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『世界史赤点の俺。なぜか南北戦争の将軍になってしまった件』  作者: 西住
第一部 南北戦争に飛ばされた俺

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第十三話 人間大砲

 夜明け前。


 空はまだ薄暗かった。


 俺の部隊だけが完全武装で待機している。


 他の部隊はまだ半分以上が休息中だった。


「将軍……本当に来るのでしょうか?」


 ジャックが眠そうな顔で聞いてくる。


「わからん」


「わからないんですか」


「わからんが嫌な予感がする」


 俺は森を睨んだ。


 ジョンも首を傾げている。


「私もまだ信じられません」


 そう答えた瞬間だった。


 森の奥で銃声が響く。


 続いて怒号。


 さらにもう一発。


「敵襲!!」


 見張りの叫び声が響いた。


「本当に来た……」


 ジョンが青ざめる。


 ジャックも目を見開いていた。


「将軍……当たりましたね」


「嬉しくない」


 全く嬉しくない。


 むしろ当たってほしくなかった。


---


 状況は最悪だった。


 南軍は複数方向から進軍してきている。


 しかも大雨の影響で各部隊との連絡が取れない。


 やばい、やばい。これ完全に

 桶狭間の戦いじゃないか……


「伝書鳥は!?」


 俺は通信担当へ叫んだ。


「ほとんど飛ばせません!

 さっきまでの大雨でほとんど逃げ出しました!」


「ほとんど?」


「一羽だけなら何とか!」


 俺は即座に命令した。


「本軍へ援軍要請だ!」


「了解!」


 銀色の翼を持つ伝書鳥が空へ飛び立つ。


「頼むぞ……」


 だが援軍を待つ時間はない。


 今戦っているのは俺達だ。


「スミス小隊長との連絡は!?」


「取れません!」


「最悪だな!」


 前線は分断されていた。


 情報を伝えようにも大雨のせいで

 木々がしけって狼煙が挙げられない


 このままでは各個撃破される。


 俺が直接行くしかない。


 そう思った時だった。


「将軍」


 ジャックが何故か自信満々だった。


「なんだ?」


「とっておきの秘密兵器

 そのために持ってきました」


「何を?」


 ジャックが後ろを指差す。


 そこには巨大な砲身があった。


 普通の大砲の三倍以上はある。


「……何あれ?」


「大型伝令砲です」


「そんなもの初めて聞いたぞ」


「最近開発されました」


ジャックは意気揚々と説明した


「と言うかこんな巨大な大砲の生産を

 良く首脳部が許可したな」


 俺は当たり前の疑問をジャックにぶつけた


「あの…それは…その…」


 歯切れが悪い


 するとジョンが間に入ってきた


「実は首脳部の中でも「こんな巨大な砲を

 作るぐらいなら、他の兵器にリソースを割いた方がいい」

 そういった声が多数派だった」


 ジョンが続ける


「でもジャックが「俺達の将軍が必要としている」って

 首脳陣を説得して…それで作らせたんだよ」


「……は?」


 俺は何を聞いたのか一瞬理解出来なかった


---


「ジャァァァック!!!てめぇふざけんなよ!

 今度余計なことをしたら、一番最初に南軍にぶつけて

 この世から退場させてやるからな!」


 最悪だ…シャイローへの左遷

 

 そして首脳部への無理難題……


「俺完全に北軍ではトラブルメーカーになってるよな」


『間違いないわね』


守護霊は真顔でそう俺に伝えた


「しかし…すぐに使える状態になったので

 問題ないはずです」


「すぐに使える?

 ちょっと待て!「すぐに使える」ってどういう事だ?」


---


「まさか」


「そのまさかです」


「嫌だ」


「将軍なら大丈夫です」


「根拠は!?」


「将軍だからです」


「根拠になってねぇ!」


 ジョンの目がキラキラしていた。


「私も賛成です」


「どういう事!?」


「骨折したら新しい治療法が試せます」


「理由が怖いんですけど!!!!」


 兵士達はすでに準備を始めていた。


 何故か誰も疑問に思っていない。


 嫌な予感しかしない。


『RIP』


 守護霊が手を合わせた。


「お前までこの流れに乗るな!」


『短い人生だったわね』


「まだ生きてる!」


『今までありがとう』


「勝手に殺すな!!」


---


「発射準備完了!」


「待て待て待て!」


「角度良し!」


「全然良くない!」


「風向き良し!」


「聞いてない!」


 俺は半ば強引に砲身へ押し込まれた。


「ジャック!」


「なんでしょう!」


「覚えてろよ!」


「将軍なら大丈夫です!」


 満面の笑顔だった。


 腹が立つ。


---


 導火線に火が付けられる。


 数秒後。


 轟音が響いた。


 ドォォォォォン!!


 空を飛んでいた。


「うわあああああああああああ!!」


 風が顔面を殴る。


 地面がどんどん遠ざかる。


『綺麗な放物線ね』


「解説してる場合か!」


『訓練兵の時に教えた二次関数がこんなところで役に立つなんてね』


「役に立ってねぇ!!」


---


 そして数分後。


 俺は別の前線近くへ墜落した。


 幸いにも藁の山に突っ込んだらしい。


 全身が痛い。


「将軍!?」


 聞き慣れた声だった。


 スミス小隊長である。


「な、何故空から……」


「俺が聞きたい」


 スミスは完全に混乱していた。


 だが笑っている暇はない。


 遠くではすでに銃声が響いている。


 戦闘は始まっていた。


 俺は無理やり立ち上がった。


「スミス!」


「はっ!」


「すぐに準備しろ!」


「何が起きたのですか!?」


「説明してる時間はない!」


 俺は銃声が響く方向を指差した。


「別の前線ではすでに戦闘が始まってる」


 スミスの表情が一変する。


 そして俺は確信していた。


 シャイローの戦いは、もう始まっているのだと。


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