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魔王の娘が勇者様!?時空を超えて世界もパパも救います!  作者: 藤巳 ミタマ


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7話 親の責任と恩人

 前職無しでいきなり魔法剣士と勇者になったという親子の話題は、冒険者協会中に瞬く間に広まった。


「おいおいマジかよ!」


「しかも、娘の方はたった4歳で勇者だぜ。

 大きくなったら神にでもなっちまうんじゃねえか?」


「トンビがタカを生むって言うが、これはもうドラゴンがウロボロスを生むようなもんだな」


「……すごいと思ってたけどよぉ、ほぼ無傷で済んだのは奇跡だな」


「そうでゲスねぇ……」


「冒険者の未来は明るいわね」




 ────


 ──────


 ──────────



 そんなこんなで、ゼティフォールとステラは一躍有名人になった。

 まあ、広めたのは主にゼティフォール自身なのだが。



「──そうだ、素晴らしいだろう。

 子供が親を超えるのは1番の親孝行だ。そう思わないか?」


 食堂でたくさんの冒険者や職員さん(子供がいる人多め)に囲まれ、ゼティフォールは得意げに語りながら隣に座るステラの頭を撫でる。


「親子ってそういうもんなのか?」



「見解はそれぞれですが、気持ちは分かります。

 息子が今年学校に通い始めたんですが、僕が子供のころ解けなかった問題をスラスラ解いてて、天才だと思いましたし。

 ……はっ!

 これが、親バカってものなんですかねえ?」


 さっき診断の対応をしてくれた職員さんも、ゼティフォールとともに嬉しそうに語る。


「顔がニヤけっぱなしだぞ、職員さん。

 いいなあ、子供かあ。

 親になったら、俺もこうなるのかな?」


「親って、そういうもんさね。

 あたいは料理がか(・)ら(・)っ(・)き(・)し(・)なんだけど、娘はすごく上手でね。

 プロになれるんじゃないかと言ったら、娘に『気が早い』って怒られたよ」


 踊り子のお姉さんは『怒られた』と言いつつも、それすら嬉しそうに語る。


 すると、そこに騒ぎを聞きつけたのか、奥から重装鎧を着た黒ライオン獣人のおじさんがやってきた。


「ほう、魔法騎士と勇者が一気に現れたと聞いてやって来てみれば、子供の素晴らしさを語っておいでですか」


 落ち着いた重厚なその声は、静かながらも存在感があり、周囲の者が一斉に振り返ってしまうカリスマ性があった。


「アレキサンダーさん!?」


「え、アレキサンダーって、言えば、あのギルドマスターの?!」


 そう、このおじさんこそ、冒険者協会ディアマンテ本部の総括であるギルドマスター、魔闘士のアレキサンダーだ。

 身長は2m20cmで戦士のスミスと同じくらいだが、筋肉は固くも柔軟で大きく、質も量も桁違いだ。

 それに、魔力量は並程度だが、それを補ってあまりあるほどの生命力のオーラを放っている。


 そのオーラは荒れ狂う嵐のようなエネルギーを感じさせ、普通の冒険者なら……いや、上位冒険者ですら、戦闘時は近付く事すらできない激しさがある。

 しかし、それを容易に飼い慣らしているアレキサンダーは、それこそ桁違いの強さを持っているのだろう。


「おい、ギルドマスターに失礼だぞ!」


 冒険者たちはアレキサンダーの登場で一気に浮き足立ってしまう。


「そう畏まらなくて良いですよ。

 ……そう、子供の話でしょう?」


 そう言いながらゼティフォールとステラに目を向ける。

 アレキサンダーの気遣う言葉に周囲の冒険者たちは鎮まり、同時に邪魔をしないように静かに口を閉じた。


「そうだ。我が娘のステラは素晴らしい。

 才能ならこの私を超えているかもしれないと話していた。

 子供が親を超えるのは、1番の親孝行。そう思わないか?」

 

 ゼティフォールはアレキサンダーの風格に物怖じせず、普段と変わりない態度で答えた。



「私もね、子供がいるんですが才能の塊で、本当に常々誇らしい気分ですよ。

 しかしそれと同時に、私自身……その子供に恥じない立派な親でありたいと、日夜努力をしています。

 ……なにせ親ですから、この身が絶えるまで子供に頼られたいじゃないですか。

 子が迷った時に手を差し伸べられるように、ね。

 親としての意地ですよ」


 アレキサンダーは真っ直ぐとゼティフォールの目を見て真剣に語る。


 そう、ギルドマスターなんて持て囃されているが、アレキサンダーからすれば、これは立派な親になろうとした副産物でしかないのだ。


「……なるほど。

 勇者という大いなる役割を持った娘の親なのだから、私も相応に努力をせねばならんな」

 

「……察しが良くて助かります。

 子供は放置しても成長しますが、だからって親の責任まで担わせてしまったら、その分苦しみ、成長の機会をたくさん逃してしまいます。

 世の中には良い親も悪い親もいる。それでも子供は、全幅の信頼を寄せてくれるんです。

 才能を活かすも殺すも、特に子供の頃は親の影響が大きい。

 ステラさんを思うなら、己の選択に責任を持ち、ステラさん以上に頑張る事ですよ。同じ親として、応援しています」


「……忠告感謝する」


 ゼティフォールが目を逸らさず答えると、アレキサンダーは満足したように頷き、ステラに微笑んでからその場を後にした。



「ばいばーい」


 ステラは微笑みに応えるように笑顔で見送った。



「……ステラの才能、私の選択……。それに、全幅の信頼か」


 ステラに目線を向けると、曇りのない目で見つめ返してくる。

 きっと本当の親に向ける全幅の信頼と言っても過言じゃないだろう。

 血のつながりは後々考えるとしても、保護者として受け入れると選択したのだから、本当の親としての覚悟を決めなくてはならない。


 出会って間もないから……で済ませてはならない。初日だろうが、子供を受け入れたのだから責任を負うのが当然なのだ。


「子供を育てるどころか、結婚や愛すら知らぬ私だが、とりあえず全力を尽くすしかないな。

 ……しかし、本当に女神ルチアと私が?」


「ん?

 ルチア!?

 ママ?

 パパ、ママに会うの!?」


「ち、違う!

 そんな嬉しそうな顔をするな!

 さっきも言ったが、お土産を用意するのだろう?

 それまで待ってくれ!」


「あ、そっか!

 はーい!」




 ● ● ●



 親としての責任の重さを確認したゼティフォール。その全てを理解したわけではないが、気を引き締めるには充分だった。


 そして、そんな出会いを終えると、今度はゼティフォールとステラがどのギルドに入るかという話題で持ちきりになる。



「しかし、私がギルドを作ることはできないのか?」


 みんなはどこに入るかとか、誰が勧誘するのかという話ばかりで、ゼティフォールが新しくギルドを作るなどとは誰も言わなかった。


「おうおうおう、新人くんは何も知らない様だから俺様が教えてやるよ」


 そこに、あのオーガみたいな戦士おじさんの、スミスがやって来た。


「あ、さっきのおじさん!」


「そうだ、アンタの父ちゃんに絡んでたスミスだ」


「とーちゃんじゃない。パパ!」


「……ぱ、パパな。分かったから。……って、問題はそこじゃねえ」


 そして、ステラを手招きしながらゼティフォール肩を組んで、ダル絡みをしているように周囲に見せかけつつ、小声で『さっきは絡んで悪かったな。悪気はなかったが、新人は久しぶりで、つい揶揄(からか)いたくなっちまった。心より詫びるぜ、ごめんなさい』と、伝えた。


「ああ。もう構わないさ。

 貴殿らも怪我はないか?」


「あんな程度の怪我なら、あっしらの自然治癒スキルですぐに完治ですぜ」


「それで、ギルド創設だが、条件がいくつかあってな。

 リーダーが冒険者として実績が3年以上、もしくはBランククエストなら50件、Aランクなら20件、Sランクなら5件以上クリア。

 もしくは、リーダーが資金が金貨100枚(100万円)を持ち、メンバーがさっきの条件をクリアしてないとダメなわけだ。

 新人冒険者が無闇に自分達だけでギルドを作り、危険を冒して無駄に命を散らさないようにするための仕組みだ」


「なるほど、それなら私たちがギルドを作れないのも理解できる」


「じゃあ、ステラとパパは、どこにいけばいいの?」


 行こうと思えば、勧誘しようとするギルドは多く、選びたい放題なのだが、どれでも良いわけじゃない。

 ステラたちにも目的があるので、貴族の護衛や情報屋、運び屋など、場所が決められてたり、役割を与えられてそれをこなし続けるようなギルドはダメだ。


 肩書目当てだけのギルドや、採取系ギルド、リーダーの意向で目的地が決まってしまう開拓者ギルドもダメだ。

 かと言って、モンスター討伐を生業にしたギルドも場合によっては作戦から外されてしまうので動きにくい。


「どうしたものか……」


 ゼティフォールが周囲の目を順番に見て考えていると、そこにプラチナの全身鎧を着た冒険者がやって来た。


「…………」


 その冒険者が来た瞬間、静かに佇んでいるだけで空気が引き締まる。


 ──只(・)者(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)。



 アレキサンダーに怯まなかったゼティフォールも、一瞬でそれを理解する。が──


「……妙な親近感がある。

 ──吸血鬼(同胞)か」


 全身鎧に身を包んでいて素顔はわからないが、なぜか仲良くなりたい衝動に駆られるこの感覚は間違いない。

 この者は、吸血鬼だ。


「こんにちは!

 だっこして」


 ステラもなぜかめちゃくちゃ懐いているし確定だ。


「こくこくっ」


 するとどうだろうか、凄まじい気迫を放つその吸血鬼は、口を開く代わりに大きく頷いてステラを仰々しく抱き上げたではないか。

 そして、どこからともなく木製のボードを取り出して、こう語った(筆談)。



『〜ようこそ、ギルド"ステルセント"へ〜

 ゼティフォールさん、ステラさんよろしくお願いします。聖騎士フレアより』



 そう、この者こそ、吸血鬼でありながら殿堂入りするレベルの光属性の使い手である聖騎士フレアだった。



『冒険者になる為のの代金と、装備品を手配したのも僕ですし、お二方の目的も知(・)っ(・)て(・)い(・)ま(・)す(・)ので、ステルセント加入を断る理由はないと思います』


 そして、ステラとゼティフォールの伝説級装備、冒険者になる手配、ついでにご飯の代金まで用意してくれた恩人も、フレアだった!



「理由というか、絶対に断れない状況ではないか……」


「フレア、よろしくね!」



お話を読んでくれて ありがとうございます。

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