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『世界史赤点の俺。なぜか南北戦争の将軍になってしまった件』  作者: 西住
第二部 戦争の理由

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第三十話 崩壊

 銃声は、すでに音ではなかった。


 空気そのものが破裂しているようだった。

 どこから響いているのかも分からない。


 ただ、世界が壊れていく音だけが続いていた。


「前進!」


 ポープの声が響く。

 だがその命令は、戦場に届いているようで届いていない。


 兵士たちは動いていた。

 しかしそれは統制された動きではなかった。

 流されているだけだ。


「側面再攻撃!」


 ポープ軍の一部が動く。

 だがその動きは、最初から読まれていたように崩された。


「……やはりな」


 俺は小さく呟いた。

 戦っているのではない。

 戦場の形に押し込まれている。


「将軍!」


 スミスが馬を寄せる。


「後方より味方の旗が接近!」


「……来たか」


 俺は短く返す。


 それがゴップ軍だということは、言われなくても分かった。

 前と後ろが、同時に締まっていく。

 包囲は完成しつつあった。


 廃線。


 その上に、戦場が吸い寄せられていた。


 逃げ道はない。

 視界の端で動きがあった。


 遠くの丘。

 後方のさらに外側。


 そこにゴップ軍の旗が見える。


「……完成したな」


 俺は呟いた。


 しかしゴップ軍は戦場に深く踏み込まない。

 ただ、必要な位置に現れるだけだ。


 どうしてだ……?

 俺は目を疑った


「おい!どうしてゴップは動かないんだ」


 俺はスミスの胸ぐらをつかんだ


「ゴップの軍団ですが……

 完全に私兵集団…でして」


 スミスが続ける


「我々北軍の正式な軍隊ではないのです」


 なん…だと?


「つまり我々の命令を聞かなくてもいい軍隊なのです」


 俺はその言葉を聞いて

 頭が真っ白になった


「そ…そんな…

 じゃあ俺はそんな信用できない軍隊に

 自分の軍団の命運を預けていたのか?」


 絶望に打ちひしがれていた俺を

 スミスは諭した


「将軍…心配しなくてもいいです

 我々もそうですが、基本的に

 北軍と言うのは私兵集団が多いのです」


 俺は耳を疑った


「じゃあ何か!!命令伝達とかは

 どうやって回しているんだ!!」


 急に大声を出したので

 スミスは目が点になっていた


「将軍。そこまで組織と言うのは

 重要なのでしょうか?」


「何が言いたい!!」


「確かに我々含めて北軍はそのほとんどが

 私兵集団であり確実な命令系統は

 存在しません」


 スミスは続ける


「しかし今までそれで

 やれていたではありませんか?

 どうしてそこまで躍起になるのです?」


「……」


「将軍。いいですか?」


 スミスの顔がいつもとは違う

 そう訓練兵の時に見ていた顔に変わっていた


「将軍。申し訳ありませんが、

 あなたはこの戦いに勝利したいのですか?」


「当然だ!!」


 俺は答えた


「私にはそう見えません」


「なんだと!!!!」


 スミスの顔は全く変わらない


「将軍は勝利を求めているように見えて、

 実際にはジャックの死から逃れようとしている。

 私にはそう見えます」


「それの何がいけないんだ!!」


 俺はスミスに食って掛かる


「いけません。シャイローでの言葉

 忘れたのですか?」


「言葉だと!?」


 スミスは呟いた


「私はジャックから聞きました」


「将軍はブルランの戦いでジャクソンに負けて

 かなり参っているようだった……

 だから俺が励ましてきてやった」


 スミスは続ける


「将軍の指揮一つで何十万人の

 兵士の命が使われる……」


 そこまで聞いた時に俺は我に返った


「そうだったな。

 このままじゃあジャックにあった時に

 どやされるな」


「具申聞いて頂き感謝します」


 スミスは深々と敬礼した


 数時間後‐‐‐‐


 彼女はいた。

 ジョン。

 医療鞄はもうない。


 銃だけがある。

 一発。

 乾いた音。


 誰かが倒れる。

 彼女はそれを見て、静かに言った。


「撃てる」


 それは宣言ではなかった。

 確認だった。

 戻れない場所にいることの確認。


「ジョン!」


 スミスが叫ぶ。


「もう十分だ!」


 だが彼女は振り返らない。


「十分かどうかは関係ありません」


 短く言った。

 銃声が続く。


「もう廃線を突破したんだ」


 俺はジョンに伝えた


 しかしジョンは俺を睨みつける


「まだ終わってません

 ここにはジャクソンが来ていると

 そう報告を受けました」


 ジョンの顔は怒りとも

 悲しみともどちらの顔か

 わからないほど崩れていた


「ジャクソンを倒さなければ

 この戦いは勝利とは言えません」


 俺はジョンに平手打ちを食らわせた


「!?」


 俺はジョンに大声で伝える


「この戦いは我々の勝利だ!

 すぐに隊列に戻るように!

 良いな!!!!」


 ジョンの顔は納得してなかった

 

「……わかりました」


 一言。そう言ってジョンは

 俺と一緒に軍団へ戻った


「よく戻ってきました……」


 スミスがジョンに

 開口一番に声をかけた


「……」


 ジョンは何も言わずに天幕へ入った

 

 しかしその後……

 遠くで新たな砲声。

 

「敵の新手か?」


 俺は呟いた。


 勝ったはずの戦場に。


 まだ“次”が来ている。


『終わらないわね』


 守護霊の声。


「ああ」


 そして理解する。


 これは勝利ではない。

 ただの通過点だ。

 戦場はまだ閉じていない。

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