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『世界史赤点の俺。なぜか南北戦争の将軍になってしまった件』  作者: 西住
第一部 南北戦争に飛ばされた俺

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第十八話 束の間の平穏

 首都へ到着して数日。


 俺は食堂で朝食を食べていた。


「うめぇ……」


 思わず声が漏れる。


 目の前にあるのは普通のパンだった。


 特別な料理ではない。


 だがシャイロー帰りの俺には違った。


「将軍……ただのパンですよ?」


 ジョンが呆れた顔をする。


「ただのパンだからいいんだ」


 俺はパンを持ち上げた。


「見ろ」


「?」


「曲がる」


「パンですからね」


「ちぎれる」


「パンですからね」


「歯が立つ」


「だからパンですって」


 俺は感動した。


「あのクソ硬いパンに比べたら高級料理だ」


「そこまでですか」


「硬すぎて、むしろ銃に詰めて弾代わりに撃った方が役に立つ」


「それは流石に盛ってます」


『そういえば』


 守護霊が不意に口を開いた。


『日本の戦国時代では、弾の代わりに石を使ったって話を聞いたことがあるわね』


「え?」


つぶてってやつ』


「マジで?」


『マジよ』


 適当に言ったつもりだったんだが……

 どうやら間違ってはいなかったらしい。

 

 俺は温かいスープを口に運んだ。

 

 うまい!

 実にうまい!!

 前線の飯とは大違いだった。


「やっぱり首都勤務は最高だな」


 俺は満足そうに呟いた。


「戦争も無し

危険な任務も無し

まともな飯付き」


 完璧である。


「将軍」


 スミスが口を開いた。


「なんだ?」


「まだ何も決まっておりませんぞ」


「決まってる」


「何がです?」


「俺の隠居生活だ」


 三人が同時にため息を吐いた。


---


 その日の午後。


 司令部の空気は妙に慌ただしかった。


 廊下を伝令が走る。


 将校達が忙しそうに書類を抱えている。


「何かあったのか?」


 俺は近くを通った将校に聞いた。


 しかし返事はない。


 皆、余裕がないようだった。


「珍しいですな」


 スミスも周囲を見回している。


「何か問題が起きたのでしょうか」


 ジャックも首を傾げた。


 その時だった。


「将軍!」


 通信兵がこちらへ駆け寄って来た。


「司令部より至急招集命令です!」


 嫌な予感がした。


 つい数日前にも似たような事があった気がする。


「行きたくない」


「行ってください」


 ジョンが即答した。


---


 会議室へ入ると、そこには見覚えのある顔が並んでいた。


 首脳陣である。


 その表情は重い。


 前回とは明らかに違っていた。


「来たか」


 一人の将軍が口を開く。


「何か問題ですか?」


 俺が聞くと、部屋の空気がさらに重くなった。


 嫌な予感しかしない。


「東部戦線で問題が発生した」


 机の上に地図が広げられる。


「ポーター将軍の部隊だ」


 誰だ?

 

 悩んでいると守護霊は答えた


『確か……東部軍の有力な将軍の一人ね』。

 

 なるほど…そこで問題が発生したと。


「敵の攻撃ですか?」


「いや」


 首脳陣は首を横に振った。


 そして一枚の報告書をこちらへ差し出した。


「疫病だ」


 部屋が静まり返る。


「現在、部隊内で急速に感染が広がっている」


「被害は?」


「既に多数の兵士が戦列を離れている」


 俺は思わず顔をしかめた。

 

 敵なら撃てばいい。

 砲なら撃ち返せばいい。


 だが病気は違う。

 相手が見えない。


「最悪の場合」


 首脳陣の一人が静かに言った。


「東部軍は戦わずして戦力を失う」


 その言葉の重みは十分すぎるほど伝わった。


「で、俺にどうしろっていうんです?」


 当然である。俺は医者じゃない


「ポーター将軍の変わりに前線へ行ってくれ」


「嫌で……」


 全部言う前に三人に司令部から連れ出された。


「さあ!将軍行きますよ!」


 さっきまでの平和な気分は完全に吹き飛んでいた。


 そして俺はまだ知らなかった。


 この問題が、俺の考えていた隠居生活を木っ端微塵に吹き飛ばすことになることを。

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