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魔王の娘が勇者様!?時空を超えて世界もパパも救います!  作者: 藤巳 ミタマ


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6話 父性の目覚め……?

 冒険者協会の総合案内に行き、地下一階の新規登録受付に向かったステラとゼティフォール。


 そして、床には魔法陣が描かれ中央には水晶が置かれたテーブルと椅子だけある部屋に通された。そんなシンプルな部屋なのに、魔法陣が放つ淡い光が荘厳(そうごん)さと神秘的な空気を作り上げている。



 温厚な雰囲気の白いローブを着た男性職員が水晶に触れて少しの間調整し、準備が整った所で2人に向き直って口を開いた。


「こちらの水晶に触れていただきますと、魔力量、身体能力、現時点での才能、そして職業適正が映し出されます。

 そして、そのデータがマザークリスタルに送られ、魔法で冒険者証が発行されます」



「マザークリスタル?」


 ステラが首を傾げながら、職員さんとゼティフォールの方を交互に見る。


「……私も冒険者になるのは初めてだから、マザークリスタルというものは知らぬ」


 ゼティフォールも分からないことを伝えると、職員さんは軽く頷いて快く答えた。



「この部屋にある適正審査の水晶の他に、冒険者情報やギルドの情報を保管する水晶、クエスト情報が保管される水晶など色々な水晶が冒険者協会にはあります。

 そして、そのデータの全てを集約管理するのがマザークリスタルですね。あと、先ほど申し上げました通り冒険者証を発行する機能を持つのもマザークリスタルです。

 あと、有事の際はこの建物を覆う結界も張れるんですよ」


「便利なものだな」


「ふうん」


 水晶とマザークリスタルの機能を聞いた2人はそれぞれ納得すると、水晶の置かれるテーブルに着いた。



「では、どちらからする?

 ステラが先にやってみるか?」


「ううん、パパのをみたい」


「そうか。

 ならば、私からさせてもらうとしよう」


 先にどちらを登録するかが決まると、職員さんが水晶に手をかざして魔力を送った。すると、水晶が起動して柔らかな光を放つ。


「では、どうぞ触れてください」


 職員さんに促されゼティフォールが水晶に手を触れさせる。


「む……!?」


 物理的影響はない。魔力を吸われているわけでもない。

 だが、なぜか手から何かが吸われているような感覚におちいる。


「いまゼティフォールさんの情報を読み取ってますからね。

 ……ほう、魔法の才能があるようですね。特に闇属性、次に光(・)属性でしょうか。

 他の属性も並の魔法使いより適性がありそうです」


 職員さんの言葉を聞いたゼティフォールが得意げに頷いた。


「まあ、私なら当然だな」


 勇者の件とスミスたちに絡まれた件で削られていた自己肯定感が回復していくのを感じる。

 光属性も得意になっているのは、過去で勇者に聖なる光をお腹からぶち込まれたからだろう。



「…………あ、すごいですよ。

 魔法適正も素晴らしいですが、身体能力も高いですね。

 これなら魔法職に縛られず、武闘家や騎士みたいな近接職を選ぶこともできますよ」


「パパ、すごいね!」


「そうだろうそうだろう……!

 魔法使いは敵に近づかれると無防備だからな、私は昔1人で戦うことが多かったから、師を仰いでまで鍛えたのだよ」


「それは素晴らしい。

 では、これからマザークリスタルと繋げて、ゼティフォールさんの職業適正を診断します。

 まあ、これはあくまでい(・)ま(・)1番適正があるものでしかありません。

 なので、やる気や努力、そして何かのキッカケで才能が限界突破すれば今回算出された職業より良いものが出てくる可能性も十分あるので、気楽に聞いていただけたら幸いです」


 つまり、やりたくないモチベーションの上がらない1番目より、めちゃくちゃ楽しくてモチベーション爆上げの2番目や、何か特別な思い入れのある3番目の方が、最終的に爆伸びして強くなれるかもしれないのだ。


「分かった」


「では、いきますよ……」


 職員さんが中指に紫の魔石がついた指輪をはめる。そして、水晶に魔力を送りこむと、水晶が共鳴してその光を増す。


「おお……」


「きれ〜」


 無秩序に放出されていた光はやがて渦を巻き、収束して、水晶の上にひとつの紋章を浮かび上がらせる。

 ゼティフォールとステラには紋章の意味は分からなかったが、職員さんはそれを見て感心したように頷いた。


「……それで、私の職業適正はどうだったのだ?」


 ゼティフォールは柄にもなくドキドキしながら尋ねた。緊張から声が少し掠れていたが、そんな事より結果を知りたい気持ちでいっぱいだ。


「はい。

 ゼティフォールさんの適正職は……魔──」


「……魔?」


 思わず声を被せてしまうゼティフォール。

 これで『魔』ときたらアレしかないだろう。

 そう、魔(・)王(・)だ。なにせ、ゼティフォールは力を奪われたとはいえ元々魔王なのだから。

 魔王、そう魔王。魔王に違いない。

 かつてゼティフォールは己の力だけで魔王にまで上り詰めた。


 つまり、力を奪われたとしてもまた魔王に返り咲けるに違いないのだ。

 そして、そのワクワク感を胸に次の言葉に耳を傾けた。



「──魔法剣士です!

 おめでとうございます!!

 魔法使いと剣士、それぞれをエキスパートまで使いこなす上級職。

 それを基本職をマスターせずに素の状態で就けるなんて、これは凄まじい才能ですよ!」


「パパ、すごいの?

 おお〜!

 やったねパパ!!

 パパはね、ちょっとよわくなったけど、でもねでもね、ステラはつよいってしんじてたよ!」


 魔王じゃなかった。が、職員さんとステラのとっても嬉しそうな賛辞を無碍(むげ)にできず、ゼティフォールは柄にもなく話を合わせて場を保つのだった。



「は、ははは……!

 そうだろうそうだろう。私もなにか、日頃から才能を感じていたのだ。

 しかし、まさか初めから魔法剣士になれるなんて、さすがの私も喜びを隠せないぞ」


 そうして、ほんのちょっぴり虚しさを覚えながら、ゼティフォールの職業診断は幕を閉じたのだった。




 ● ● ●



 次はステラの職業診断をしたのだが、これは職員さんの想定を大きく上回るものだった。

 ゼティフォールはその強さを目の当たりにしてある程度覚悟はしていたが、それでも感心せざるを得ない。


「──ステラさんは闇も得意みたいですが、何より光魔法が凄まじい!!

 たしか、伝説級の冒険者である聖騎士フレアさんが、光属性の才能がすごい数値を叩き出して殿堂入りしているんですが、もしかするとステラさんはそれに並ぶかもしれません。

 ……いや、まだステラさんは小さいですし、これからの成長しだいで才能の上限が伸びるかも……。

 そうなればフレアさん越えも……?

 ──まあ、可能性のひとつですがね。

 身体能力もA級近接職冒険者に匹敵するレベルです。

 ……これは、職業の適正も期待できますよ〜!」


 職員さんはまるで自分のことのように喜んだ。

 自分が担当する冒険者が、伝説級冒険者のタマゴかもしれないのだから当然か。


「わたし、すごい!?

 ……パパ、ステラがすごいって!」


「そうだ。

 フレアという者は知らないが、伝説級と言われているからにはその才能が抜きん出ているのだろう。

 それに、ステラの能力を目の当たりにした私からすれば、確かにこの評価になるのも納得だ」


 ゼティフォールに褒められたステラは嬉しくなり、笑いが込み上げて思わず顔を綻ばせてしまう。


「むふふ〜っ。

 そうかなぁ?」


「ああ、そうだ。

 良かったなステラ、嬉しかったな」


 ゼティフォールはそう言いながら、心の中で何か感情が燻(くすぶ)きているのを感じた。


「そろそろ結果が出ますよ」


「なにかな、なにかな〜!」


 ステラの期待、職員さんの緊張、そしてゼティフォールの不安を受けた水晶は、神々しい光と共にマザークリスタルの出した"答え"を映した。



「──ステラさんの適正職は……勇(・)者(・)です!!

 ……って、ええええ!!?

 ゆ、勇者ぁああ!!!!」


 職員さんは予想だにしていなかった結果に、驚きのあまり椅子ごとひっくり返ってしまう。


「ゆーしゃ〜!!?

 ステラが、ゆーしゃなの!?」


 ステラは困惑するが、それと同時により嬉しくなった。

 お話に聞く勇者はパパを助けてくれなかったが、自分が勇者になればちゃんとパパを助けることができるからだ。


「……勇者、か。

 宝珠に選ばれたからには才能があるのは分かっていた。

 ただ、宝珠ありきの強さでもあると思っていた。

 だが、考えを改める必要がありそうだな。

 ……ステラはただ選ばれたのではなく、その力を使いこなす才能を持っていたからこそ、宝珠がステラの元に渡ったのだと」



 マザークリスタルの診断が発表され、状況を分析すると、ゼティフォールの燻っていた感情は確かなものになる。


 ──ステラは自分の才能を超えているかもしれない。



 脳裏にそんな考えがよぎる。仮にステラが本当に娘だとして、己の才能を受け継いでいるのは理解できる。

 だが、それを実際に目の当たりにすると、ゼティフォールどうも冷静さを欠きそうになる。


 ……客観的に見るべきなのだろうが、できない!

 ゼティフォールはとうとう我慢できずに己の中に渦巻く感情の炎が爆発してしまう──


「さすが我が娘だ。私を超えるなんて、親孝行の鑑だ!

 素晴らしい!!

 ステラが最強なのだ!!

 知っているか?

 この子は私の娘でな、才能もさることながら心遣いもできる自慢の娘なのだ!

 ふふふふ……はーっはっはっはっ」



「あ、ゼティフォールさん、どこに!?」


 嬉しくなったゼティフォールは職員さんの引き留めなど耳に入らず、途中から部屋を飛び出して、可愛い我が子(仮)を抱えながらステラの自慢をし回ってしまう。



「ステラの、この子の適正職が何かわかるか?

 ──勇者だ!

 私を超える逸材かもしれん!

 素晴らしい孝行娘だ!」



 吸血鬼は同胞との絆を重んじる。……と言うより、甘い。そんな性質が垣間見えたゼティフォールなのだった。






「ぱ、パパはずかしいよぉ〜……」



 今日という日は、ステラにとって恥ずかしくも嬉しい忘れられない日になったという。




 

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