31話 星の勇者の正体
「──ゼティフォールは、もう星の勇者に助けて貰っているわ。
なにせ、星の勇者は18歳のステラなんだから」
そう、そうだったのだ。
力を託したのも、何故かゼティフォールを以前より知っていたのも、この時代のゼティフォールの動きを知り、事前に準備できていたのも……ステラだからだ。
「……ステラの血の魔法、聖杖シャイニースパークルが、勇者の聖剣グローリアの持ち手に酷似していたのはそう言うことか……!」
よくよく考えてみれば、仮面をつけてて顔は見えなかったものの、ステラが好みそうな純白のドレスアーマーを着ていたし、女神の使いである勇者だらと気にしていなかったが、黄金の翼もあったはすだ。
それに、気を失う前に『わたしが助けるから』と言う言葉、それは4歳のステラが助けると言うことなら納得できる。
ステラに助けられた後ディアマンテにて、あの瞬間ゼティフォールがお店に来て、お金が使えないこと、装備がない事、ギルドに入ろうとする事、拠点が必要な事……ステラだから事細かに知り得たのだ。
──大切なパパとの思い出だから。
18歳のステラが助けに来なかったのは……いや、助けに来れなかったのは、4歳のステラが来るからか……。
「……いや、待て。
未来の私のところにはステラが来なかった。それはなぜだ?」
未来のゼティフォールには助けが来ず、重症を負い、そのせいで後手後手に回って、勝ち目も先んじて封じられ、ルチアも封印、ゼティフォール自身も。
「無数の選択肢から分岐した未来で、ステラが生まれたのは1回だけ。
つまり、ゼティフォールと共に過ごしているあの子だけなの。
そして、あの経験を経た妾と貴方じゃないとステラが生まれない。……偶然だけれど」
「偶然?」
首を傾げると、ルチアは気恥ずかしそうに顔を背けつつ、ゼティフォールの頬をビンタした。
「……見ないで!」
「ぐはぁ!?」
正確には、恥ずかしがっている顔を見られたくなくてそっと顔を背けさせただけなのだが、力量差がありすぎてビンタのようになっただけ。……なのだが、そんな事はゼティフォールには伝わらない。
なぜなら、ゼティフォールは鈍感だから。今まで敵対してきた事もあるが、ゼティフォールは恋愛より戦いが好きだし、そういう甘い雰囲気になるのも経験がないので、ルチアがなぜ急にビンタしてきたかなんて察する事もできないのだ。
でも、やっぱり分からない1番の理由は鈍感だから。
「貴方と妾がその……夫婦になったのは、前回の時間軸が初めてなのっ……!」
「……ああ、なるほど?」
「分かっていないでしょ!
妾は何度も何度も時間を繰り返し、敵と戦ってきた。
その中で唯一、あなたと結婚できたのが……この世界の一つ前。ステラが生まれた世界なの」
「……ステラの存在が今までとは違うイレギュラーなのは分かった」
そう、分かったのはそれだけだ。
そんなゼティフォールに調子を狂わされながらも、ルチアは気を取り直して詳しい説明をする。
「……こほんっ。
ステラは当初、一つ前の世界のゼティフォールを助けようとしたけれど、そうすれば途中で時代改変が起きてステラが生まれなくなる。
生まれない未来に書き換えられたら、ステラは勇者にもなれないし結局助けられなくなり、ただステラがいない世界になってしまうのよ。
消えてしまいそうだったから、無理やりステラが生まれる時代まで戻したの」
つまり、助けようとすればステラが消えてしまうので、助けたくても助けにいけなかったのだ。
ゼティフォールを助けに行こうとしたものの、矛盾が生じてステラは消えかかるるが、ルチアの力でステラの身は守られる。
その結果、勇者が魔王を倒したけど、未来では勇者が現れなかったし、18歳ステラは存在しない。という時代の矛盾が生じたのだろう。
ステラが消えないようにする為には、時を遡ってやり直し、ステラが生まれた状況に戻すしかない。
「……私が助けられてるのは大丈夫なのか?」
助けられなかった、元のゼティフォールとここにいるゼティフォールの違いはなんだろうか?
その言葉を聞くと、ほんのり朱に染まった頬がすっと冷える。
「元の世界を消したの。
消したから……ステラ特異点になり、時代から切り離されて時代の矛盾に左右されずに生きられるようになった」
「消し……た?」
ゼティフォールは目を見開く。
つまり、ステラはもし時空を超えて元のパパとママの所に戻ろうとしても、もうどこにも帰る場所がないという事だった。
この世界はステラにとって過去ではなく、ある意味パラレルワールド。誰かに干渉しても何をしても、もう元の世界に影響がない。
「なぜだか分かる?」
ルチアの目は遠くを見ていた。それは、彼女も決して望んでそうしたわけじゃない事を物語っている。
「時代を繰り返し、敵と戦ってきたと言ったな?
それが関わってくるのか?
あと、ルチアは封印されていたし、ステラは確認できてないらしいが未来の私は最後に姿を消したとか」
消えた後どうなったのかは、ルチアの表情から察するのはゼティフォールにとって容易だった。
「敵は貴方を倒した後、奪い取った魔王の力を利用し最強のアンデッドにして星のほとんどを焼き尽くした。
その際に封印が弱まり、妾もなんとか脱出できたわ。
でも、得体の知れない力で妾の力が使えないようにする敵と、アンデッドにされた夫に襲われて、なんとか倒せたものの……瀕死の敵は姿を消し、残ったのは灰になったゼティフォールと、半分消滅した星、生命のいない死の大地だけだった」
「……そこまでして、敵に何のメリットがあるんだ」
「妾は最強よ。でも、敵の目的は妾ではなく支配。
だから、今前はあやつらにとっても失敗なのよ。……こちらにとっても、失敗だけれど。
妾が時空を超えて、この違う時代の世界に飛べば元の世界の抑止力もなくなり、妾の通った時空転移の魔法陣を再構成して通り抜けてくる」
つまり、世界を消して時空を転移しなければ、新たな時代にやってきてボスが増えるのだ。
一体だけでも狡猾で厄介なのに、二体になればどうなるのか……考えたくもない。
「だから、記憶をこに時代の妾に移して、元の世界の妾は世界ごと消滅した……。
……だから、ステラにとっての元のママとパパはどちらも生きていないのよ」
ステラがパパを助ける。それだけのために背負った業は、想像を絶する重さだった。
両親を助けるためには、一度両親を見殺しにするしかない。
星の勇者として対峙したステラは何を思ったのだろうか?
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