第十四話 繋がった戦線
スミス隊の前では激しい戦闘が続いていた。
森の中から現れる南軍兵士。
それを北軍兵士達が迎え撃つ。
「撃てぇぇぇ!!」
銃声が連続して響く。
雨で濡れた地面に兵士達が倒れていく。
だが。
「押し返したぞ!!」
誰かが叫んだ。
南軍の隊列が崩れていた。
さらに北軍兵士達が前進する。
「敵が下がっていきます!」
伝令兵が報告した。
スミスが大きく息を吐く。
「どうやら持ちこたえましたな」
俺もようやく肩の力を抜いた。
正直かなり危なかった。
あと少し到着が遅れていたらどうなっていたかわからない。
その時だった。
「将軍!」
通信兵が駆け寄ってくる。
「通信網が復旧しました!」
「本当か!?」
「はい! 一部のみですが伝令鳥による通信が可能です!」
どうやら大雨が弱まったことで何羽か帰ってきたらしい。
俺はすぐに通信兵へ向かった。
「ジャックと繋げろ!」
「了解!」
数分後。
通信筒の向こうから聞き慣れた声が響いた。
「将軍か!?」
「ジャック!」
思わず声が大きくなる。
「そっちはどうだ!?」
返事はすぐに返ってきた。
「正直限界だ!
前線を維持するだけでも精一杯だぞ!」
いつものジャックにしては余裕がなかった。
それだけ状況が悪いのだろう。
俺は拳を握った。
「もう少し耐えてくれ!」
「簡単に言ってくれるな!」
珍しく弱音を吐いている。
だがここで諦めるわけにはいかなかった。
「いいから耐えろ!
こっちは南軍を押し返した!
もう少しだ!」
通信筒の向こうが静かになる。
その時。
別の声が聞こえた。
「ジャック?」
ジョンだった。
「敵が引いていくわ」
「……は?」
ジャックの間抜けな声が聞こえる。
「本当よ」
「南軍が後退してる」
しばらく沈黙。
その後。
「本当だ……」
ジャックの声が震えていた。
「敵が下がっていくぞ……」
通信の向こうで兵士達の歓声が聞こえる。
俺は地図を見ながら答えた。
「我々の戦線を突破できなかった
このまま攻勢を続ければ側面を突かれる」
俺は隣にいるスミス小隊長へ目を向けた
「つまり南軍はそれを恐れたのですな」
スミス小隊長は淡々と語った
なるほど……。
つまり。
スミス隊が持ちこたえたことで、ジャック隊も助かったということか。
「将軍!」
通信筒の向こうからジャックが叫ぶ。
「こちらは何とか持ちこたえられそうだ!」
その声には先ほどまでの焦りはなかった。
俺はようやく安心した。
だがスミスは真顔で言った。
「将軍」
「なんだ?」
「こちらは大丈夫です」
「早くジャック殿の元へ向かってください」
俺は少しだけ黙った。
「行きたいのは山々なんだけどな……」
「?」
スミスが首を傾げる。
「ここに来るのに巨大大砲で撃ち出されたんだ」
「はい」
「つまり戻るにはもう一基巨大な大砲が必要になる」
沈黙。
スミスは真面目な顔で考え込んだ。
「なるほど」
「納得するな」
思わず叫んだ。
周囲の兵士達まで頷いている。
どうやら誰もおかしいと思っていないらしい。
「将軍もう少し小さくなれませんか?」
そんな事を言っている兵士まで現れた。
『北軍ってこんな軍隊だったかしら……』
守護霊が呆れた声を出す。
「俺も知りたいよ」
俺は空を見上げた。
だが戦いはまだ終わっていない。
シャイローの戦場では、今も銃声が響き続けていた。




