鉄道国飛行学校
見難い火傷の子382
鉄道国飛行学校
深淵ダンジョン第十六エリア/第四紀完新世層
青銅の時代
この地では、生きるものすべてが八倍の大きさで存在する。
また匠一は研究室に籠もりだした。
ダン「リーダーまた何か研究してる」
キール「趣味のようなものだね」
マリー「美味しいものかしら」
ダン「うーん」
みい「遊びに来たよ」
マザー「ただいま帰宅しました」
みい「リーダーは?」
ダン「籠もってる」
みい「ひきこもり?」
キール「当たらずとも遠からずかな」
匠一が透明の瓶を抱えて部屋から出てきた。
匠一「自信作だ。お披露目」
ダン「なんすかそれ」
匠一「魔導ヘリ」
爆炎パーティ一同「?」
見ると透明の瓶の中には、小さな機体が浮いていた。
細い骨組みに、羽根のような回転翼。
魔石が淡く光り、機体は瓶の中で静かに姿勢を保っている。
みい「飛んでる」
マリー「鳥みたい」
キール「いや、鳥よりずっと機械的だ」
匠一「魔力で浮力と姿勢制御をやってる。試作零号機だ」
ダン「ぜんぜんわからん」
匠一「つまり飛ぶ」
ダン「おお」
匠一は瓶の蓋を開けた。
小さな機体はふわりと外へ出る。
みい「わあ」
機体は匠一の指先の動きに合わせて上昇し、旋回し、停止した。
そのまま部屋を一周し、マザーの頭上でぴたりと静止する。
マザー「高いですね」
ダン「すげえ」
キール「安定している……」
匠一「偵察、伝令、地形確認、軽量物資の運搬。用途は広い」
マリー「可愛いわね」
匠一「可愛いで済ませるな。これは空の革命だ」
ダン「空の革命」
みい「かっこいい」
匠一は小袋を取り出し、魔導ヘリに括りつけた。
機体は少しふらついたが、すぐに姿勢を立て直した。
キール「荷物も運べるのか」
匠一「軽量ならな」
そのとき、機体が急に傾いた。
壁にぶつかりそうになり、匠一が慌てて操作を戻す。
ダン「危なっ」
魔導ヘリはぐらりと揺れ、それでもどうにか着地した。
しばらく沈黙が落ちた。
みい「空の革命?」
匠一「……試作零号機だ」
キール「だが分かったことがある」
ダン「なにが?」
キール「これは便利だ。しかし難しい」
匠一「魔力出力、姿勢制御、風の読み、着陸角度。覚えることが多い」
マリー「誰でもすぐ飛ばせるものではないのね」
匠一「むしろ素人が触ると落ちる」
ダン「怖っ」
キール「なら必要なのは機体だけじゃない」
みい「なに?」
キール「操縦士だよ」
マザー「整備する人も必要です」
匠一「その通り。操縦、整備、管制、規則。空を使うなら全部いる」
ダン「管制?」
匠一「空でぶつからないための決まりだ」
ダン「空も大変なんすね」
匠一「地上より事故った時がひどい」
みい「じゃあ練習する場所がいるね」
マリー「教える人も」
キール「制度も必要だ」
匠一は腕を組んだ。
匠一「よし」
ダン「何がよしなんすか」
匠一「鉄道国飛行学校を作る」
爆炎パーティ一同「おお?」
匠一「まずは基礎課程。浮上、旋回、着陸、緊急停止。次に偵察課程、輸送課程、整備課程」
キール「ずいぶん具体的だね」
匠一「研究室に籠もってる間に考えてた」
みい「ひきこもりじゃなかった」
ダン「いや半分はひきこもりでしょ」
マリー「制服はあるのかしら」
匠一「作る」
みい「やった」
マザー「寮も必要でしょうか」
匠一「作る」
ダン「滑走路も?」
匠一「いる」
キール「予算は?」
匠一「これから取る」
ダン「そこ大事では」
匠一「大事だから今から偉い人を説得する」
みい「また大仕事だ」
匠一は魔導ヘリを手に取った。
小さな試作機の回転翼が、きゅるきゅると軽く回る。
匠一「鉄道国の次の時代は空だ」
キール「鉄道国なのに?」
匠一「鉄道が地を制したなら、次は空を制する」
ダン「言い切った」
みい「飛行学校、楽しそう」
マリー「お茶会もできるかしら」
匠一「飛びながらはやめろ」
こうして鉄道国では、新たな学校の設立計画が動き出した。
後に多くの操縦士と整備士を生み出すことになる、飛行学校の始まりである。




