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『世界史赤点の俺。なぜか南北戦争の将軍になってしまった件』  作者: 西住
第一部 南北戦争に飛ばされた俺

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第十一話 西へ

 首都を出発してから数日。


 部隊は西へ向かっていた。


 道中は比較的平和だった。


 少なくとも銃弾は飛んでこない。


 それだけでもありがたい。


「将軍」


 馬を並べたジャックが口を開いた。


「以前から気になっていたのですが」


「なんだ?」


「中国大返しとは何なのですか?」


「それ自分も気になったんだ

 人伝に聞いただけでよくわからなかったんだよな」


 俺の隣にいたジョンも気になっていたらしい。

 

 と言うかなんでこいつ付いてきてんだ?

 軍医って最前線まで同行するものなのか?


「そういえば俺も聞いてないぞ」


「将軍お願い出来ますか?」


 その言葉に周囲の兵士達まで耳を傾けた。


 どうやらずっと気になっていたらしい。


「ああ、あれか」


 俺は少し考えた。


「昔の日本の戦争の話だ」


「戦争……」


「ある武将が敵地で戦っていた」


 ジャックが頷く。


「ところが後ろで大変なことが起きた」


「大変なこと?」


「味方の親分が死んだ」


 兵士達がざわつく。


 スミスも真顔になっていた。


「それは……」


「普通なら戦場で勝ってから帰るだろ?」


「はい」


「でもそいつは違った」


 俺は肩をすくめる。


「戦場放り出して全軍で帰った」


「……」


「……」


 全員が固まった。


『説明雑ね』


「実際そうなんだから仕方ないだろ」


「それでどうなったのですか?」


 ジャックが尋ねる。


「勝った」


「は?」


「だから勝った」


「どうやってです?」


「知らん」


 俺は即答した。


「歴史の授業寝てたし」


 兵士達が妙な顔をしている。


 スミスだけが感動していた。


「やはり東洋には恐ろしい戦術が……」


「違う」


 絶対違う。


 その日の夕方。


 部隊は川辺で休憩していた。


 俺も焚火の近くに腰を下ろす。


 久々に静かな時間だった。


 その時。


 上空から影が差した。


「ん?」


 見上げる。


 鳥だった。


 だが。


「……鳥?」


 何かがおかしい。


 翼が金属に見えた。


 夕日を反射して銀色に光っている。


 しかも胴体の一部が青く発光していた。


 どう見ても生き物ではない。


「なあ」


『……』


「なあ守護霊」


『……』


「この時代にあんなのいたか?」


 守護霊は珍しく沈黙した。


 そして。


『私も知らない』


 そう答えた。


「は?」


『知らないわよ』


 俺は立ち上がった。


「いやいやいや」


 心臓が嫌な音を立てる。


「待て待て待て」


 鳥はそのまま部隊上空を旋回し、ゆっくり降下する。


 兵士達は誰も驚いていない。


 まるで当たり前の光景のようだった。


「伝書鳥が来ましたな」


 スミスが普通に言う。


「伝書鳥?」


「ええ」


 俺だけが固まる。


 ジャックも不思議そうな顔をしていた。


「どうしました?」


「どうしましたじゃないだろ!」


「?」


「あれだよ!」


 俺が指差す。


 金属の翼。


 青い発光部。


 背中の円筒形装置。


 どう見ても未来兵器だった。


 ジャックは首を傾げる。


「『鳥達の伝令』ですが?」


「鳥じゃねぇよ!」


 ロボットのような鳥は兵士の腕へ降り立つ。


 伝令役が慣れた手つきで筒を取り外した。


 そして中の紙を読む。


 本当に伝書鳩の扱いだった。


「大統領無事届きました」


 そうジャックが伝えるとその生き物(鳥?)は

 急にしゃべりだした


「感度良好だ。無事届いたようで安心した」


 その声は間違いない……。

 以前聞いたリンカーン大統領の声そのものだった。


『……』


「……」


『……』


「……」


『聞いた?』


「聞いた」


『聞き間違いじゃないわよね?』


「聞き間違いだったらどれだけよかったか」


 守護霊と顔を見合わせる。


 嫌な予感しかしない。


「なあ」


『なに?』


「俺っていうイレギュラー要素が歴史変えた?」


『その可能性が出てきたわね』


「いや歴史変えたって話じゃ説明出来ねぇ

 あれどう考えても未来技術だろ!」


「通信終了」


 鳥はそう告げると翼を広げた。


「便利ですよね」


 ジャックが呟く。


「便利ですねじゃねぇよ!!」


 背筋が寒くなった。


 ブルランまではまだよかった。


 多少違っても歴史の範囲内だと思えた。


 だが。


 あの鳥は違う。


 南北戦争どころか、俺の知っている人類史に存在していない。


『問題はそこじゃない』


「は?」


『みんな普通に受け入れてることよ』


 その言葉でさらに寒気が走った。


 確かにそうだ。


 誰一人驚いていない。


 まるで昔から存在していたかのように。


 俺だけが知らない。


 俺と守護霊だけが混乱している。


『歴史が変わったんじゃない』


『最初から別の歴史だった可能性もある』


「やめろ」


 それは聞きたくなかった。


 西へ向かう部隊の列は進み続ける。


 その先にあるのはシャイロー。


 そして俺はまだ知らない。


 そこに待っている戦場が、


 自分の知る南北戦争とは全く違うものになり始めていることを。


 ただ一つだけ言えることがあった。


「……帰りたい」


 その呟きに、


 守護霊は珍しく反論しなかった。

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