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見難い火傷の子  作者: 清風
269/324

剣竜流道場・夜の稽古

挿絵(By みてみん)

見難い火傷の子269


剣竜流道場・夜の稽古


深淵ダンジョン第十一エリア、ジュラ紀エリア

恐竜の時代

この地では、生きるものすべてが八倍の大きさで存在する。


夕陽が沈み、ジュラ紀の空が群青に染まる頃。


剣竜流道場には、まだ熱が残っていた。


アロ次郎。

宮本ティラノ。


二人の強者を相手にした修練場は、

土が削れ、岩が割れ、空気がまだ震えている。


ケンタは弟子たちの前で、静かに正座していた。


肩には包帯。

呼吸はまだ浅い。

だが、目は死んでいない。


「……今日のこと、どう思った?」


ケンタの問いに、三人の弟子はそれぞれ違う反応を見せた。


トゲ丸

「悔しい!でも、かっこよかった!」


リン

「……強さの差が、はっきり見えました」


ソウ

「……怖かった。でも、目が離せなかった」


ケンタはゆっくり頷いた。


「うん。全部、正しい」


その声は、戦いの直後とは思えないほど穏やかだった。


「強い相手に勝てなくてもいい。

でも、逃げないことは大事だよ」


弟子たちは真剣に聞いていた。


ショータは少し離れた場所で、その光景を見ていた。


(……ケンタさん、すごいな)


自分より年下のように見えるのに、

背中は大人より大きかった。



その時、匠一が道場の奥から現れた。


「ケンタ」


「はい、師匠!」


即答。


匠一はケンタの肩の包帯を見て、短く言った。


「治せ」


「はい!」


ハナがすぐに駆け寄り、治癒魔法を施す。


淡い光がケンタの肩を包み、傷がゆっくり閉じていく。


「……ありがとうございます」


「無理をするな」


「はい!」


返事が速すぎて、ダンがまた頭を抱える。


「返事だけで世界取れるよな、こいつ」


マリーが笑う。


「でも、こういう素直さが強さになるんだよ」



匠一は弟子たちへ視線を向けた。


「お前たち」


三人がびしっと正座し直す。


「今日の戦いを見て、何を学んだ」


トゲ丸

「強い相手にも、立ち向かうこと!」


リン

「技だけじゃなく、心も鍛えること……です」


ソウ

「……怖くても、逃げないこと」


匠一は短く頷いた。


「それでいい」


その一言だけで、三人の顔がぱっと明るくなる。


ショータは思った。


(……この人、本当に言葉が少ないのに、全部伝わるんだ)



ケンタが立ち上がる。


「師匠。

僕……もっと強くなりたいです」


匠一

「なれ」


「はい!」


「だが――」


匠一は石碑を見上げた。


夕陽に照らされた“剣竜流道場”の文字が、赤く輝いている。


「強さだけでは、道場は守れない」


ケンタの目が揺れる。


「……どういう、意味ですか」


匠一は答えなかった。


ただ、静かに道場の奥――

ジュラ紀の森の闇を見つめていた。


その視線の先で、

何かが、ゆっくりと動いた。


ショータが小さく息を呑む。


(……また来る)


そう思った瞬間、

森の奥から、低い声が響いた。


「――剣竜流。

面白いものができたな」


ケンタの背筋が震える。


弟子たちが固まる。


匠一の目が、わずかに細くなる。


ジュラ紀の闇から現れたのは――


三度目の来訪者。


その影は、アロ次郎でも、宮本ティラノでもなかった。


もっと大きく。

もっと古く。

もっと静かで、もっと恐ろしい。


ケンタが震える声で呟いた。


「……あれは……」


匠一が静かに言った。


「ケンタ。

あれは“王”だ」


ジュラ紀の夜風が、道場を吹き抜けた。


剣竜流道場は、

三度目の試練を迎えようとしていた。

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