表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/31

星が逃げちゃう夜

3月13日


最近ちょっと風邪をひいてしまった。

小野ちゃんたちと一緒にいても、ついくしゃみが出てしまう。


昨日は薬を飲んだあと、頭がぼんやりしていた。


本当は何か書こうと思ってペンを手に取ったけれど、結局そのままベッドに倒れこんでしまった。


「ベッドって、本当に気持ちいいな……布団もぽかぽかだし。」


私は布団をぎゅっと抱きしめた。

布のぬくもりが胸の奥までじんわり広がって、つらい感じも少しだけ軽くなった気がした。


今朝目が覚めても、頭はまだ少し痛かった。


小野ちゃんがそっとベッドを揺らした。


「どう?まだつらい?」


井上ちゃんも顔をのぞかせて、心配そうに私を見ている。


私は天井をぼんやり見つめながら、かすかな声で答えた。


「私は大丈夫だよ。先に授業行ってきて。」


喉はまるで刃物で切られたみたいに痛くて、

少し話すだけでもつらかった。


「薬は買った?」


小野ちゃんがそう言いながら、ベッドの下で机を探す音が聞こえた。


「引き出しの中だよ。」


「じゃあ早く起きて薬飲んで。飲んでから私たち授業行くね。」


私は小野ちゃんたちを見た。

井上ちゃんと鈴木ちゃんも一緒にうなずいている。


体を起こそうと力を入れたけれど——


小野ちゃんは靴を脱ぐと、そのままベッドに上がってきて、私の枕の横に手をついた。


目が合った瞬間、

私は慌てて目を閉じてしまった。


小野ちゃんは私をそのまま抱き上げて、ベッドから下ろした。


自分で歩こうと少し抵抗したけれど、

結局おとなしく彼女の背中に背負われてしまった。


薬を飲んだあと、小野ちゃんはまた私をベッドまで運んでくれた。


布団をしっかりかけてくれて、首だけが少し見えるくらい。


「ありがとう……」


そう言おうとした瞬間、小野ちゃんはそっと私の口を手でふさいだ。


私は目を開けた。


小野ちゃんは「静かにね」というジェスチャーをして、静かにベッドから降りた。


寮のドアがそっと閉まる。


外から小さく声が聞こえた。


「やばい、遅刻しちゃう!」


でもお昼に帰ってきたとき、

先生には怒られなかったって聞いて、少し安心した。


私はベッドに座っていたけれど、体はまだふわふわしていた。


結局また小野ちゃんに支えられてベッドから下りた。


「今日は油っこいものはダメだよ。」


鈴木ちゃんがそう言って、お粥を差し出してくれた。


小野ちゃんがふたを開けて、

スプーンですくって、ふうふうと優しく息を吹きかけた。


「よしよし、あーん。」


私は困った顔で小野ちゃんを見た。


鈴木ちゃんと井上ちゃんは横で笑いながら言った。


「小野ママのお粥ですよ〜。早く口開けて〜。」


頬が熱くなった。

熱のせいなのか、それとも恥ずかしいのか、自分でもよくわからない。


私はうつむいて、ゆっくり一口食べた。


「私、自分で食べるよ。小野ちゃん。」


「いいよ。」


小野ちゃんは笑いながらスプーンを渡してくれた。


夜になるころには、体も少し楽になっていた。


私はゆっくりベッドから下りて、温かいお湯を一杯飲んだ。


まるで干からびた大地みたいに、

私はその水を貪るように飲んだ。


ぬるいお湯が喉を通って体の奥まで広がると、

少しだけ元気が戻ってきた気がした。


服を着替えて、外の空気を吸いに出ることにした。

ずっと部屋にいると、なんだか息苦しくなってしまう。


幸い、寮から運動場はそんなに遠くない。


私は芝生の上に座った。


夜の月の光は、

まるで薄いベールみたいに、大地をやさしく包んでいた。


私は草の上に座りながら、

夜風が肌をなでていくのを感じていた。


空を見上げると、

星がきらきらと瞬いている。

暗い空の中で、とてもきれいだった。


「どうして外に出てきたの?」


少し離れたところから、聞き慣れた声がした。

軽い足音と一緒に。


顔を上げると、小野ちゃんだった。


「ちょっと空気を吸いたくて。ここで座ってただけ。」


「もう、本当に。病気なんだからちゃんと休まないと。」


小野ちゃんはわざと怒ったような顔をした。


「わかってるよ。」


私は笑いながら、隣に座った小野ちゃんを見た。


少ししてから、

私は芝生にそのまま寝転んだ。


空をまっすぐ見つめる。


小野ちゃんも私を見て、同じように横になった。


「ねえ小野ちゃん。空って、水晶玉みたいじゃない?」


私は両手で大きな丸を作りながら言った。


小野ちゃんは笑った。


「じゃあ、私たちはその中の雪だるま?」


「たぶん……そうかも。」


小野ちゃんは少しだけ近づいてきた。


彼女の手が、そっと私の手の上に重なった。


そして——

ゆっくりと、私の頬に顔を近づけた。


「でもね。」


小野ちゃんが耳元でささやく。


「あなたは、雪だるまなんかじゃないよ。」


そう言って、

私の頬にやさしくキスを落とした。


「え?小野ちゃん、今……」


「しーっ。これ以上しゃべったら、星が逃げちゃうよ。」


「……」


私たちはそのあともしばらく星を眺めて、

それから一緒に寮へ帰った。


私はそっと自分の頬に触れて、

指を鼻に近づけてみた。


そこにはまだ——

ほんのりと、

花の香りが残っている気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ