第二十四話 マルバーンヒル
ゲインズミルからの撤退。
俺達は何とか防衛に適した地形へ辿り着いた。
しかし集まった兵士は元の五分の一程度。
しかも大半が負傷している。
兵士達からは弱気な声が漏れる。
「勝てるのか?」
「敵はすぐ後ろだぞ」
「もう終わりだ……」
俺も内心では同じだった……。
だがここで逃げれば本当に終わる。
そこで周囲の地形を見た時、ある戦術を思い出した。
「……島津の釣り野伏だ」
スミスが反応する。
「訓練兵時代に話していた戦術ですね」
俺は地形を使った誘引作戦を説明した。
中央を後退させて敵を誘い込み、左右から挟撃する。
成功する保証はない。
だが他に方法もない。
「出来るかじゃない。
やるしかないんだ」
兵士達は配置につく。
防衛準備中。
そうしていると金属の鳥が到着した。
「無事か?」
その声はリンカーン大統領だった。
「大統領!!」
俺は鳥をひったくり、
リンカーンへ直接通信した。
敵軍接近。
兵力不足。
負傷者多数。
援軍要請。
伝えることは沢山あった。
しかしここまでが限界だった。
そんな余裕はなかったからだ。
やがて返答が返ってきた。
「援軍を送ることが決まった」
俺とスミス、そして周囲の兵士達の表情が明るくなった。
「しかし到着にはまだ時間がかかる。
すまないが暫くはその戦力で頑張ってくれ」
ついにジョンが感情を爆発させた。
俺もスミスも急な事だったので、
思わず目を見開いてしまった。
「どうして今なんですか!
もう少し早く援軍は来れなかったんですか!
もっと速く来てくれればジャックは……」
「おい、大統領に向かってなんて言い草だ」
スミスが止める……が。
「いや、彼女の気持ちもわかる……
どうしてこんなことになったのか。
彼女……いや、君達は知る権利があるからな」
リンカーンは事情を説明した。
首都防衛。
各戦線への対応。
議会内の対立。
ジョンは納得しない。
だがリンカーンもまた苦しそうだった。
「……遅かった。
私の力不足だ」
その言葉だけが戦場に残る。
南軍主力到着。
俺の作戦通り、中央部隊が後退する。
「いいかお前ら!
なるべく戦いに負けて敗走しているように見せるんだ。
無秩序な後退をしろ!」
俺は全兵士へ命令した。
「しかし……無秩序な後退とは、
どうすればいいのですかね?」
スミスが俺に聞いてきた。
俺はただ一言。
「ゲインズから逃げたように逃げればいいだけだ」
そうスミスに伝えた。
その後――――
南軍は突破したと判断し、
そのまま前進した。
だがそれこそが罠だった。
左右から北軍が一斉攻撃。
混乱する南軍。
「ひるむな!!
敵の陣の層は薄い!
つまり一点を突破すれば後は瓦解する!」
南軍の将兵が声を張り上げる。
実際、北軍も限界に近い。
負傷者が続出していた。
俺も前線を走り回る。
「持ちこたえろ!
援軍が来る!」
その言葉だけを信じて兵士達は戦う。
戦況が崩れかけたその時。
「将軍、あれを見てください!」
スミスが後ろを指さした。
地平線の向こうから北軍の軍旗が現れる。
援軍だった。
歓声が上がる。
「よし!
この時をもって全軍進軍開始!!」
俺は全軍に攻勢の命令を出した。
南軍は撤退を開始した。
「なんとか生き残りましたな」
スミスが俺に話しかけた。
「ああ……そうだな」
俺はうわの空で返答した。
勝った!
確かに勝った!!
間違いなく勝ったのだ!!!
しかし……
俺はふとジャックの姿を探してしまう。
もちろん姿はない。
『……』
守護霊も何も言わない。
もちろんジョンも。
夕暮れの戦場。
俺は遠くを見つめた。
戦争はまだ終わらない。
そう理解しながら。




