第二十二話 迫り来る敵
ゲインズ周辺は慌ただしかった。
兵士達は塹壕を掘り。
砲兵達は砲を配置する。
しかしその光景に余裕はない。
誰もが援軍が来ない事を知っていたからだ。
「まだ返答はないのか?」
「ありません」
通信兵が首を振る。
俺は思わず頭を抱えた。
「なんでだよ……」
未だに理解出来ない。
敵が来ている。
病人も大量にいる。
それなのに援軍は来ない。
「将軍」
ジャックが地図を広げた。
「敵軍の位置が判明しました」
「どれぐらいだ?」
「予想以上です」
その一言で嫌な予感がした。
地図を見る。
そして固まった。
「多くない?」
「多いですね」
ジャックが真顔で答える。
「いや待て!」
「これ本当に俺達が相手するの?」
「その予定です」
ジャックは顔色一つ変えずに答えた
予定を変更して欲しかった。
『帰る?』
「帰れるなら帰りたい」
守護霊に即答した。
「将軍」
スミスが真面目な顔で言う。
「兵士達が見ております」
「そうだった」
慌てて咳払いをする。
「問題ない
問題ない
問題ない」
俺は周りの兵士に聞こえるように
なるべく冷静にしゃべった
もしかしたら自分への
メッセージだったのかもしれない
落ち着け。落ち着け
そう自分に言い聞かせていないと
おかしくなりそうだったからだ
その時だった。
「将軍!」
ジョンが駆け込んで来る。
顔色が悪い。
「病人数が増えています」
「どれぐらいだ?」
「朝の報告からさらに増えました」
最悪だった。
「撤退のタイミングが遅かったようですな」
スミスは冷静に状況を分析した
「隔離は?」
「続けています」
「治療は?」
「出来る限りは」
だがジョンの表情は明るくない。
「正直厳しいです」
その言葉に誰も反論出来なかった。
敵が来る。
病人は増える。
援軍は来ない。
状況は悪化する一方だった。
「将軍」
ジャックが空を見上げる。
「どうした?」
「静かすぎます」
確かにそうだった。
敵がいるはずなのに静かだ。
まるで嵐の前のように、
嫌な沈黙だった……
その瞬間。
ドォォォォォン!!
大地が揺れた。
「敵襲!!」
見張り台から叫び声が響く。
「南軍です!!」
再び轟音。
今度は近い。
土が舞い上がる。
「砲撃だ!!」
兵士達が一斉に動き出す。
さっきまでの静寂が嘘のようだった。
「将軍!」
ジャックが叫ぶ。
「戦闘開始です!」
俺は思わず空を見上げた。
「隠居生活二週間も持たなかったな……」
そう呟きながら剣を抜く。
目の前では南軍の旗が次々と現れている。
その数は、俺の予想を遥かに超えていた。
そして――
ゲインズの戦いが始まった。




