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『世界史赤点の俺。なぜか南北戦争の将軍になってしまった件』  作者: 西住
第二部 戦争の理由

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第三十七話 フレデリックスバーグ

 ラッパの音が響く。

 北軍は南下を続けていた。

 目指す先はフレデリックスバーグ。

 リッチモンドへの玄関口とも呼ばれる重要拠点だった。


「将軍」


 スミスが地図を広げる。


「このまま順調に進めば数日で到着しますな」


「あくまで順調に進めば、だろ?」


 俺が答える。


「そうとも言いますな」


 スミスは苦笑した。

 嫌な予感は当たった。

 到着後すぐだった。


「まだ届かない?」


 俺は思わず聞き返した。


「はい」


 補給担当の将校が青い顔で答える。


「川を渡るための橋材が到着しておりません」


「また補給か……」


 思わず頭を抱える。

 戦争をしていると敵より先に補給と戦っている気がする。


「いつ届く?」


「分かりません」


 最悪だった。


 一週間後。

 ようやく橋材が到着した。


「遅い!」


 兵士達から不満が漏れる。


 だが届かないよりはマシだった。

 工兵達が急ピッチで橋を架ける。

 北軍は川を渡った。


 そして。


「敵軍撤退!」


 伝令が叫ぶ。


「フレデリックスバーグ市街を確保しました!」


 歓声が上がった。


 久しぶりの明るい報告だった。


「将軍」


 スミスが町を見渡す。


「どうします?」


 俺は少し考えた。

 そして口を開く。


「案山子を集めろ」


「……はい?」


 スミスが固まった。


 翌日。


 町の各所には大量の案山子が並んでいた。

 窓。

 屋根。

 路地。

 教会の鐘楼。


 至る所に人影が立っている。


「将軍」


 ジョンが呆れた顔をしていた。


「何をしているんですか?」


「敵に無駄な補給を使わせる」


 俺は即答した。


「兵士がいると思わせるんだ」


 スミスが腕を組む。


「なるほど」


「敵に攻撃を続けさせれば弾薬も食料も減る」


「そういうことですな」


 俺は頷いた。


 ブルランの時。

 ジャクソンは後方を混乱させた。

 なら今度はこちらがやり返す番だった。


 一方その頃。


 南軍陣地。


「将軍!!!」


 ジャクソンが血相を変えて

 リーに怒鳴り込んできた


「フレデリックスバーグ市街地に多数の北軍を確認!」


 リーは地図から顔を上げる。


「数は?」


「数千規模かと!」


 周囲がざわついた。


「すぐにでもフレデリックスバーグを

 抑えなければわれわれは孤立します!!!」


「……」


 リーは肩を震わせながらこういった


「ジャクソン……それ本気で言ってるのか?」


「……冗談ですよ。本気なわけないじゃないですか?」


 ジャクソンとリーは互いに大笑いをした。

 それにつられて周りの兵士も笑顔になる


「アレの調子はどうだ?」


 リーは兵士に聞いた。


「動きはほとんどありません」


「補給活動も確認できず」


 兵士は立て続けに報告した


 ジャクソンは苦笑いをしてこう答えた


「案山子だな」


「だな!!」


 リーが答える


 あまりにも大きな笑い声だったので

 兵士達も驚愕していた


「しかしアレの登場は

 戦場を変えますよ」


「そうだな……では少し

 脅かしてやるとするかね」


 ジャクソンとリーの笑い声は

 その日高らかに南軍陣地で響いたという


 数日後。


 スミス率いる別動隊が出発した。

 目的地はリッチモンド方面。

 兵力は多い。

 この一戦ですべてを決めるつもりだった


「気を付けろよ」


 俺が言う。

 スミスは笑った。


「将軍こそ」


「今度は大砲の弾にならないでくださいね」


「余計なお世話だ」


 周囲から笑いが起きる。

 そしてスミス隊は出発した。


 翌日。


「おかしくないか?」


 俺は町を見てそうジョンへ伝えた


「どういうことです?」


「見ろ!!」


 俺はジョンを連れて

 町の近くまで移動した


「静かすぎる」


 俺は双眼鏡を覗いて町を見た。

 大砲の音どころが煙一つ立ってない


「休憩でもしているのか?」


 俺はジョンへ伝えた


「私は確かに数千の案山子を建てました。

 あの数ですよ、偵察部隊などではないと

 普通なら思うはずですが……」


「わからん…ジャクソンは何を考えている?」


 すると隣にいたジョンが

 俺の発言に対して訂正を申し出た


「将軍!相手はジャクソンだけではなく

 ロバート・リーもいます」


「リーか……」


「この戦いに出発する前に

 首都で聞いた名だ…」


 南軍きっての勇将。

 南軍の総司令官。

 南軍の片翼。


「彼等の内一人でも戦闘不能状態に出来れば、

 奴隷解放宣言を飲んでくれると思うのだけどな」


 俺がジョンへ何気なく

 しゃべった瞬間だった……


 窓の外で影が動いた。

 俺は何気なく空を見る。


 一羽の鳥。


 それだけだった。

 だが。

 妙に気になった。


「将軍?」


 ジョンが聞く。


 俺は答えない。

 鳥は旋回しながら南の空へ飛んでいく。

 嫌な予感がした。

 理由は分からない。


 だが。

 戦場での勘が警鐘を鳴らしていた。


「……まさかな」


 俺はそう呟いた。


 しかしその言葉とは裏腹に。

 視線はいつまでも空を飛ぶ鳥を追い続けていた。

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