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『世界史赤点の俺。なぜか南北戦争の将軍になってしまった件』  作者: 西住
第二部 戦争の理由

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二十八話 第二次ブルラン

 南軍は予想通りだった。


 いや。

 予想以上だったと言うべきか。

 偵察から戻った兵士が地図を指差す。


「やはり廃線を利用しております」


 地図の上を指がなぞる。


 鉄道跡。

 深く掘られた溝。

 天然の塹壕。


 そこへ南軍が陣地を築いていた。


「厄介ですな」


 スミスが腕を組む。


「正面攻撃では被害が増えます」


「わかってる」


 俺も地図を見る。


 どう考えても嫌な地形だった。

 防御側が有利な地形へ突っ込むのは自殺行為だ。


 だが。


「命令だ」


 伝令が会議の内容を伝える。


「ゴップ議員率いる後続軍が到着する」


 俺達は顔を見合わせた。


「そして両軍で挟撃を行う」


 そこまではいい。

 問題は次だった。


「先鋒は貴官らだ」


 嫌な予感がした。


「敵防衛線へ突撃し突破口を開け」


 沈黙。


 誰もすぐには言葉を発しなかった。


「正気か?」


 思わず口から漏れる。

 だが伝令は肩をすくめた。


「軍議の結果です」


 俺は地図を見る。


 別案を探す。

 だが見つからない。

 側面は森。


 迂回には時間がかかる。

 正面以外に突破口がない。


「……」


 沈黙。


 そして。


「わかった」


 俺は答えた。


「命令に従う」


 軍人だからだ。


 納得したわけじゃない。

 それでも従うしかない。


 その時だった。

 空から影が差した。


「アレは?」


 スミスが空を見上げる。


 銀色の翼。

 青く光る胴体。

 鳥達の伝令だった。

 近くへ降り立つ。


「通信です」


 援軍の士官が筒を差し出した。


「リンカーン大統領より」


 俺は紙を受け取る。


 直後。

 鳥が喋り始めた。


「聞こえるか」


 リンカーンの声だった。


「大統領」


「援軍は無事到着したようだな」


「ああ」


 短く返す。

 そして俺は単刀直入に聞いた。


「ゴップを信用しているんですか?」


 一瞬だけ沈黙が流れた。


「突然だな」


「答えてください」


 リンカーンは少し考えた後。

 静かに答えた。


「信用している……か」


 ジョンが眉をひそめる。

 スミスも黙った。


「彼は優秀な政治家だ。

 それ以上でもそれ以下でもない」


 リンカーンは続けた。


「意見の違いはある」


「だが国家のために働いている人間だ」


「しかしゲインズでは――」


 俺が言いかける。


 だがリンカーンは遮った。


「それ以上は言うな」


 静かな声だった。


「君は軍人だ」


「彼は政治家だ」


「見ている景色が違う」


 俺は返事をしなかった。


 本当にそうなのだろうか。

 政治家だから。

 軍人だから。


 それだけで片付けていいのだろうか。


「すまない」


「今は勝利に集中してくれ

 そのために私は議会と大喧嘩してきたんだからな」


 俺はリンカーン大統領に伝えた


「大統領少しいいですか?」


「なんだ」


「この「鳥達の伝令」を使って

 そこらから攻撃することって可能ですか?」


「……は?」


 リンカーンは唖然としていた


「言葉の通りです」


 俺は続ける


「もしそれが出来れば

 南軍の塹壕は無力化出来る」


「将軍……」


 リンカーンは笑いながら続けた


「気持ちはわかるがそんなことは出来ないよ。

 第一、仮にこの鳥が銃を持てたとして、

 誰が引き金を引くんだい?」


「……そうですか」 


 通信が切れる。


 鳥は静かに羽を広げた。


 しばらく誰も喋らなかった。

 最初に口を開いたのはジョンだった。


「私は信用しません」


 即答だった。


「ジャックは死にました」


 その声には怒りが混じっていた。


「私も少々怪しいとは思いますな」


 スミスも続く。

 二人の視線が俺へ向く。


「将軍はどう思います?」


 俺は空を見上げた。

 飛び去る鳥達の伝令。

 その向こうには青空が広がっている。


「……わからん」


 それが本音だった。

 ゴップが正しいのか。


 間違っているのか。

 敵なのか。

 味方なのか。


 今の俺には判断できなかった。

 だが一つだけ確かなことがある。


 明日になれば。

 また多くの人間が死ぬ。

 その事実だけは疑いようがなかった。


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