、
疾病及び遺体管理不備の範囲を超える異常性が認められました。
ついては、本件を暫定的に境界案件として取り扱い、
工区封鎖その他必要措置の継続並びに専門対処の付与を要請いたします。
一 発生場所
第七切通し水抜き溝周辺、北側仮設幕舎周辺及び井戸場周辺。
二 発生経緯
本日午前、第七切通し周辺において発熱者複数名が確認され、
そのうち一名につき嘔吐及び呼吸器症状の報告がありました。
同時刻帯、北側仮設幕舎に安置していた遺体一体の所在不明が判明しました。
その後、当該遺体と見られる対象が第七切通し水抜き溝において発見されたとの急報を受け、
記録用オートマタ及び監視用オートマタを同行させ、現場確認を実施しました。
三 現場確認結果
現場において発見された対象は、安置遺体と同一個体である可能性が高いと判断されます。
衣類、脚絆その他外形上の特徴が一致しました。
以下、便宜上、当該対象を「遺体様個体」と記します。
周辺泥濘地には降雨の影響があるものの、
通常想定される複数人による人力搬送痕は明瞭に確認されませんでした。
ただし、降雨により浅い痕跡の一部が判別困難となっている可能性は否定できません。
加えて、遺体様個体は不自然な姿勢で直立に近い状態を保持しており、現場確認中、
その背部より黒色索状の異常体が露出しました。
当該異常体は、遺体様個体の筋骨格を利用してこれを支持又は移動させている可能性が高く、
少なくとも通常の死後変化、痙攣又は誤認の範囲には収まりません。
したがって、本件は単なる遺体移動事案ではなく、
何らかの寄生性又は侵襲性の異常体が
宿主個体を運用している疑いが極めて強いものと認められます。
四 付随異常
一 発熱者につき、咳及びうわごと等の報告あり。
二 井戸場及び水抜き溝周辺に異常の集中が認められること。
三 降雨に伴い、水系を介した拡散可能性が上昇していること。
四 現場目撃者が複数存在し、風聞拡散の危険が大であること。
五 切通し上方において不審な人影一件を視認し、
監視用オートマタにより記録済みであること。
ただし、現時点において本件との直接関係は未確定。
五 現時点で実施済みの措置
一 第七切通しの即時閉鎖。
二 北側幕舎及び井戸場周辺の封鎖。
三 発熱者の分離。
四 遺体様個体への接触禁止。
五 封鎖線の二重化。
六 水下区域への立入制限。
七 記録用オートマタ及び監視用オートマタによる現場保存並びに証言採取の開始。
六 懸念事項
本件は単一遺体の異常挙動にとどまらず、水系を介した感染、
寄生又は繁殖の可能性を否定できません。
仮に同種事案が複数宿主に及ぶ場合、工区内にとどまらず、周辺宿舎、
農地及び水利系統へ影響が及ぶおそれがあります。
また、目撃情報が「歩く死体」等の形で流布した場合、労務停止、周辺住民の抗議、病人隠し、
封鎖破り等の二次混乱を招来する危険があります。
七 要請事項
一 本件を暫定境界案件として正式認定すること。
二 水系調査並びに病理及び寄生性異常体対処に通じた専門人員を派遣すること。
三 遺体処置につき、焼却、隔離及び封印を含む上位判断を付与すること。
四 周辺水利に対する一時統制権限を拡張すること。
五 周辺住民対応及び風聞拡散抑制のための行政支援人員を配置すること。
六 必要に応じ、討伐、追跡及び水脈遡行調査を含む追加任務を発令すること。
八 所見
本件は、表向きには衛生異常及び工区封鎖案件として処理する余地がありますが、
内部処理としてはそれのみでは不十分です。
少なくとも現場で確認した異常体は、
生存宿主又は死後宿主の運用を可能とする性質を有する疑いがあり、通常の衛生、
治安又は工務のいずれか単独では対処困難と判断されます。
よって、早期に専門的介入を行わなければ、事態の拡大を防止し難いものと認めます。
以上、取り急ぎ上申いたします。
追加記録及び監視用オートマタ記録の整理が済み次第、別紙にて追送いたします。
玄州境界案件対策ギルド
臨時執政官役 張良




