27話 ステラの魔法
「──できた〜〜〜っ!!!!」
フレア邸に突如として響き渡る歓喜の雄叫び。それはあまりに大きく、周辺の小動物が驚き腰を抜かすほど。
「……え!?!
もうできたんですか!!」
お昼寝をしていたフレアが雄叫びによって飛び起き、パジャマのまま転がりながらリビングまで駆けてきた。
「うん、でけた!!」
フレアの顔を見ると、雄叫びの主は意気揚々とそれをかかげて見せつける。
「本当にできてる!!
さすがs……ステラさん!!」
フレアはステラの周りで小躍りしながら喜んだ。
「ふ……ステラの才能に加え、私が本気で教えたのだから当然だ」
ゼティフォールが得意げに笑う。
「本気で?
本気で教えてどうにかなるもんなんですか?」
血の魔法は吸血鬼族に備わる特殊魔法。
本来それは、己の深層心理に眠る爆発的な力に呼びかけて、暴走しないようにゆっくり発現させるものだ。
その血の魔法が高位であればあるほど危険で、才能がある者ほど扱えるようになるまで時間がかかる。
ゼティフォールのブラッドルビーも、宝珠クラスの魔法触媒を自ら作れるという最上位クラスだったので、いくら才能があると言っても7歳になるまで使えなかった。(普通の魔石は簡単な規定の魔法のみだが、宝珠は大きさや質量さえ伴えば、オレの考えたサイキョーの魔法を使えるという代物)
「私が習得するのに感じたことや疑問を先んじて解決しつつ、こうだったら良かったのになと思うことを網羅し、退屈にならないように工夫もしたのだ」
その工夫が利いたのか、ステラは今もごきげんだ。
「あたまの上でこ〜ねこね♪
おかおのまえでも、こ〜ねこね♫
血の魔ほうをつくりましょ〜ふふんっ♩」
パパから教えてもらった血の魔法のお歌を口ずさみ、ステラは自分の血の魔法で作ったそれを振って遊んでいた。
「子供向けの劇を見まくり、保育所に行って子供の喜ぶ接し方を聞き、話すだけでは伝わらないと知った。
この『こねこね体操』は、魔王としての格好良さを引き換えに生み出した、ステラに血の魔法を教える最高傑作だ。
──素晴らしい!」
ゼティフォール自ら小躍りしながら『頭の上でこ〜ねこね♪』と全力で歌ったのだから、ステラとしては面白くないはずがないのだ。
「楽しいのは大事ですよね。
僕は物覚えがあまり良くなかったんですけど、師匠が色んな切り口で楽しく教えてくれたのを思い出しました」
フレアは懐かしむように微笑んだ。
「良い師匠だったのだな、星の勇者は」
戦った時の激しい姿、突然救世を頼んできた姿、そしてなぜか名残惜しそうにしていた姿。
孤児だったフレアを引き取って育てたなんて想像もできなかったが、フレアの表情を見たらそれが説得力を増す。
きっと、良い親だったのだろう。
「はい……。
今も尊敬してますし、憧れです」
星の勇者の話になってふとゼティフォールが気付いた。
「ふむ……」
「どうしたんですか?」
「ステラの血の魔法の手持ち杖だが、既視感があると思っていたのだが、ようやく思い出した。
刃こそ無いが、これは確実に……」
ゼティフォールは昨日フレアからもらった剣のアクセサリーを見て目を細める。
「──聖剣グローリアだ」
ピンク色だし展示室にあったものより当然綺麗ではあるが、翼モチーフの鍔がついた聖剣の持ち手にそっくりだ。
「はい、色を白っぽくしたらそのまんまですね」
「偶然なのか、必然なのか……。
深層心理に刻まれるほどステラが気に入ったのか、それとも勇者に選ばれた時点でそういう形になる運命だったのか」
真相は分からない。しかし一つ言えることは、その魔法の杖が魔法少女のステッキにしか見えないという事だ。
「──パパ、これのつかいかたおしえて!」
思案するゼティフォールに、ステラが駆け寄ってきた。そう、血の魔法は杖を出すだけではない。
杖の形として具現化したのだから、当然魔法の触媒になる。
「ああ、分かった。
…………なるほど。私のブラッドルビーは消費して自分でも使えない魔法をも発動するのだが、ステラのものは消費型ではないし、使えない魔法までは発動できないのだな」
「よわい?」
ステラがパパのお膝で不安げに尋ねると、ゼティフォールは慌てて首を横に振る。
「……ああ、すまない。言い方が悪かったな」
そして、気を取り直して説明した。
「ステラは状態異常系魔法が苦手だが、これを使ってもそれを使うことはできない。
しかし、この杖はその元々使える魔法をさらに強力にして発動したり、追加効果を付与したり、扱いにくいものを自在に扱えるようになるんだ」
「すごい?」
「ああ、凄まじいぞ。
ステラは光魔法やこの前教えたダークブラストは得意だろう?
今まではひかりを爆発させるしかできなかったが、杖を使えば威力が桁違いに上がるのはもちろん、ダメージを与えずに浄化したり、光を圧縮して高密度の刃にしたり、好きな形に変えたり、なんなら可愛い色に変えたりもできる。
ダークブラストは中級闇魔法だが、上級魔法のデモンエクスプロードに深化させたりもできるぞ」
つまり、魔法の杖は魔法を発動する時の補助であり桁違いの増幅器なのだ。しかも、それを使用者の負担なく、扱いやすくまでしてくれる最上級の触媒だった。
まさに魔王の娘に相応しい血の魔法である。
「おお〜!!
すきなことできるの?!」
ステラはテンション爆アゲでパパにしがみつきながら聞く。どうやら、やりたい事があるようだ。
そして、ゼティフォールはもちろんその答えを知っている。だから当然──
「ああ」
肯定。
「何をするんですか?」
フレアが尋ねると、親子は顔を見合わせて同じ得意げな笑顔で答えた。
「「──魔法少女をする……!!」」
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