23話 女神様は見てる
時間いっぱい使ってフレアは展示物の説明と思い出を語り、ステラに星の勇者の良さを伝えた。
好きに至るには時間が少なかったようだが、なんとか苦手意識はなくせたようでフレア的には御の字だ。
「まさか、師匠とゼティフォールさんが戦った時に吹き飛んだ魔王城の破片まで展示されてるとは思いませんでしたね」
「まあ光属性と闇属性、相反するふたつの属性の影響が、消えずに混ざり合ってる不思議な状態だったし、魔法研究の分野でも貴重な資源なんだろう」
他の属性と違って闇と光は喰らい合うので両立するのが極めて難しく、魔王歴の時代は再現するのは机上の空論として断じられていた。
今でもまだ解明はされておらず、成功すれば膨大な魔法エネルギーを得られると言われている。
「そんなにふしぎなの?」
「不思議ですよ。
普通なら食べたら無くなるのに、食べても無くならないどころか一気に食べない限り増やし続けることができる夢のクッキーみたいなもんですからね」
「おお〜!
クッキーたくさんたべる〜」
「ま、それをコントロールするのが難しいのだがな。
ちなみに、魔王の力の極地がそうなると言われている」
「言われている?
ということは、ゼティフォールさんが魔王の時はその域に達してなかったってことですか?」
「そうだ。
魔法、魔力、マナに干渉して自在に扱い、相手の魔法や加護を消したり、複合魔法を扱えた。だが、光と闇は複合できなかった。
進化の魔法を使った第二形態の状態の私でもな」
それほど難しい技術だったようだ。
だからこそ、500年経った今でも再現できていないのだろう。
「パパにもむりだったの?
でも、パパならきっといつかできそうなきがするよ」
根拠はない。しかし、ステラはなんんとなく確信しているような口ぶりだった。
その発言にふたりはそれぞれ言葉を失うが、やがてゼティフォールが気を取り直して口を開いた。
「……まあ、不可能だと決めつけなければいつかできるかもな。
さあ、そろそろ向かうぞ」
「そうですね」
こうしてゼティフォールたちはディアマンテ王が待つ謁見の間に向かうのだった。
* * * * *
「──先日挨拶した時、私ですら驚いたからな。2人とも期待して良いぞ」
ゼティフォールが楽しげにそう言いながらクソデカ扉を開ける、すると──
「……え?」
「あれ、ディアマンテ王が居るんですよね?
どこ?」
キョロキョロ見回しても、それらしい人は見つからない。
巨人なら門番さんが200mだったし、多めに見積もって500mだろうか。軽く見上げても目の前にあるのは天まで続く柱が2本あるだけだった。
「くくく……そうだろう?
そうなるであろう?」
ゼティフォールは嬉しそうに笑う。
「…………わかんない!
パパ、どういうこと?
イジワルしないでおしえてよ」
ステラが痺れを切らしてボヤくと、ゼティフォールは満足したのか天を指差す。
「もっと上だ。しっかり上を向いて目を凝らして見ろ」
「うえ?」
ステラに続き、フレアも顔をほぼ90度上に向けて目を凝らした。すると──
「い、いた〜〜〜〜!!!」
「巨人どころか、巨人の巨人。まさに、クソデカ巨人じゃないですか……あわわわ……」
そう、ディアマンテはデカすぎた。
ディアマンテからすれば、巨人ですらホビットの子供みたいなものだ。
柱だと思ってたのも、めちゃ長い脚。
どうやって作ったのか分からない、真っ赤な鎧に身を包んだ鬼のような形相の巨人がそこに居たのだ。
「実はまだ成長期らしくてな。というか、炎の巨人の特にスルト族は死ぬまで成長期で大きくなり続けるそうだ。
とは言ってもディアマンテほど生きたスルト族は他に居ないがな。
まあ、それも先日本人から教えてもらうまで知らなくて度肝を抜かれたよ」
そして、そのディアマンテの身長は約27kmもあるので、謁見の間に当然入りきらない。
なので、実はこの空間は謁見の間ではなく、そこから扉を通して転移でやって来た、元居た星の衛星に建てた特別な空間なのだ。
つまり、だだっ広い誰もいない別の星にディアマンテが居るって事だ。
「……謁見の間に現れないんじゃなくて、大きすぎて入れないから出てこれなかったわけですか」
「おかおが、よくみえないね」
『──時の女神の使者よ、よく来てくれたな。
我こそディアマンテ。
女神から其方ら宛に言伝を賜っているぞ」
その声は、恐ろしい見た目とは裏腹に優しく慈愛に満ちたものだった。無害で温厚な、おじいちゃん。
「言伝……?」
ゼティフォールは冷や汗を垂らす。
最後にルチアからの言葉を聞いたのは500年前で、その時は『妾が貴方の時代を終わらせてあげましょう』だった。そして、実際に星の勇者が現れ、宣言通りゼティフォールの時代は終わってしまったのだ。
その前も『ゼティフォールを光に染めてあげましょうか』だの、『跪いて赦しを乞いなさい』だのと物騒な事を言われてきたし、出会えば致命傷になりかねない光を纏ったタックルや、防御無視で炸裂するビンタなど、本当にゼティフォールに容赦がない方である。
しかも、それを嬉しそうな顔でするのだから、ゼティフォールにとってルチアの存在はトラウマもんだった。
「ママからなにかきいてるの?
やった〜!!」
「ルチア様からなんて、今日は幸運です!」
脂汗と冷や汗を流すゼティフォールとは裏腹に、ステラとフレアはドキドキワクワクカーニバルもいいところだった。なんなら、ステラは小躍りまでしちゃっている。
「そ、それで……ルチアは何と……?」
ゼティフォールは固唾を飲んでルチアからの言伝を待つ。そして、ディアマンテはこう言った──
『時間稼ぎは辞めなさい……』
「ひぇっ……!?」
観光して、ステラに血の魔法を覚えさせて、何ならもう少し実力をつけるまで会うのは後回しにしようという、ゼティフォールの姑息な作戦はルチアに完全に見破られていた。
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