第10話 テイムしてみましょう
「よし、やるぞ!」
「久しぶりだから、腕がなまってるかも。」
兄レグルスが学園に行ってから2か月、ルディウスとアルディスは18年かけて習うはずのことを2か月で終わらせた。普通に考えて、ありえないペースである。しかし彼らは転生者、基礎的な知識はとうの昔に習得済み。文字も昔と変わっていないので問題なし。しかも、早く終わらせるために2か月間ずっと徹夜で授業を受けるという暴挙を実行。結果、家庭教師がグロッキーになり増員されるということが起きた。
初めは1人だった家庭教師は、ルディウスとアルディスが連日徹夜で授業を行って3日目でダウン。それを見たルディウスとアルディスが、家庭教師の増員をお願いした。こうして新たに来た家庭教師5人+グロッキーだった家庭教師1人でロ-テーションを組むことで授業は行われた。ちなみに、この2か月間全く睡眠をとらなかったはずのルディウスとアルディスが家庭教師よりも元気なのは言わずもがな。ちなみに、ルディウスとアルディスはこの2か月間ずっとハイテンションだった。
ルディウスとアルディスは転生前不眠不休で3か月くらいは徹夜できていた。なのでそれぐらいは余裕だろとか意味わからないことをほざいて実行されたこの授業。犠牲になった家庭教師たちが哀れである。余談だが、家庭教師たちの間で『地獄の2か月間』と呼ばれたこの2か月、ルディウスとアルディスの両親は王都に行っていたのでこの出来事を止めることができなかった。
「さて、まず何をしようか。」
「手っ取り早く、そこら辺の魔物を捕まえてきたら?」
「そうしようか。」
「・・・・・・あっ!近くにドラゴン(仮)がいるっぽい。」
「じゃあ、適当に痛めつけよう。そのあと俺がテイムしたらいい。」
「鍛錬にもなって、移動手段もゲットできて、まさに一石二鳥だね!」
テイムとは、自分より力がが弱いもしくは力が対等な魔物を従属させる魔法である。この魔法はかけた本人が魔法を解かない限り、一生従属されたままである。ちなみに、この魔法は今の時代にも残っていたものだ。
5分後―――――――
「うんうん。見事なダークドラゴンだね。」
「これならテイムする価値がある。期待できそうだ。」
【よくも・・・・・・よくもわが巣を破壊してくれたな。許さんぞ。殺してやる・・・・・・!】
そう言って、突撃してくるドラゴンを軽くあしらいながら、テイムするための作戦を考えるルディウスとアルディス。その様子を見てさらに怒るドラゴン。
―――ここは、先ほどアルディスが見つけたドラゴンの巣、彼らの家から50キロメートルは離れている草原地帯だ。このドラゴンは地中に穴を掘って巣を作っていたのだ。その巣の真上で、ルディウスが中位爆発魔法を発動して巣を破壊して、ドラゴンを地上まで引きずり出したのだ。
ドラゴンにもそれぞれ階級がある。一番弱いものから、地竜、飛竜、天竜となる。地竜は大地をかけるドラゴン、飛竜は空をかけるドラゴン、天竜は空と大地を制するドラゴンと言われている。人がおもに見つけるのは地竜と飛竜である。この2種類のドラゴンは小さいもののみだが飼育されていて、竜騎士が馬の代わりに乗る魔物として人気である。
今回ルディウスとアルディスが見つけたドラゴンは天竜、しかもその最上位のダークドラゴンで最低でも500年は生きている、言葉を話せるドラゴンである。見た目はファンタジーの定番モンスターのドラゴンと一緒である。ちなみに、地竜には翼がなく飛竜は翼が大きい。
「ねえねえ、ルディ。聖剣使ってもいい?久しぶりに使いたくって。」
「いいぞ。でも手加減しろ。殺すのはもったいない。」
「分かってるって。」
【なぜ、我の攻撃が当たらない!】
「「あんたが弱いからでしょ。」」
【貴様らーーーーーー!】
ドラゴンは激怒した。
【このブレスを受けてみよ!】
そう言って、ブレスを吐くドラゴン。そのブレスはどんなものでも燃やし尽くすといわれている、ドラゴンのブレスの中でも最悪なブレス。黒い炎が2人を飲み込む。こんなものを吐かれたらひとたまりもない。
・・・・・・普通は。ドラゴンは2人がいた場所を一瞥し去ろうとする。しかし、それはできなかった。いきなり、炎の刃が放たれたからである。ドラゴンは急いで防御するが間に合わない。
【ぐあーーー!】
激しい痛みがドラゴンを襲う。その痛みに耐えながら自分にけがを負わせた者を見る。そこには、先ほどのブレスで死んだはずの2人の少年がいた。そのうちの1人、白銀の少年が炎で燃える剣を持っていた。その剣の炎はとても神々しい。そしてもう1人、黒い少年は赤色の淡く光っている本を開いている。
「うんうん。特に問題はなさそうだね。聖剣フレイア、力を貸してね。」
「不具合はなさそうだな。いくぞ、魔導書グレン。」
そこから始まったのは、ルディウスとアルディスの一方的な蹂躙。圧倒的な力でねじ伏せられたドラゴンは、もう逃げだす力も残っていなかった。
「う~ん。やっぱり腕なまってる。」
「俺も魔力操作の練度が落ちた。」
これでも本調子ではないのかとドラゴンは驚く。そして恐怖する。彼らの先ほどの様子はまるで玩具で遊ぶ子供のようだった。本気で相手をしていないのがまるわかりだった。もしも彼らが本調子で、本気で相手をしていたら、自分は死んでいたかもしれない。そう考えて、ドラゴンはあの時攻撃せずに、逃げておけばよかったと思った。
「おい、ドラゴン。」
【な、何でしょう。】
「今からお前をテイムするから、抵抗するなよ。」
【ひぃっ、わ、わかりましたっ。】
「ちょっと、ルディ。怖がってるじゃん。」
「お前のせいじゃないのか?こいつと戦っているときのお前、すっごくいい笑顔だったからな。」
「それはルディもだよ。」
「・・・・・・とりあえず、さっさと終わらせるぞ。」
そう言って、ルディウスは持っていた魔導書をどこかに消すと、新しい魔導書をどこかから出す。
「魔導書ダールクを使ってみよう。」
「うん?ダールクって闇魔法特化の魔導書でしょ?テイムの魔法も使えるの?」
「使えるぞ。テイムは闇魔法の一種だからな。」
「でも、わざわざ魔導書のテイムを使わなくても。普通の魔法のテイムで十分じゃない?」
「こいつはこれでもダークドラゴンだ。普通のテイムだとダメな可能性がある。それなら、初めから魔導書の魔法を使った方がいい。」
「なるほど。そういうことなら。」
「じゃあ、始めるぞ。」
ルディウスが魔導書を開くと紫色の光がもれる。魔導書の力を引き出すためにルディウスが魔力を注ぎ込む。ルディウスは自分の魔力の100分の1を込める。たった100分の1の魔力。それでも十分強大な魔力だ。
例えるなら、成人した大人の魔力の平均は100なのに対しルディウスの100分の1の魔力は約10000という単位になる。ちなみに、この魔力量でも十分脅威なのにまだまだ魔力が増えている。
紫色の魔法陣がドラゴンとルディウスの下に現れ、紫色に光る文字がドラゴンの周りを囲む。
「『我に従属させるはダークドラゴン。ダークドラゴンに名を下賜する。汝の名はクロ。』」
「ぶっ!!」
【なっ!!】
アルディスが思わず吹き、ドラゴンは絶句する。アルディスは、ルディウスにネームセンスはないと知っていた。おそらく、見た目が黒いからそう名付けたんだろうとアルディスは予想した。実際、その通りである。
ルディウスが名をつけると同時にドラゴンを囲んでいた文字がドラゴンの中に入っていく。
「よし、これでテイムは終了だ。」
「ちょっ、な、名前、くふっふふ・・・・・・。」
「?俺たちに抵抗できずに地に這いつくばったんだ。クロで十分だろ。」
「あ、そういう意味もあったんだね? くっ、はっはははは、あはは、げほっげほ。くふっ、もう、ルディ。サイコー。」
【えっと、わ、私はどうすれば。】
「とっ、とりあえず人化しよっか。くっ、ふふ。」
「・・・・・・これでいいでしょうか。」
「うんうん。結構イケメンだね、ミステリアスなかんじの。」
赤みがかった長い黒髪に、釣り目気味の濃い黄金の瞳。細身だが、しっかりと筋肉のついた長身の体。クロは人化すると、大人の色気あふれる、なんかたくさん秘密を持ってそうな、イケナイ感じのミステリアスなイケメンになった。ルディウスとアルディスには劣るが、人外の美貌であることは間違いない。
「クロ、出来たら俺たちと同じ年くらいになれるか?」
「はっ、はい!」
ルディウスの言われたとおりに、外見年齢をルディウスたちに合わせる。そこには、大人の色気とイケナイ雰囲気は消えた、長髪をひとまとめにした、勝気な雰囲気のかわいらしい美少年が立っていた。
「あ、ミステリアスな感じが消えた。」
「よし、それで家に帰るぞ。」
「クロのこと、なんていう?」
「街で出会った、記憶喪失の子供だと言っておこう。俺たちの友達だと言っておけば大丈夫だ。」
「ばれたらどうするの。」
「ごまかす。それで、どうしようもなくなったら、素直に正体を言えばいい。」
「はぁー。ま、いっか。行こう、クロ。と、その前にほいっ。・・・・・・これでばれないね。地形は来た時とまんま同じに直したから。」
予備動作もなしに魔法を行使し、地形を戻したアルディスに、クロは思わず言葉を失ってしまう。
「どうした?アル。」
「何でもないよ。じゃあ、行こうか、クロ。」
「はっ、はい!」
こうして、元魔王と元勇者はドラゴンをゲットしたのだった。
ドラゴン、ゲットだぜ!




