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(番外)雨の日の誕生日

番外

初めて兄さまに出会ったのは、六歳のときでした。


お父さんとお母さんの仕事の都合で、私は田舎へ連れて来られました。


その年、私は六歳。

兄さまは十一歳でした。


あの頃、おじいちゃんは村で小さな診療所を開いていて、

おばあちゃんはよく兄さまを連れて、裏庭でさつまいもを掘っていました。


蒸したさつまいもがテーブルに並ぶと、

私はいつもテーブルの端に手をついて、じっと眺めていました。


今でも覚えています。

さつまいもを割ると、

湯気と一緒に甘い香りがふわっと広がって、

中はきれいな黄金色で、

ひと口食べると、心まで甘くなるようでした。


でも、私の心にいちばん深く残っているのは、

やっぱりあの日——私の誕生日です。


その日は空がどんよりしていて、

私はまだ学校で授業を受けていました。


お昼に家へ帰ると、

兄さまの姿はありませんでした。


おじいちゃんは少し汚れたシャツを着て、

裏庭で鍬を振っていました。

おばあちゃんは家の中で、

静かに麦わら帽子を編んでいました。


私は二階の窓にもたれて、

雲に覆われた空をぼんやり眺めていました。


今日は、私の誕生日なのに……


そう思っているうちに、

私はソファの上でそのまま眠ってしまいました。


目を覚ましたとき、

大きな雷の音にびっくりして飛び起きました。


部屋のドアのところまで行きましたが、

兄さまはまだ帰ってきていませんでした。


外を見ると、

雨は激しく降り続いていました。


私は少しすねて、

兄さまがどこへ行ったのか、もう気にしないことにしました。


兄さまが帰ってきたとき、

外の大雨はまだ止んでいなくて、

おじいちゃんとおばあちゃんはお昼寝をしていました。


私はそっと顔を出して、

雨に濡れながら帰ってきた兄さまを見ました。


兄さまは傘を外に置いて、

体も傘も、どちらもびしょ濡れでした。


「にいちゃん、どこへ行っていたの?」


兄さまは胸元から赤いビニール袋を取り出しました。


袋の上には、まだ雨のしずくがついていました。


そして私の手を引いて、

二階まで一緒に走っていきました。


袋を開けると、

中には小さな小さなイチゴのケーキが入っていました。


「誕生日おめでとう。

お金があまりなかったから、これしか買えなかったけど……」


私は目の前の兄さまを見つめました。

服は体にぴったり張りついていて、

どこにも乾いているところなんてありませんでした。


それでも私は笑って言いました。


「ありがとう、にいちゃん!」


あのときの私は、


どうしてもっとぎゅっと抱きしめてあげなかったんだろう。


早くお風呂に入ってねって、

そう言ってあげればよかったのに。


夜、眠るとき、


私は兄さまの腕の中に丸まって、

足を兄さまの足の上にのせて、両手でぎゅっと抱きしめていました。


私はきっと、きっと——

一生、兄さまに優しくする。


ずっと、ずっと。

兄さま、

これからも、ずっとずっと一緒にいようね。

書いているうちに、だんだん涙がこぼれそうになってしまいました。

書き終わったあと、心の中がそっと軽く叩かれたみたいで、もうこらえられなくなって……。

こっそり、少しだけ涙が流れてしまいました。

どうか、笑わないでくださいね。

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