34話 帰還と鍛錬
金属粘土のプレゼントを渡してお土産話をルチアに話し、仲を深めながらステラは温かいひと時を過ごした。
しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
正確には、時の狭間は通常とは時間の進みが違うのだが、ステラたちには使命があり、ここでずっと留まるわけにもいかない。
「──ではそろそろ行くよ」
今後の指針ややるべき事を決めた一行は、ルチアに別れを告げ、転移魔法で帰ろうとしていた。
「ステラ、フレア、ゼティフォール……くれぐれも気をつけて」
ルチアは名残惜しそうにしながら順番に目を向けると、優しく微笑んで見送る。
「ゼティフォールさんの事は任せてください。
ステラさんの事はゼティフォールさんに任せます」
「ええ、ゼティフォールは結構抜けてる所があるから、的外れな事を言っていたら容赦無く教えてあげて」
星の勇者である18歳ステラとも、4歳ステラとも会い、いろいろ手掛かりがあり、しかも父親という立場なのに気が付かなかった所と、
ルチアの好意を全て歪曲した解釈をして気が付かなかった実績を持つゼティフォールは、『抜けている』と言われても文句は言えないだろう。
ルチアも直接的な言葉を言わないのは問題だが、ゼティフォールは小学校低学年の男子なみに恋愛に対して鈍感であり、仮に『好き』と伝えてもピンとこないので、仕方ないと言えば仕方ない。
「ママ、またくるね」
ステラは柔らかく笑うと、ルチアの手をにぎにぎしてから離れた。
次回からは直接神殿に転移できるので、会おうと思えば明日にもまた会える。
寂しいが、会えることが分かっているので笑顔でバイバイできた。
* * * * *
ギルド『ステルセント』の拠点……つまり、フレアの屋敷に帰ってきた。
ゼティフォールの目下の目標は足手纏いにならない程度に強くなる事、
敵への決定打を得るために宝珠を使って魔王の力を手に入れる事だ。
ステラは聖杖シャイニースパークの扱いを上手くなる事だ。
シャイニースパークルが聖剣グローリアになるにはステラ自身が勇者の光の扱いに慣れ、使いこなし、精神的に成長する必要があるため、地道な練習が不可欠。
ただ、グローリアは光の力の扱いに特化するのに対して、シャイニースパークルは魔法が超強化し、コントロールもし易くなる。
状況に応じて使い分けが可能であり、それこそが強さにもつながるだろう。
「……つまり、私と戦った時にステラは本気ではなかったのか!
なんで凄まじい……!」
そう、グローリアが弱いわけではないし、めちゃくちゃ強いのだが、シャイニースパークルの強みも使わずにそのままゼティフォールを倒してしまったのだから、本気ではないのは確実だろう。
「ステラ強い?
でもね、パパをたおした勇者ステラより、今のステラの方が強くなるからね。
……次の文字教えて?」
あれから数日が経っていた。
相変わらず朝食後にお勉強の時間を過ごし、ステラはたくさん文字を書けるようになっていた。
「そこはな……『倒す』だな。
そして『聖騎士』だな」
ゼティフォールは難しいか簡単かではなく、普段使うものやステラが気になる文字を優先して教えている。
それは魔法にも言える事で──
● ● ●
魔法練習だが、ステラは容赦がないのでわざわざ何もない荒野に来ていた。
「いくよ!
──エクスプロージョンノヴァぁぁあああ!!!!」
──キィィィィイイイン………………シュッ……ドッッゴォォォオオオオオオオオンッ!!!!!!
まさに小型の星が大爆発したかの様な凄まじさだった。
灼熱によって砂漠の砂は赤熱し、ドロドロに溶けて結晶化して爆風でそのまま消滅。
山ですらすっぽりおさまる程巨大なクレーターができあがる。
次に、爆発によって空気が消し飛ばされ真空状態になったかと思うと、その反動で周囲数kmのものが空気ごと吸い寄せられ……。
──第二次爆発。
無差別にかき集められた砂や岩やガラス、ゴミ、草木、金属たちが中央の一点に集められたと同時にぶつかり、あまりのエネルギーと圧縮に耐えきれず一度目の爆発に劣らない威力で爆発を起こしたのだ。
エクスプロージョンノヴァの後には元の環境は戻って来ない。
ただ、今回は死の砂漠。
超広範囲から集められたあらゆる物が混ざり合い、結果として栄養のある大地になり、数年後には緑が芽吹く土壌ができていた(ガラスも混じっているので手で触れると危ないが)。
……ま、環境的には結果オーライなのかもしれない。多分。
余談だが、本来の魔法使いが使うエクスプロージョンノヴァの範囲は東京ドーム一個分ぐらい(だいたい直径220mの範囲爆発)だし第二次爆発も無いので、ステラの魔法がどれだけ破格なのかがよく分かる一発だった。
「……なるほど、今の最大威力がこれか。
申し分ないな。
あとはただぶっ放すだけでなく、威力と攻撃する位置のコントロールをして、味方に当てない様にしたり、出力をそのままに範囲を狭めてしてダメージを伸ばしても良いかもな」
ゼティフォールは懐かしかったのと同時に嬉しかった。
これほどの凄まじい威力の魔法が使えたのは、魔王歴では自分と魔法に長けた幹部ぐらいなものだ。
だからこそ砂漠はめちゃくちゃなのに、ゼティフォールら実家の様な安心感を感じていたのだろう。
「ええ……せまくするの?
むずかしいな……。
今日はもう少し、やっていい?」
「もちろんだ。
今日は依頼を受けてないからな。
ステラの魔法を利用して、私もついでに魔法防壁の鍛錬をするよ。
当てたくないところを避けて敵にはより効率的にダメージを出す。そこが1番難しくて大切なところだからな。
これができたらひとまず、一人前と言って良いだろう。頑張るんだぞ」
「分かった!」
そしてステラとゼティフォールは夕飯時まで、魔法の鍛錬に精を出すのであった。
お話を読んでくれて ありがとうございます。
良いなと思ったら 気軽に
ブックマークと ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎(ポイント)を
よろしくお願いします。




