モンゴル禍終結宣言
見難い火傷の子578
モンゴル禍終結宣言
深淵ダンジョン第十六エリア、第四紀完新世層
青銅の時代
この地では、生きるものすべてが八倍の大きさで存在する。
ここに、北方草原より発した一連の騒擾、侵攻、掠奪、
ならびにこれに伴う諸街道・諸市場の混乱は、
鉄道国の防衛行動、軌道整備、補給統制および沿線安定化措置により、
概ね鎮定されたことを宣言する。
いわゆるモンゴル禍は、もはや鉄道国の存立を脅かす災厄ではない。
敵対勢力の機動は止められ、主要進出路は監理下に置かれ、
前線補給は常設化され、草原方面における旅客・貨物・軍用の諸輸送は、
順次、鉄道国の運行秩序へ編入されつつある。
このたびの事変において、鉄道国はただこれを防いだのみではない。
仮設軌道は本設軌道へ、兵站拠点は停車場へ、
警備市は駅市へと改められ、北方の脅威は北方の販路へと転じられた。
戦火ののちに荒廃のみを残すは下策である。
鉄道国は、乱れた地に時刻表を敷き、
断たれた流れに軌道を通し、恐怖の往来を交易の往来へと改めた。
よって今後、草原方面に対しては、単なる防衛線の維持にとどまらず
駅路の整備、市場の育成、学舎の開放、ならびに諸勢力との接続を進める。
従う者には運行の利を、学ぶ者には技術の利を、交易する者には市場の利を与える。
なお妨げる者、掠める者、軌道を断つ者に対しては、引き続き厳正にこれを停止する。
ここに明らかとなったのは、鉄道国の強みが単に兵の勇にあるのではなく、
道を敷き、物を運び、人を学ばせ、敵すら将来の乗客へ変える国家機能そのものにある、という事実である。
北方における一件は終わった。
しかして、鉄道国の軌道はここで止まらない。
草原を越え、関門を抜け、都城を結び、高原を渡り、天竺を経て、
再び本国へ帰る大いなる環状の構想は、すでに図上の夢ではない。
ウランバートルは終点にあらず。
その先に上都あり、大都あり、吐蕃あり、天竺あり、そしてバビロニアへ帰る。
諸文明を一つの時刻表に収める大幹線――亜細亜線は、ここにその第一歩を確かなものとした。
よって布告する。
モンゴル禍は終結した。
北方は鎮まり、軌道は伸び、市場は開かれた。
鉄道国、軌道はウランバートへ。
その先、亜細亜線は続く。
以上、鉄道国運輸省、外地軌道整備局、北方方面総監部、連署のうえ宣言する。




