第三十九話 勝者なき戦場
メアリーズハイツ。
高地を確保した北軍は急速に陣地を固めていた。
「土嚢を運べ!」
「砲兵は前へ!」
兵士達が慌ただしく動き回る。
一方その頃。
南軍本陣。
リーは双眼鏡を下ろした。
「後方遮断は失敗したな」
静かな声だった。
隣にいたジャクソンが頷く。
「はい」
だが表情に焦りはない。
「しかし兵站線はまだ切れています」
リーは地図へ視線を落とした。
確かにそうだった。
北軍は高地を確保した。
しかしリッチモンドへ進むための補給が圧倒的に不足している。
「つまり」
ジャクソンが続ける。
「時間は我々の味方です」
リーは微笑んだ。
「そうだな」
そして地図の一点を指差した。
「作戦を変更する」
周囲の将校達が顔を上げる。
「このまま北軍を攻撃。
この地より敵へ出血を強いる」
将校達は静かに頷いた
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翌朝。
砲声が響いた。
戦いが始まった。
「敵襲!」
北軍陣地が慌ただしくなる。
俺は双眼鏡を覗いた。
灰色の波。
南軍だった。
「本当に来たか」
スミスが呟く。
「来ると思っていたんだろ?」
「もちろんです」
そう言いながら剣を抜く。
「ですが実際に来ると緊張しますな」
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戦闘は激しかった。
南軍は何度も突撃する。
北軍は高地から迎撃する。
撃つ。
倒れる。
また撃つ。
それでも敵は止まらない。
「将軍!」
兵士が駆け寄ってくる。
「第三陣撃退!」
「被害は?」
「軽微です!」
俺は頷いた。
高地の優位は絶大だった。
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だが。
昼過ぎ。
別の報告が届く。
「弾薬残数六割!」
俺は顔をしかめた。
早い。
減り方が早すぎる。
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夕方。
「弾薬残数四割!」
「食料の消費も想定以上です!」
報告が続く。
ジョンが俺に食って掛かった
「将軍このままじゃあ……」
スミスが地図を見る。
「将軍……我々は
兵站線が確保できてない」
「ああ」
言われなくても分かっていた。
翌日。
南軍は再び攻撃してきた。
そして北軍は再び防いだ。
戦術的には完全な勝利だった。
だが。
「補給がありません」
ジョンがが力なく言った。
部屋が静まり返る。
「リッチモンドまで進めるか?」
俺は聞いた。
ジョンは首を振った。
「不可能です」
即答だった。
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その夜。
俺達は地図を囲んでいた。
誰も口を開かない。
ようやくスミスが呟く。
「勝ったんですがな」
「ああ」
俺は答えた。
「勝った」
間違いなく勝った。
高地は守った。
敵を退けた。
作戦も成功した。
だが。
「進めない」
その一言が全てだった。
窓の外。
夜空を一羽の鳥が飛んでいた。
誰もまだ知らない。
その鳥が。
次の出来事を運んでくることを。




