うさぎさんのお家
5月21日
窓から差し込む陽射しが、そっと床の上へ広がっている。
部屋はしんと静まり返っていて、エアコンの音と、隣から聞こえる規則正しい寝息だけが、ぽかぽかした空気の中に溶けていた。
……でも、窓の外の鳥たちは、いつもより少しだけ騒がしいみたい。
きぃ……。
目を閉じたまま、誰かがドアノブを回す音がした。
かた、かた……。
「ん……鈴木ちゃん、かな……」
ぼんやりそう思いながら、私は寝返りを打って、隣の小野ちゃんをぎゅっと抱きしめた。
「今日のうさぎさん、なんだか大きい……しかも暖かい……まだ夢の中なのかな……」
「ただいまー! ……って、え? 七奈ちゃんだけ?」
聞き慣れた声がして、私は布団を少しだけ引っ張った。
「小野ちゃん、もう帰ってるって連絡くれたのに……」
鈴木ちゃんが、不思議そうにベッドの方を見ている。
「ん……おかえり……」
眠たい声でそう返した瞬間――
「七奈ちゃん、私のこと探してたの……?」
耳元から、小さな声がふわっと聞こえた。
「変だなぁ……うさぎさんのくせに、おしゃべりするなんて……」
「えっ!? 小野ちゃんと七奈ちゃん、一緒に寝てたの!?」
「……!」
私はぱちっと目を開けた。
目が少し酸っぱくて、こすりながら隣を見ると、小野ちゃんがまだ眠そうな顔で私を見ている。
「そっか……昨日、一緒に寝たんだっけ……」
「もしかして二人って、もうそういう関係……?」
鈴木ちゃんがにやにやしながら、靴を脱いでベッドへ登ってきた。
「えへへ、ちょっと見せてよ〜!」
鈴木ちゃんが布団を引っ張ろうとして、私は慌てて押さえ込む。
そのとき――
がらっ。
ベランダのドアが開く音がした。
私たちは、まるで時間を止められたみたいに、一斉に振り返る。
そこには、小さく顔をのぞかせた井上ちゃんが立っていた。
丸い目で、ベッドの上の私たちをじーっと見ている。
「鈴木ちゃんも、やっぱり……」
「ち、違うって! ちょっと気になっただけ!」
鈴木ちゃんは慌てて布団を離し、ぴょんっと床へ飛び降りた。
「うんうん……」
井上ちゃんは意味深そうに頷きながら、ベランダのドアを閉める。
「鈴木ちゃんが見たがると思って、さっきこっそり写真撮っといたよ」
スマホを揺らしながら、井上ちゃんがにやっと笑った。
「えっ!?」
……
これが、私たちの部屋のいつもの日常。
何か特別なことがあるわけじゃない。
でも――
だからこそ、こういう時間が、“生活”っていうものなのかもしれない。




