深淵食材ハント:ジュラ紀エリアの珍味
見難い火傷の子270
深淵食材ハント:ジュラ紀エリアの珍味
深淵ダンジョン第十一エリア、ジュラ紀エリア
恐竜の時代
この地では、生きるものすべてが八倍の大きさで存在する。
タコ人、サンゴ人、クラゲ人――
海底文明めぐりを終えた爆炎パーティは、
久しぶりに《ソラ》の食材庫を確認していた。
ポン
「……あれ?肉、減ってません?」
マリー
「そりゃあんだけ海底でご馳走になったら、こっちの食材使わないでしょ」
ダン
「いや、問題はそこじゃねえ。
肉が減ってるのに、野菜は増えてるんだよ」
クロ
「ご主人様、深淵野菜は繁殖力が高いので……」
匠一
「食材確保に行く」
全員
「早い!」
ショータ
「えっ、今から!?」
匠一
「今からだ」
ダン
「理由が軽い!」
匠一
「十分だ」
◇
向かった先は、
ジュラ紀エリアの“丘陵帯”。
ここには、深淵特有の巨大生物が多く生息している。
ニール
「反応多数。大型草食、群れで移動中」
マリー
「草食かぁ……肉は?」
ニール
「その草食を狙う肉食が、さらに後ろに」
ダン
「よし、そっちだな」
ショータ
「えっ、草食じゃなくて肉食を……?」
ダン
「草食はでかすぎて捌くのが大変なんだよ。
肉食は勝手に筋肉質でうまい」
マリー
「深淵の肉食は脂のノリもいいしね」
ショータ
(……この人たち、食材の基準が完全におかしい)
◇
丘陵の向こうから、
巨大な影が現れた。
四足。
角。
分厚い皮膚。
そして――
背中に巨大な“鍋蓋”のような甲羅。
ショータ
「……あれ、何ですか」
ニール
「深淵カメノコサウルス。
甲羅の内側に“天然の蒸し器”があります」
マリー
「出た、深淵の狂気」
ダン
「よし、あれにしよう」
ショータ
「えっ、あれを!?」
匠一
「蒸し料理に使える」
ショータ
(理由が軽い……!)
◇
カメノコサウルスがこちらに気づき、
のそのそと向かってくる。
だが、動きは遅い。
ショータ
「……あれなら、戦わなくても避けられるんじゃ……」
ダン
「ショータ。深淵の食材は“追う”んじゃない。
“迎え撃つ”んだよ」
ショータ
「なんで!?」
マリー
「逃げると味が落ちるから」
ショータ
(深淵の理屈、怖い……)
◇
匠一が前に出る。
「クロ、準備」
クロ
「了解です。蒸し器の温度調整、任せてください」
ショータ
「温度調整!?」
ユキ
「甲羅の内部温度は約120度。
蒸し料理に最適です」
ショータ
「蒸し料理前提なんですか!?」
◇
カメノコサウルスが突進してくる。
匠一が剣を抜く。
一閃。
甲羅の“蓋”だけが綺麗に外れた。
ショータ
「えっ……!?」
クロ
「ご主人様、内部の蒸気が逃げます!」
匠一
「閉じろ」
ダンが蓋を押さえ、
マリーが水流で冷却し、
ユキが氷で固定する。
ショータ
「えっ、えっ、何してるんですか!?」
マリー
「蒸し器の密閉」
ショータ
「蒸し器!?」
◇
数分後。
ポン
「できました!」
蓋を開けると――
中には、ふっくら蒸し上がった“深淵カメ肉”がぎっしり。
ダン
「うまそー!」
マリー
「今日の夕飯決定だね」
ショータ
「……深淵って、本当に何でもありだ……」
匠一
「次の食材を探す」
全員
「早い!」
ショータ
(……この人たち、本当に止まらない)
ニール
「……群れの反応が、消えました」
ショータ
「え?」
ニール
「最初から、逃がすつもりだったんです。
あの一頭が、時間を稼いで」
ショータ
「……じゃあ、あれは」
マリー
「……深淵の生き物って、たまにこういうことするんだよね」




