24話 贈り物
「そ、それで……ルチアは何と……?」
ゼティフォールは固唾を飲んでルチアからの言伝を待つ。そして、ディアマンテはこう言った──
『時間稼ぎは辞めなさい……。
今の貴方が少し強くなったところで、妾には勝てません』
「ひぇっ……!?」
観光して、ステラに血の魔法を覚えさせて、その間に実力をつけてやろうという魂胆は丸見えだったのだ。
そんな、会うのは後回しにしようという、ゼティフォールの姑息な作戦はルチアに完全に見破られていた。
いや、見破られない方がおかしいのだ。なにせルチアは時を司り、未来や過去をチョチョイと見通せるのだから。
『ただし……』
ディアマンテは言葉を続けた。何か条件を緩和してくれるのだろうか?
「ただし?」
固唾を飲んで言葉を待つ。
『本日の観光と、血の魔法を教えるところまでは許す……と』
「……そうか。それが許されるなら、しばらくは……。
──ちょっと待てよ?」
時間稼ぎをするなと言われたのに、血の魔法を教えて良いと言われた。
一見、猶予が与えられたように見えるが、相手は何が起こるかを事前に見通せる女神。
ならば、その答えは──
「ステラはまさか、すぐに血の魔法を習得するのか!?」
己の娘が自分以上の才能で嬉しい反面、全力パワフル女神のおもてなしが明日か明後日には迫っていると言う事実に複雑な気持ちになってしまう。
『我が賜わった言葉はそれだけだ。
その代わり、預かり物がある』
ディアマンテが手をゼティフォールの方に向けると、ルチアからの預かり物が飛んできた(ゼティフォール談)。
「……これは…………で、ディアマンテ!
其方が安易に動くと、その……巨大だから動くだけでと、突風が……!!」
ディアマンテからしたらほぼ手渡しなのだろうが、27kmと190cmでは凄まじいサイズの違い故に、少しの風でも起きればそれは爆風。
飛んできたそれも隕石かな? ってレベルの急速落下で落ちてきた。
『ああ、すまぬ。
最近は細かな作業が苦手でな。老眼なのである』
「苦手だからって──」
──ズドォオオオオオオオン!!!
「これは、あんまりだぁああ!!?」
「ゼティフォールさぁああああん!!」
「あ、パパがまた飛んでった」
隕石(比喩)の着弾による衝撃波で、またしてもお星様になるゼティフォールなのであった。
● ● ●
「──復活してから、散々な目に遭ってばかりだな……」
吹き飛ばされながらも、何とか転移魔法で帰還したゼティフォールは、疲れたようにため息をついた。
『……本当に、申し訳なかった』
ディアマンテが頭を下げてまた突風を起こしてしまうが、あの衝撃波を受けた今では、もはや突風すらそよ風のようなもんである。まあ、髪の毛はボサボサだが。
「贈り物が何だったのか見ましょうよ〜……」
フレアが痺れを切らしてゼティフォールの手を掴んでフリフリする。
重装鎧のゴツい騎士が甘えたような態度を見せるのはシュールだったが、中身は儚げのな赤目銀髪の美少女だ。
「そうだな、見てみよう」
「ママからのプレゼント、なにかなぁ〜?」
ワクワクする2人を横に、ゼティフォールが慎重に包みを広げた。
「……これは!」
ゼティフォールが目を見開く。
「魔石、ですか?
いえ、すでに魔法が付与されてるみたいなので宝珠ですね。効果はなんでしょうか?」
そう、魔石に魔力と魔法効果を付与することで宝珠になる。
そして、この包みの中に入っていたのは、真っ白な宝珠だった。
「ママのにおいがする〜」
『ゼティフォールならば、いずれ使えるだろうとの事だ』
「私ならば……?」
その宝珠に手を当て、観察し、魔法効果を確認していく。
「パパ、なにかわかった?」
「…………これは、このままでは何も発動しないし、使うこともできない」
「え、じゃあ魔石としても、宝珠としても使えないってことですか?」
「そう、このままではな。
自己強化系神聖光魔法が付与されているのだが、その上から時間魔法で魔法陣を完全に固定化している。
しかも女神の力だからな、覇王ですら魔力を流しても使えない代物だろう。
……しかし、発動したところで効果自体は低いようだ」
そんな厳重にもかかわらず、強化できるのはせいぜいゴブリン1匹が仲間になる程度の戦力強化。誰も欲しがらない。
「じゃあ、なんで時間魔法まで付与して使えなくしてるんですか?」
「……これの本質は、時間魔法を解除して強化する事じゃないのだろう。
私の推測が正しければ、時間魔法と光魔法を両方とも利用する。しかも、この宝珠を発動するのではなく、とある闇魔法との併用で真価を発揮する」
「とあるやみまほう?」
「血の魔法と闇魔法を掛け合わせた真紅の闇だ。
今はそのダークローズは使えないが、もしこの宝珠と共に使えば……宝珠は新たな形に生まれ変わる。
……私がかつて初歩しか使えなかった魔王の力。初歩ですら世界征服できたのに、それを凌駕し真の力をする力を発揮させる神器。
そう…………」
光と闇……しかも上位属性の2つを完全に融合し、時間魔法で固定化する。
そんな常識をひっくり返すどころか、新たな神話を作るような偉業を成し遂げ、生まれるその神器。
人々が憧れ夢想し、神ですら追い求めた至高の存在。
「──聖杯だ」
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