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『世界史赤点の俺。なぜか南北戦争の将軍になってしまった件』  作者: 西住
第二部 戦争の理由

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第二十五話 憎悪

 マルバーンヒルの戦いは終わった。

 戦場には負傷者のうめき声が響いている。

 勝利だった。


 だが誰もが喜んでいるわけではない。

 俺達は生き残った兵士達の確認と負傷者の搬送に追われていた。


「援軍が来てくれて助かりましたな」


 スミスが呟く。


「ああ」


 俺は短く返した。

 もし援軍が来なければどうなっていたか。

 考えたくもない。


 しばらく沈黙が続く。

 その空気を破ったのはジョンだった。


「でも変ですよね」


「何がだ?」


「援軍です」


 ジョンは腕を組んだ。


「リンカーン大統領は送ろうとしていた。

 現場も要請していた。

 それなのに援軍は止められた」


 確かにそうだった。

 そして結果として。

 ジャックは死んだ。


「つまり誰かが邪魔をしたんですよね?」


「そうなるな」


「ならスパイがいる可能性はないですか?」


 ジョンが突拍子もないことを言った


 思わずスミスが苦笑した。


「候補はいるのですか?」


「います」


 ジョンは即答した。


「まずリンカーン大統領」


「却下」


 俺とスミスが同時に言った。


「早いですね」


「当たり前だ」


 俺はため息をつく。


「援軍を送ろうとしていた本人だぞ」


「ではジャック」


「それ本気で言ってるのか?」


 俺はため息交じりにそう言った


「何故です?」


「お前は幼馴染を信用できんのか!?」


「確かに幼馴染ですが、

 それとこれとは別です」


 その顔にはかつての余裕の表情はなかった


 そこにあるのは真顔……、

 いや『憎悪』という2文字を書いた顔だった


 数秒の沈黙。


「では将軍」


「俺かよ」


 昔なら笑って終わっていた。

 だが今日は違った。

 俺は少しだけ俯いた。


「……いや」


「俺の可能性もある」


 二人が同時にこちらを見る。


「将軍?」


「何を言っているのですか?」


 スミスが眉をひそめた。


 俺は遠くを見る。


 俺は本来この時代の人間じゃない。

 歴史に存在しない人間だ。


 金属の鳥。

 人間大砲。

 歴史書には存在しない兵器。


 思い返せば違和感だらけだった。


「俺みたいなイレギュラー要素が何かを変えた。

 そういう可能性もある」


『ないとは言い切れないわね』


 守護霊が静かに答えた。


 ジョンが首を振る。


「そんなことありません!」


「そうです」


 スミスも続いた。


「将軍がいたから助かった命もあります」


「第一次ブルランも、シャイローも、今回だってそうです。

 全部将軍がいたから我々は生きているのです」


「だったらなぜ俺をスパイ扱いした?」


 俺はジョンへ聞き返した


「だって、将軍の顔が……」


「顔?」


「将軍の顔色が凄く悪いんです。

 この軍団は将軍がいたからここまで来た……

 その将軍が落ち込んでいては軍が回りません」


 俺は返事をしなかった。

 

「将軍にはいつものように

 ふざけて頂かないとこの部隊は動きません」


 スミスが続ける


「どんな絶望的状況でも

 将軍がいるから大丈夫!!

 それが我々の強みですからな」


 だが失われた命もある。

 本当に俺は正しかったのだろうか。

 そんな考えが頭を離れなかった。


 その後も調査は続いた。

 だが決定的な証拠は見つからない。

 分かったのは一つだけだった。


 援軍派遣へ強く反対した政治家がいること。

 

 名前はまだわからないが、

 マクレラン派の有力政治家だということはわかった


「怪しいですな」


 スミスが呟く。


「ああ」


 俺は資料を閉じた。

 だが証拠はない。

 今はまだ。


 そして数日後。


「将軍」


 スミスが窓の外を指差した。


「見えてきました」


 遠くに大きな街並みが見える。

 首都ワシントン。

 北軍の中心。


 そして政治の中心だった。


 戦場は終わった。

 だが次の戦場が待っている。

 そんな予感がしていた。


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