第十六話 戦後処理
シャイローの戦いは終わった。
正確には、南軍が後退した事で戦場に静けさが戻ったと言うべきだろう。
とはいえ、静かなのは銃声だけだった。
「負傷者をこっちへ!」
「水だ! 水を持って来い!」
「軍医を呼べ!」
戦場のあちこちで怒号が飛び交う。
ジョンは既に俺達から離れ、負傷兵の治療に追われていた。
「相変わらず元気だな」
「将軍。軍医が忙しいのは良い事ではありませんぞ」
スミスが真顔で返した。
「それもそうか」
俺は苦笑した。
その時、通信兵が駆け寄って来た。
「将軍!」
「どうした?」
「本軍より伝令です!」
差し出されたのは、あの鳥だった。
金属の羽を持つ奇妙な伝令鳥。
俺はいまだに慣れない。
「鳥ですが?」
ジャックが不思議そうに首を傾げる。
「だから鳥じゃねぇんだよ……」
思わず頭を抱える。
通信兵が筒を外し、中の命令書を確認する。
どうやら戦果報告の確認らしい。
それを見届けながら俺は呟いた。
「しかし便利だよな」
「伝令が何日もかかる距離を一瞬だ」
するとジャックが頷く。
「ただ数が少ないのが欠点です」
「そんなに作れないのか?」
「一羽作るのにも長い年月が必要だと聞いております」
スミスも続けた。
「だからこそ大雨で通信網が止まった時は焦りましたな」
「なるほど」
便利だが万能ではない。
少しだけ納得した。
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「そういえば将軍」
ジャックがふと思い出したように言う。
「一つ聞いてもよろしいですか?」
「なんだ?」
「どうして奇襲を予想できたのです?」
スミスも頷く。
「確かに気になりますな」
ジョンもいつの間にか戻ってきていた。
「私も知りたいわ」
全員の視線が集まる。
俺は少し考えてから答えた。
「日本の昔の歴史だ」
「また日本ですか」
三人が首を傾げる。
「昔、大軍が油断していた所へ少数の軍が奇襲した戦いがあった」
「その時も雨だったんだ」
「結果は?」
ジョンが聞く。
「大軍側の負け」
三人が黙った。
「だから嫌な予感がした」
「それだけですか?」
ジャックが聞く。
「それだけだ」
「その程度で全軍を準備させたのですか?」
スミスまで聞いてくる。
「結果的に当たっただろ」
三人は顔を見合わせた。
「流石将軍ですな!!」
「流石将軍ですね!!」
「流石将軍ね!!」
「お前らな~~」
『まあ慕われるっていい事よ』
守護霊までもがそう言ってきた
俺は思わずため息を吐いた。
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その後。
例の巨大な大砲の話になった。
「あれは二度とやらん」
俺は即答した。
「将軍なら大丈夫だと思ったのですが」
ジャックは不思議そうな顔をしている。
「どこに根拠がある」
俺は全力で否定したが……
「無事だったでしょ?残念」
ジョンは本気で悔しがっていた。
「しかし……私は将軍の意見に賛成ですな」
スミスが乗っかる。
おお!!味方が現れた
「あの大砲は大きすぎます。」
うんうん。俺は笑顔でその話を聞いた
「つまり飛んだが最後。戻ることは出来ません」
そうそう。俺が言ったことをちゃんと覚えてくれていたらしい
「これを使うのであれば…もう一基新しい砲が必要です」
うん?なんか変わってきてないか?
「よって同じ砲を作るように首脳陣へ進言したします」
いや!そうじゃないんだよ!!
なんで「使用」の流れになってんだ!
「でもあれと同じ砲を作る。
そして持ってくるとなると…」
ジョンが計算し始めた
「馬4000。兵士2000。このぐらいは必要ね」
「ジョンさんや?どうして計算をしているのかね?」
俺はあきれ顔でジョンに聞いた
「私は軍医ですけど…それと同時に
戦闘物資の担当もしてまして」
ジョンが続ける
「包帯や止血剤。
そして弾や食料といった消耗品」
「それらは同じ消耗品だから
同じ人間が管理した方がいいだろうと言うことで
私がすべてその辺は回していました」
「つまりそれらの問題が解決すれば
あの砲を使う事は出来るってことだよな!!」
ジャックの目が輝き始めた
「まあそう言うことになるわね」
「それであれば、
私も否定はしません」
スミスとジョンはほぼ同時に答えた
み、味方が誰もいない……
『諦めなさい』
そういうと三人は勝手に鳥?に
それらの要望を書いた手紙を括りつけて
首都へ飛ばしてた
暫くして……
「将軍!
司令部から正式命令です!」
嫌な予感しかしない。
俺は封筒を受け取った。
そして中身を読む。
「……は?」
「どうしました?」
ジャックが覗き込む。
「配置換えだ」
一瞬、全員が静まり返った。
「栄転だ!!!!!」
俺は思わず空を見上げた。
「どういうことですか!?」
ジャックが俺に聞いてきた
「見てみろよ!首都に戻って来いってさ。
つまりシャイローから栄転だ!!!」
これは一人で小躍りしていた
「お前ら今日は俺の栄転祝いだ!
補給部隊へ連絡しろ」
「え?」
ジャックが驚いた顔で聞いてくる
「秘蔵のワインを出せ!!
1700年代の物だ」
「あの……」
スミス小隊長が声をかけてきたが
「なんだ!?お前ワインは嫌いか?
あいにくと俺も酒は飲めないんだが、
良い事があった時には喜びは分かち合うものだろう?」
「それも…そうですな」
スミスは言いかけた言葉を飲み込んだ
「飲めや!歌えや!踊れや!」
周りの兵士達は完全にお祭りモードに入った
しかし……その戦場が、俺の想像以上に重要な場所だという事を
この時の俺は知る由もなかった
もし選択を変えることが出来るのであれば、
きっと俺はここで東部戦線へは移動してなかっただろう
東部戦線への移動が、
俺たちの運命を大きく変えることになるなど。




