8話 託された者
ゼティフォールとステラはフレアの運営するギルド『ステルセント』に加入した。
他にも勧誘したがっていたギルドはあったが、伝説級の冒険者フレアがまるで確定事項とばかりに入る事を宣言したとあれば誰も異議を唱えられるはずもなかった。
しかも、ゼティフォールとステラがフレアに貸しがあるので尚更である。
「──とうちゃーく!!」
フレアの屋敷でありステルセントの本部(支部は無い)に到着すると、ステラはフレアの腕から飛び出して、わーっと駆け出した。
「ステラ、危ないから急に走らない!」
ゼティフォールは慌てて追いかけてステラをキャッチする。
「はうっ!
つかまった〜」
ステラは鬼ごっこのような気分なのか、ゼティフォールに捕まって嬉しそうにケラケラ笑う。
「おい、もがくな!
ステラが本気を出すと私が遠く彼方に吹き飛ばされてしまうから!」
そんなじゃれあい(?)をしている間にフレアは屋敷の鍵を開錠して扉を開いた。
『どうぞ〜Welcome〜』
そして、ゼティフォールの肩を叩いて、ペンで書き書きした木札の文字を見せる。
「ん?
……ああ、済まない。すぐに入るよ」
「なあに?
はいっていいの?」
ステラはまだよく字が読めないみたいだ。
「……そうだ。
今度また文字を教えてやらないとな」
「うん!
ステラはね、『ステラ』と『パパ』『ママ』『ゼティフォール』『ルチア』だけよめるよ!」
そんな会話を挟みつつ、2人はフレアの屋敷に入っていった。
● ● ●
正直に表現するなら、ゾンビやバケモノが出て来そうな、薄暗い森の中にある洋館だった。
古臭く埃っぽい見た目(掃除はされてるので実際は埃っぽくはない)をした木造家屋で、扉を潜ってすぐに鎮座する正面階段、歴史を感じる装飾、踏めばギシギシと音が鳴る床、よく分からないポエムが刻まれたオブジェ、窓が塞がれて陽の光が届かない部屋、そして拭かれ磨かれ過ぎた結果ツルッツルになった女神像があった。
「………………。
なかなか雰囲気のある家だな。歴史もありそうだ」
ルチアの像について触れないのはわざとだ。が──
「ママだああ!!!!」
もちろん、ステラは反応する。
ママが大好きなのだから仕方ない。とは言え、パパに言われたことは覚えているので、ステラはすぐにゼティフォールに向き直ってこう言った。
「はやくママにあいたいねぇ。
おみやげ、なににしよっかな〜」
「そうだな。
定番ならば特産品や食べ物かな。しかし、女神とはいえ女性だし、髪飾りや部屋に飾る小物でも良いかもな」
ふたりがお土産について話していると……。
──ガチャン。
ドアの鍵が閉められ、家の中が完全な真っ暗闇になる。
「なになに!?」
「フレア、これはどういうことだ!?」
ここに誘い込まれたのか?
装備品もフレアというのも実は嘘で、覇王の部下がゼティフォールたちを始末するために、こんな誰もいないところに閉じ込めたのか?
色んな憶測や可能性を考えながら、ゼティフォールとステラが身構えた。しかし──
「……っぷは〜!
これでようやく落ち着けます〜」
フレア(?)は兜を外すと、気の抜けたふんわりとした女性の声で話し始めた。
「なんだ?」
ゼティフォールは吸血鬼の特性を活かして暗視すると、そこには長い銀髪で赤い目をした線の細い女性が鎧をポイっと脱ぎ散らかしていた。
「……あ、見ちゃいました?」
暗闇の中バツの悪そうな顔で苦笑いする。
「ああ、見た。
パジャマの上に鎧を着ていたのだな」
そう、フレアはプラチナの鎧の下に着ていたのは、鎖帷子や緩衝素材の服ではなく、なんの変哲もない花柄のパジャマだったのだ。
「ゼティフォールさんとステラさんを迎えに行くだけなので、見えないところはいいかなと」
「まあ、気にするな。
わざわざ鎧を着たのは、冒険者だと分かりやすくするためと、陽の光を直接浴びないためか」
「光属性自体は大丈夫なんですが、陽の光はどうも受け付けなくて……。
光を操って体に当たらない様にもできますが、そうなると僕の体が見えなくなるのでステラさんとゼティフォールさんにいらぬ誤解を与えると思って、こうして鎧をチョイスしました」
光に当たらないようにすると結果的に、光学迷彩かステルス、なんなら透明人間みたいになっちゃうのだ。
「ねえ。
おへや、あかるくしていい?」
「あ、すみません、し──ステラさん!」
ステラがブーたれると、フレアは慌てて光魔法を発動した。
すると、直視してもなぜか目が痛くない、でも明るい光で家の中が照らされる。
「あ、フレア!
こんなに、ちらかして!
だめだよ〜?」
明るくなるや否や、ステラはフレアの脱ぎ捨てた鎧を見つけ、叱りながら拾い上げる。
「ああ、すみません!
へへ……すぐに片付けます。あの、ラズベリーラテがあるので、終わったら一緒に飲みませんか?」
「え?
ステラ、ラズベリーもミルクもすき。のみたい!」
どうやら、フレアはステラの好みを知っているようだ。
ゼティフォールはそれを不思議に思うが、吸血鬼の好きなものとしてミルクもベリー系も定番なので、深くは追求しないが、他にも気になる所はあるので追々聞く必要がある。
● ● ●
鎧をフレアの部屋に戻すと、3人は大きなテーブルのあるリビングでひと息ついていた。
「おいしいねえ」
ステラはラズベリーラテをクピクピ飲んで満足げだ。
「良かった。師匠に教えてもらった作り方、ノートに残して置いて正解でした」
フレアがほっとした様に胸を撫で下ろす。ちなみに、まだパジャマのままだ。
「……フレア、色々聞きたいことがあるのだが、良いか?」
ゼティフォールはフレアに対して聞きたいことがたくさんあった。
「どうぞ。答えられる範囲でお答えします」
フレアはは聞かれることを分かっていたのか、案外あっさりと頷いた。
「なぜ、私たちを先回りして動けたんだ?
この装備なんて10年近く前から準備していたそうじゃないか。
それと、我々の目的を知ってることもだ。
ギルドにここまでして引き込みたい理由も知りたいな」
装備は製作だけで1000万金貨(10億円相当)で、その素材は自ら集めたのだから、お金だけでなく労力と難易度も桁違い。そんな途方もないことを面識の無い相手のためにやり遂げたのだ。
「まず最初に、僕が先回りできたのも、目的を知っているのも、師匠が事前に教えてくれたおかげです。
それに、準備していたのも師匠の望み。
……約500年前、勇者歴になって間もない頃。
モンスターのせいで両親を失い孤児だった僕は、師匠に拾われ、この屋敷を与えられ、一人前の冒険者になるまでたくさん面倒を見てもらいました。
だから、恩返しとして師匠の願いを全力で叶えようとしているんです」
「師匠……か。
ただの師匠というよりは、恩人であり、育ての親でもあるんだな」
「フレア、そのししょーは、どんなひと?」
「それは……星の勇者です」
そう、フレアを助け、師匠となり、この時代に願いを繋げたのは他でもない。
かつてゼティフォールを倒して使命を託した星の勇者本人だったのだ。
お話を読んでくれて ありがとうございます。
良いなと思ったら 気軽に
ブックマークと ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎(ポイント)を
よろしくお願いします。




