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『世界史赤点の俺。なぜか南北戦争の将軍になってしまった件』  作者: 西住
第二部 戦争の理由

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第四十話 停戦の使者

 メアリーズハイツの戦いから数日。


 北軍は高地を守り切った。

 だが補給は尽きかけていた。


 兵士達は勝利を喜んでいる。

 しかし指揮官達の顔は暗かった。


「将軍」


 ジョンが帳簿を閉じる。


「食料も弾薬も限界です」


「分かっている」


 俺は短く答えた。


 勝った。

 だが進めない。

 その事実は何も変わらない。


 その時だった。

 窓の外から羽音が聞こえた。

 バサバサと大きな音を立てながら一羽の鳥が舞い降りる。


「鳥?」


 ジョンが首を傾げた。


 俺は思わず立ち上がった。

 

「そ、そんな事って」

 

 スミスが愕然とする。


「鳥の伝令は北軍だけのものではなかったのか……」


 それもそのはずである。

 その鳥は塗装こそ違えど、

 北軍が使っていた鳥と変わらない物だったからだ


 鳥の足には小さな筒が括り付けられている。

 中から紙を取り出す。


 短い文章だった。


『会談を希望する』


 署名。

 ロバート・E・リー。

 部屋の空気が凍り付いた。


「リー将軍だと?」


 スミスが目を丸くする。

 ジョンも驚いていた。


「罠では?」


「分からん」


 俺は紙を見つめる。

 だが。

 何となく違う気がした。


 すると鳥から声が聞こえた


「初めて会うな」


「そうですね」


 俺は頷く。


「だが名前は嫌というほど聞いている」


「それはこちらも同じだ」


 俺は鳥に対してしゃべった


 敵将。

 だが妙な敵意はなかった。

 リーが静かに言った。


「今日は戦争の話ではない」


「ほう?」


「死者の話だ」


 風が吹く。


「この戦いで多くの兵士が倒れた」


 その声は重かった。


「彼らを故郷へ帰したい」


 俺は黙った。


「埋葬のための一時停戦を求める」


 戦場では珍しい話ではない。

 だが。

 簡単に認めるわけにもいかなかった。


「分かりました。

 しかし条件があります」


「聞こう」


「武器の持ち込みは禁止」


 リーは頷いた。


「当然だな」


「そして前線指揮官としてあなた自身が来ること」


 すると鳥からの声でもわかるほど

 リーの声が変わった。


「それは出来ない」


 即答だった。


「武器を持たない条件は受けよう」


 リーは静かに続ける。


「だが私が出向く理由はない」


 少し間を置いてリーは続けた。


「我々は敗北していない」


「……」


「なぜ南軍が北軍の要求を飲まねばならない?」


 静かな言葉だった。

 だが確かな意志があった。

 確かにその通りだった。


 俺達も補給切れ。

 南軍も決定打を与えられていない。

 勝敗はついていない。


 しばらく考えた後。

 俺は肩をすくめた。


「分かりました」


 俺は条件を提案した


「双方が副官を派遣する……

 それなら?」


「問題ない」


 交渉は成立した。

 俺は鳥に対して敬礼した


「では失礼します」


-------


 ほぼ同時刻南軍陣地---


 近くの林から一人の男が現れる。

 ストーンウォール・ジャクソンだった。


「よろしいのですか?」


 リーは振り返る。


「何がだ?」


「信用できるのですか?」


 ジャクソンは真顔だった。


「北軍ですよ」


 リーは少し考えた。

 そして静かに笑う。


「軍人としての勘だ」


「……」


「あの男は闇討ちをするような人間ではない」


 ジャクソンは黙る。


「もしそういう男なら……

 ゲインズミルで別のやり方を選んでいる」


 しばらく沈黙。

 やがてジャクソンが肩をすくめた。


「分かりました」


 そして苦笑する。


「ですが将軍」


「なんだ?」


「私はまだ信用していませんよ」


 リーは声を上げて笑った。


「それでいい」


 夕暮れの戦場。

 停戦の準備は静かに進み始めていた。


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