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宗像大社

みんな、イマジナリーなんたらって知ってる?

俺は最近、イマジナリー神様をお見かけするんだけど、わかるわけないよね…

…イマジナリーってなんだっけ?


これは、そうなるちょっと前のお話。


―――


車内には懐かしい感じのロックが流れ、後部座席の友人がそれに合わせて歌っている。

それをどう思っているのかわからないが、運転する友人の機嫌は良さそうだ。

俺は助手席で窓枠に頬杖をつき…流れる景色とこの時間を、ぼーっと楽しんでいた。


「会うたびに同じアーティストの曲が流れるんですが」


フレーズも音程も崩れてきたあたりで、俺は言葉を発する。

メチャクチャになった隆の歌声に、ハンドルを回す誠也くんは笑った。


「サイッコウのっ、ジャパニーズ・ロックなんだぜー!イエー!」


ヒップホップのような両手でのリアクションをとりながら、それでいて普通のテンションで、回答らしい言葉が返ってくる。


そのチグハグさにやられて、笑わされる。


この日は、山口県の唐戸市場で早めの昼メシから始まり、

北九州の門司港レトロを経て、宗像市の宿にチェックイン。

まだ時間も早いため、宗像大社へ向かう流れとなった。


そういえば、宗像(むなかた)の文字を俺は最初、読めなかった。



「ありがと誠也くん、おつかれさま。」

「あっざまーす!」


宗像大社の駐車場に停めた車から降り、それぞれが鳥居へ向けて歩き出す。


無事に目的地へ到着しました。お見守りいただきありがとうございます。

立ち止まり、こっそりと心の中で感謝の報告をする。


自認しているが、俺はもしかしたら、ちょっと変なやつだ。


友人たちは反応を見せず歩き続けている。


駐車場の横を通る歩道から繋がるように、本殿へ真っ直ぐ道が伸びている。

俺たちは目配せをしながら、大きい鳥居の前へ出る。


一礼。


お邪魔いたします。


―――


境内は白く落ち着いて、美しかった。


他の参拝者をぼんやり把握する。

変な癖なのか、道ゆく人の顔や姿を意識しないと細かく認識できない。

"そこに居る"と思わないと、友人にも気付けない。


つい最近意識し始めた、参拝の作法。

参道の真ん中は歩いてはいけない、横切る時は軽く頭を下げる、あとは…勉強中だ。

他の参拝者や、祀られている神様への無礼にならぬよう、と自分に言い聞かせる。


各々が目につくものに興味を惹かれ彷徨う中、俺は"宗像大社由緒"の案内板が目に入った。


御祭神(ごさいじん)は天照大神の三女神で、

田心姫神(たごりひめのかみ)

湍津姫神(たぎつひめのかみ)

市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)

が祀られているとのこと。


手水舎(てみずや)に着いたが、まだ2人は来ていない。

スマホで三女神の由来などを調べていると、程なくして合流。

ここは柄杓(ひしゃく)を使うのではなく、流れ出る水で手を清め口をすすぐ。


神門越しに本殿を覗く。

ここまでの色と全く違う世界を感じる。

…重い。


神門の前で礼。敷居を…そう、踏まぬようにして跨ぐ。

周囲を見渡すと、すごい数の摂末社せつまつしゃに囲まれていることを知る。


―――


参拝の作法。

二礼して、二拍手して、一礼。


本殿(第一宮)に向けてお賽銭を納め、二礼二拍手一礼(感謝と報告)と終えた頃、

気がつくと隆の姿はなかった。自由すぎる。


「どこいった隆くん…あ、おった」

隆の捜索を俺に促すように声に出したのだろうが、彼は自ら見つけたようだ。


隆は"高宮参道"と書かれた入り口へ振り返りもせず向かっていた。なんてやつだ。

この時間帯から周囲に並ぶ多くの摂末社へお参りを始めるのは確かに難しい。

由来なんかも現状は知らないため、俺でも今日はそうする。


俺たちは周りを見渡しながら、隆を追うように高宮参道を歩く。

この道、以前スマホの地図で見た際に、木々に阻まれて見えなかったんだよね。

実際に歩くとわかる、木の密度。圧倒される。


そんなことを考えている間にも、俺たちを気にせず進む隆。

立ち止まった、と思ったら、行き先の案内板を見て…彼は直進を選んだようだ。


俺たちも、隆が見た行き先案内板を確認し、それが指す道へと視線を移す。

左を向けばすぐに到達する"第二宮、第三宮"。

直進から石段を登る"高宮斎場 五分"。


えっ、そっち?


成哉くんは俺と目を見合わせ、隆を追うために高宮斎場への道へと踏み出した。


彼は数歩進んだ後、後に続かない足音に気付いたのか、眉を上げて振り返る。

 

俺は彼に敬礼のような仕草をしたあと、

申し訳ない思いを表情に乗せ(届けっ)、軽く手を振りながら、

第二宮、第三宮と書かれた方へと歩き出した。

そう、俺も隆と同類である。


―――


第二宮 第三宮の中で、この一画を説明する板を見つける。

この説明板側が第二宮。田心姫神の御分霊が祀られていて、第三宮は湍津姫神の御分霊が祀られていると読んだ。


田心姫神が沖津宮(おきつぐう)。この辺津宮(へつぐう)から北の島に祀られている女神様。

湍津姫神が中津宮(なかつぐう)。辺津宮と沖津宮の間の島に祀られている女神様。

さっきスマホで見た情報とで、ぐるぐるイメージが形成される。


パン、パン、パン、パン!


柏手(かしわで)を4回打つ人がいた。4回?

ぼーっと考え込んでいた俺は、現実に引き戻された。


そういえば以前、宇佐神宮で"二礼、四拍手、一礼"と書かれていた記憶がある。

二拍手との違いはあるのかな?あとで調べよう。


第二宮の鳥居の前で一礼。

中へ進み、お賽銭を納めて…二礼、二拍手、感謝と報告。一礼。


第一宮と同じ内容で、感謝と報告を行った。

ゆっくりと頭を上げ、鳥居を出てから振り返り、もう一礼。


この辺の仕草は教わったというより、いろんなところで見て倣った。

最初は意味なんて考えてもなかった。感謝が伝われば良いんじゃないか、くらいに。

ご無礼のないかたちで、少しずつ学びますので、ご容赦ください。


第二宮の前の鳥居から、第三宮の前の鳥居へ体を向け、歩く。

背の高い遮蔽物などは無く、今はこの一画に誰も居ないことがわかる。


第三宮へ向けて、鳥居の前から一礼。


鳥居を潜り、お賽銭を納める。


二礼、二拍手――


「無事に友人とこちらへ伺うことができました。ありがとうございます。これからも道に迷わぬよう努力していきます。お見守りください」


……


?覚えのない感覚が頭に宿る。

いやいや、参拝中に雑念とか失礼だ。一礼を終えて、ゆっくりと頭を上げる。


目の前に、不自然なほどにしっかりと、紫色の着物…じゃないな、もっとフワッとした衣を着た女性が目に映った。

本作はフィクションです。

作中に描かれる神や出来事は、信仰や感じ方の一つの形を表現した創作です。

実在の宗教・信仰・人物とは関係なく、それらを否定・評価する意図はありません。


宗像大社ではそのような経験はありませんが、社務所などで態度が悪い人にあたっても、

祀られている神様や土地を嫌わないでくださると幸いです。

悪いのはその人であり、神様や土地、その他の人々は関係ありません。


作法については、場所ごとで違うことがあるので、あらかじめ調べていくと良いかもしれません。

思い込みなどで多少違っても、それを咎めるような人はきっと多くはありません。

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