35話 久しぶりのギルド
魔法の鍛錬で何かを掴めた次の日は、討伐系クエストで実践、成長を確かめるのだ。
──そして、エクスプロージョンノヴァを砂漠でぶっ放してから何日も何日も修業を繰り返す。
何か掴めたら討伐系クエストで実践、問題と課題ができたら練習と修業、そしてまた実践。
そのおかげでステラもコントロールが上手くなり、ゼティフォールの魔法防壁も凄まじくカチカチになった。
……そう、そこまでに達するには数えきれない試練があったのは言うまでもない。
……まあ、あえて言うが。
魔力切れを起こしても死にかけても、ブラッドクッキーで無理やり回復してゼティフォールは自身をスパルタ育成。
ただ戦うより格段に強くなった。少なくとも魔法に関しては。
そして、ステラも最後にはエクスプロージョンノヴァを手のひらサイズにまで小さくしたり、効果的に範囲を広げたり、威力をあえて下げてコスト削減するまでに至る。
* * * * *
そして、とある朝の事。
修業でまた成長を感じたステラたちは、今日また討伐系クエストを受ける事にした。
余談だが、フレアは相変わらずAランクなどの高難易度の依頼を受けて朝早くから出かけている。
「──パパ、はやくはやく!」
ステラは地下に続く階段で、のんびりコーヒーブレイクをしているゼティフォールを急かす。
「まあまあ、そう急がなくてもルチアは逃げないさ」
魔法で映像が流れる新聞に目を向けたまま、ゼティフォールは慌てる様子もない。
「そうじゃないでしょ!
ママがかなしむよ?」
「……うぐっ。
そう言われたら弱いのだ」
ゼティフォールはバツが悪そうに顔をあげる。
渋々コーヒーを飲み干すと、ささっと準備を済ませていった。
● ● ●
敵に見つからないようにするため、ルチアは時の狭間の神殿に身を潜めている。
だから、会いたくてもステラにもゼティフォールにもフレアにも会えない。と言う事で、ステラの提案で毎日朝食後と夕飯時に神殿に転移する事になった。
「……よし、準備はできたぞ」
以前、ゼティフォールが筋肉痛の魔法バージョンになった時、転移するのが億劫になりルチアの所に行かなかったことがある。
その次の日に行くとルチアは始終元気がなく、妙に優しく、声に覇気もなかった。
そして、ゼティフォールとステラの間に入って、何をするでもなく、2人が帰るまでそっと袖を掴んでいたのだ。
それからゼティフォールはルチアに優しくなり、距離も少しだけ縮まったとか。
「──じゃあ、行くよ?」
地下に用意した転移の間。
床に描かれた魔法陣にステラが触れると、それに共鳴して光を放つ。
「ああ」
光に包まれると、ゼティフォールとステラは時の狭間の神殿に転移していった。
* * * * *
「──ルチア、来たぞ」
ゼティフォールとステラが神殿内に用意された魔法陣から現れると、ルチアは部屋からバッと飛び出して2人の元へ翔けてきた。
「ゼティ、ステラ!
きょうは紅茶のスコーンを焼いたから、道中お腹が空いたら食べて!」
袋に詰められたスコーンを嬉しそうに見せて、ステラのウエストポーチに丁寧に詰める。
「ありがとうママ。ステラ、スコーン大好き!」
「お外でジャムやクロテッドクリームを塗るのは難しいから、しっとりめに焼きあげたのと、中にジャムが入ったものを用意したのよ」
ルチアは今まで料理はしたことがなかった。
しかし2人に会ってから、来るを待つ間の時間が今までと違って途轍もなく長く感じてしまい、その間の気晴らしと、2人が喜ぶものを用意したいと思い、こうしてお菓子や料理を本格的にするようになったのだ。
最初こそ素人ゆえにへたっぴだったが、さすがこの星を作り出した女神と言うべきか、物作りは得意なようで、1週間もすればプロも唸るレベルの腕にまで上達していた。
「ありがとうルチア。
君のお菓子とかお弁当はなぜか魔力と体力も回復もするから、とても助かってるんだ。
なにか隠し味でも入れてるのか?」
ゼティフォールが尋ねると、ルチアは意味深に笑い、こう言った──
「──愛、よ……!」
冗談か、ルチアの愛にそんな効果があるのかはさて置き、その後ステラたちの予定を伝えた。
● ● ●
「──では、そろそろゼティはB級の依頼を受けても良さそうね。
魔法防壁や得意な魔法ならA級にも通用しそうだけれど、今の時代での実戦経験が少なすぎるから、賢いモンスターや格上と戦うのはまだ早いわ」
「分かった、今日はB級で依頼を探すとしよう」
「ステラはゼティが無茶しないように見ててあげて」
「はーい!」
方針が決まると、ステラとゼティは神殿から屋敷に戻り、依頼を受けるために一度街に向かった。
「では、また夕飯時にフレアとおいでなさいね──」
* * * * *
以前ギルドに来た時から2人は成長していた。
ステラは最初から凄まじかったので相変わらずだが、ゼティフォールは目紛しい変化と成長を遂げていた。
ならば、どうなるか?
そう……評価も変わる!
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──
「……おいおい、あんな奴ギルドに居たか?」
「さあ?
あんな金髪で真紅の貴族服のハンサム、知らねえな」
「……それにしても、すげえオーラだ。A級にも匹敵するんじゃないか?」
「あっちの小っこいのは勇者だろ?」
「見た感じは魔法剣士か」
「……つまり、あいつは──」
「ゼティフォールさんです」
その一言でざわつくギルドを静かにさせたのは……黒ライオンの獣人、アレキサンダーギルドマスターだった。
その目には感心と関心が混じり、ゼティフォールがどんな存在かを見透かすようだった。
「……ふむ、どうやら私の強さに恐れ慄いているようだな……ふっ」
そんなアレキサンダーの反応を知ってか知らずか、ゼティフォールは得意げになりながら受付に向かう。
「ようこそステラさん、ゼティフォールさん。今日はどんな依頼が良いですか?」
「えっとね、パパが強くなったからB級の依頼を受けるんだって」
「そうだ。
私の魔法ならA級にも匹敵するだろうが、私は慎重派でね。
まずはB級依頼で力を試したいのだ」
ルチアに言われた事をまるで自らの言葉のように言うが、ここにツッコミを入れる人は居ない。
「慢心しては危険ですし、熟練した冒険者ほど慎重になりますからね。
良い傾向です。
……では、B級依頼をご紹介させていただきます」
受付の人がクリスタルに触れると、依頼の一覧が半透明なホロパネルに映し出される。
そして、そこから一つ選び取り、台座に置くと一枚の紙になって現れた。
「……なになに?
魔王歴の時代にあった砦の跡に巣食うアンデッドの対処、か」
「アンデッド?
じゃあ前のデミリッチとか、いるのかな?」
ステラが首を傾げていると、ゼティフォールが依頼内容を確認して伝えた。
「いや、デミリッチではなさそうだ。
……デスネクロマンサーとスケルトン、ゾンビ、ゴーストの大軍だな。
デスネクロマンサー自体はB級、他はC級とD級の弱いモンスター。……だが、少なくとも3桁の大軍か」
雑魚は雑魚でも、100を優に超える群れとなると、いくらゼティフォールが強くても苦戦が強いられる可能性が高い。
この依頼は、ランク以上の試練になるだろう──────
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