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『世界史赤点の俺。なぜか南北戦争の将軍になってしまった件』  作者: 西住
第一部 南北戦争に飛ばされた俺

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第二十三話 武士道

 砲声は止まらなかった。

 南軍の攻撃は想像以上だった。


「右翼後退!」


「左翼も押されています!」


「予備隊投入!」


 伝令が次々に飛び込んでくる。

 最悪だった。


 病人で戦力は減っている。

 援軍は来ない。

 敵だけが増えていく。


「将軍!」


 通信兵が駆け込んで来た。


「新たな部隊を確認!」


「南軍か?」


「違います!」


 通信兵が叫ぶ。


「北軍です!!」


 一瞬、部屋が静まり返った。


「は?」


 思わず聞き返した。


「北軍です!」


 俺は周りを見る。


 本当に北軍だった。


「なんでいる?」


 誰も分からない。


 数十分後。


 その指揮官達が本陣へやって来た。


「よう!

 助けに来たぜ!」


 随分と軽い挨拶だった。


「お前ら誰だ?」


「リッチモンド包囲軍だ」


「は?」


 今度こそ固まった。


「いや待て!」

 包囲はどうした?」


 俺は真顔で聞いた。


 すると男達は笑った。


「へっ

 俺達ゃ英雄様と戦いたかったんだよ」


「そうそう」


「どうせ戦うなら英雄様と戦いたいよな」


 周囲も笑う。


「馬鹿だろ!?お前ら」


 本音だった。


 だがここまで気が抜けた本音は

 この戦場に来て初めてだった


「リッチモンドは?」


「まだ包囲してる」


「兵減らしただろ?」


「まあな」


「アホだろ」


「否定はしねぇ」


 しかし。


 その援軍のおかげで前線は持ち直した。


 一時的にではあるが

 北軍兵士達は歓声を上げた。


「援軍だ!」


「助かった!」


「まだ戦える!」


 だが……

 それは本当に短い希望だった。


「報告!」


 伝令が駆け込む。

 

 顔色が悪い。


「リッチモンド方面です!」


「何だ?」


「敵軍突破!」


 全員が固まった。


「包囲軍が薄くなった隙を突かれました!」


「敵増援接近!」


「こちらへ向かっています!」


 沈黙……。


 援軍達も理解した。

 自分達が持ち場を離れた結果だと。


「やっちまったな」


 誰かが呟く。


 そして。


 夕方になる頃には、

 戦況は完全に北軍不利になっていた。


「将軍」


 ジャックだった。


「なんだ?」


「少し時間を貰えますか?」


「要件ならここで言え」


 戦場だ。

悠長な時間など無い。

ジャックは少しだけ笑った。


「ではここで言いましょう……。

 おい!前の人間今すぐ前を開けろ」


 スミスに対してジャックは暴言を吐いた


「貴様!元教官に向かってなんて口の利き方……」


「武士道とは……

 死ぬことと見つけたり」


「は?」


 スミスも。


 ジョンも。


 固まった。


「じゃあな」


 ジャックは馬へ飛び乗った。


「短い間だったけど楽しかったぜ!」


「待て!!」


 俺は叫んだ。


「お前何考えてる!!

 英雄にでもなるつもりか!?」


 ジャックは振り返った。


「違うさ

 武士もののふになるだけだ」


 その顔はいつも見る

 ジャックの笑顔そのものだった


 そして。


 ジャックは単騎で敵陣へ駆け出した。


 同時刻南軍陣地では

 ジャクソンが戦況を見つめていた


「北軍の連中め!

 いくら何でも我々をバカにしすぎだ」


「ブルランの戦いの時の作戦。

 あんなにうまくいくとは思いませんでしたね」


 近くにいた兵士がジャクソンに声をかけた


「アレはうまくいったのではなく

 失敗なんだが……」


「え?どういうことです?」


「それは……」


 ジャクソンが説明しようとした時に

 南軍の陣地で大声が轟いた


「偵察部隊より報告。

 北軍兵士が一騎でこちらへ向かってくる模様」


「北軍の連中。ついに狂ったか?」


 兵士がジャクソンに声をかける……が?


「なんだあれは?」


 ジャクソンは目を細めた。


 一騎。


 本当に一騎だった。


 しかし歴戦の戦士の勘がただ事ではないと

 そう確かに伝えていた


「伝令か?」


 違う。

速度が違う。

まっすぐこちらへ向かってくる。


 そして。

 ジャクソンは気付いた。


「あの方向は……」


 本陣。


 自分の位置だった。

 背筋が凍る。


「まずい

 止めろ!!

 絶対に止めろ!!」


 ジャクソンの怒号が響いた。


「このまま行けば北軍の部隊は撤退出来る!

 それだけは許すな!!」


 南軍兵士達が殺到する。


「撤退だけならいい……

 最悪の場合「あのお方」が戦死…いや離脱でも

 我々の損害は計り知れないのだ」


 ジャクソンの顔は先ほどの余裕とは

 打って変わって焦りに満ちていた


 一方

 北軍側では。


「ジャックの思いを無駄にするな!」


 スミスが叫んだ。


「全軍撤退!!」


 ジョンも叫ぶ。


 俺だけが動けなかった。

 夕焼けの中。

 ジャックの姿が小さくなっていく。


 そして。

 その姿は二度と戻らなかった。


 その時俺は悟った。


 俺がいるこの世界はありきたりの

『異世界転生・無双チート』じゃない。


 ましてや『ゲーム』なんかでもない。

 

 俺がいるこの世界は本当の『戦場』だってことに……

 

第一部完

ここまでお読みいただきありがとうございました。


当初は

「世界史で赤点を取った主人公が南北戦争へ飛ばされる」


というギャグ寄りの話として始まりましたが、

元々戦争の悲惨さや虚しさを描くこともテーマの一つでした。


特にジャックについては、

動画版からお気に入りのキャラクターだったので、

あえて第一部で退場させました。


この世界が本当の戦場である以上、

誰もが最後まで生き残れるわけではありません。


第二部ではさらに物語が大きく動いていきます。


新たな出会いもあれば、

別れもあるかもしれません。


もしよろしければ、

今後もお付き合いいただければ幸いです。


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