第二十六話 愛国者達
首都ワシントン。
俺達は到着早々、戦果報告のため呼び出されていた。
案内された部屋へ入る。
そこには数人の軍人と政治家がいた。
その中の一人が立ち上がる。
「お会いできて光栄だ」
男は笑みを浮かべた。
「君達が例の『愛国者』かね?」
その言葉を聞いた瞬間。
ジョンの表情が変わった。
俺もその男を見つめる。
「失礼した」
男は軽く頭を下げた。
「私はゴップだ」
部屋の空気が一瞬だけ重くなる。
援軍派遣に反対した政治家。
マクレラン派の重鎮。
その名前は聞いていた。
「なるほど」
俺は短く答えた。
「あなたが」
ゴップは気付いていないのか。
あるいは気付いていて無視しているのか。
平然と続けた。
「マルバーンヒルの勝利。
実に見事だった」
「ありがとうございます」
俺は軍人らしく答える。
だが隣のジョンは何も言わない。
ただ黙ってゴップを見ていた。
会談が終わる。
部屋を出た瞬間だった。
ジョンが振り返った。
「待ちなさい」
その声で俺は嫌な予感がした。
案の定だった。
ジョンはゴップの方へ歩き出していた。
「おい」
俺は肩を掴む。
「離してください」
声が低い。
スミスも状況を理解したらしい。
慌ててこちらへ来る。
「今はダメだ」
俺は静かに言った。
ジョンは数秒だけ黙った。
そしてようやく立ち止まる。
「……わかりました」
だが目は笑っていない。
完全に敵を見る目だった。
そのやり取りを見ていたスミスが首を傾げた。
「今は……。
将軍!!??」
スミスは恐る恐る聞いてきた。
「今じゃなければ良いのですか?」
俺とジョンは同時に振り返った。
「違う」
「違います」
二人同時だった。
スミスが少し後退する。
「もし始末するつもりなら」
「今この瞬間、あいつの喉元に食らいついている」
「私はすでに終わらせています」
二人とも冗談を言っている顔ではなかった。
スミスはさらに一歩下がった。
「何この人達怖い……」
俺達は同時にため息を吐いた。
その後。
再び会議室へ呼び戻される。
そこにはゴップもいた。
先程のことなど何も知らないような顔をしている。
「実は頼みたいことがある」
ゴップは地図を広げた。
「ポープ将軍の軍団が未だ到着していない
敵との遭遇でもあったのだろうか?
確認へ向かってほしい」
俺は即答した。
「俺達は軍人です
行けと言われれば何処へでも行きます」
ゴップは満足そうに頷いた。
「流石『愛国者』だ」
そして笑った。
「出来ることならその称号を少し分けてもらいたいね」
嫌味なのか本心なのか。
よく分からなかった。
そんなに欲しいなら分けてやる。
俺はそう思った。
隣を見る。
ジョンも全く同じ顔をしていた。
「それでは出発――」
しようとした時だった。
会議室の扉が開いた。
「失礼する」
軍服姿の男が入ってくる。
周囲がざわついた。
「ポープ将軍!」
誰かが叫ぶ。
男は軽く敬礼した。
「遅くなりました」
部屋の全員が固まる。
「敵の襲撃がありましてな」
ポープは疲れた表情で言った。
「終結地点へ向かうのに時間がかかりました」
そして地図へ近付く。
「しかし敵の大軍と思われる軍団を発見しております」
会議室が静まり返る。
「場所は?」
誰かが聞いた。
ポープは地図を指差した。
「ブルラン方面です」
俺の背筋が凍った。
『来たわね』
守護霊が呟く。
「またあそこで戦いがあるのか……」
ブルラン。
初めて将軍として戦争を見た場所。
初めて将軍として人を撃った場所。
あの時はまだ何も分かっていなかった。
だが今は違う。
戦争がどれだけ多くの人生を壊すのか。
俺は知っている。
『……』
守護霊は何も言わなかった。
嫌な予感がする。
そんな一抹の不安を抱えながら、
俺は進軍準備を始めた。




