22話 かつての仲間と思い出
文化遺産、一般公開国宝展示室にゼティフォールたちが入ると、深く滑らかなイケボが一行を歓迎した。
「お待ちしておりましたよ、魔王様……」
しかし、そのイケボはシュッとしたエルフでも美少年の人間でも、人を魅了する悪魔でもなかった。そう、声の主は──
「ほほほ、ほね〜!?」
「スケルトン……?」
そう、フレアのいう通り声の主は人型骨アンデッドのスケルトンだった。
しかし、野原や遺跡で見かけるような骨がかけてたり、ボロい鎧を着てたり、半裸のスケルトンではない。
それどころか、煌びやかな日緋色の軽装鎧を着た立派な騎士だった。
「パパ、てき!?」
ステラが臨戦態勢に入るが、慌ててゼティフォールが小脇に抱えて静止する。
「こら、辞めなさい。この者が私の古い知り合いなのだ」
「そうなの?」
ステラが首を傾げるが、その疑問には当のスケルトンが答えた。
「はい、元魔王軍近衛騎士団長ローランです」
「魔王軍発足の時から居た最古参だ。
当時魔王の力を世界征服に利用しようとした人間の王が居たと教えただろう?
その王の騎士だったのだが、野望を知るや、一部の兵士と騎士を連れて真っ先にこちら側に着いてくれたのだ」
まだ人間全体を憎まず、冷静にその王とだけ事を構えていた頃のゼティフォールを支えた功労者である。
そして、ローランは元人間でもあるので、仕えていたのはゼティフォールの闇堕ち前。
「あの頃の陛下は、魔法王の力を使い土地を甦らせ、民を悪いモンスターから守護し、人間だけでなく知能ある者たち全体に理解を示す良き王……になる器でした」
ゆえに、こんな反応になるのも仕方なかった。
「……ローラン、幻滅させてしまったようだな」
「はい。まさか俺の死後、かのバルド王の野望を自ら体現するなんて愚行をするとは思いませんでした。
勇者歴になりスケルトンとして復活した際、そんな事実を聞いて困惑したものです」
小さくため息をつく……とは言っても、息は出てないが。ローランはそう言いつつもこうして協力してくれているのは心境の変化があったからだ。
「じゃあ、なんでゼティフォールさんに会ってくれたんですか?」
「魔王様が星の勇者との戦いで魂が浄化され、宝珠と使命を引き継いだとの話は市井にも広まっていますし、実際にルチア様もお許しになったと聞き及んでいます。
ルチア様が許したのに、信徒である俺が許さないなんて傲慢な事はできません。
それに、先日再会して以前の陛下に戻られていた事は把握しましたからね」
目の前のゼティフォールが世界征服をした悪の帝王なのか、正しい魔法で世界を導く賢王なのかは、側近であったローランにとって見極めは容易だった。
「じゃあ、パパの敵じゃない?」
「はい」
その返事に躊躇いは無かった。
「よかった〜」
ステラはほっと胸を撫で下ろし、握っていた拳も開いた。
「この方が、新しい勇者ですか?」
「そうだ。
……そして、私の娘だ」
「なるほど。
それで陛下の表情が昔より柔らかいんですね。それに、娘さんが勇者なら、敵対するとこも無さそうだ」
ローランは緊張を緩めて肩の強張りがなくなる。
「……では、この金貨を展示するのだろう?」
ゼティフォールから金貨袋を受け取ると、ローランは中身を見て懐かしげに笑う。
「この金貨、建国した際に皆で意見を出し合って作ったんでしたよね。
ま、ブラッドドラゴンが駄々を捏ねて、ドラゴンのモチーフになったんですが」
「……ブラッドドラゴンは倒されても死なずにタマゴに戻るはずだし、現代でもどこかで元気にしていると良いな」
「はい……」
かつての仲間の健勝を祈り、ローランは展示ケースに丁寧に金貨を並べていった。
● ● ●
「──これが、今回金貨を寄贈して頂いた協力金です」
ローランが小さめの宝箱を開くと、そこにはぎっしり現代の金貨が詰められていた。
「おかねたくさんだねえ〜!
いっぱい、チーズたべたい!」
「こんなに良いのか?」
「はい。
ディアマンテ王のご意向ですので。今後の資金にお使いください」
炎の国の王ディアマンテも、ゼティフォールが覇王と事を構えていることは知っているようだ。
「それなら、ありがたく頂こう」
ざっと見積もっても、金貨数百枚はある(一枚1万円ぐらい)。
「そうしてください。では、展示室を見るのは自由ですので、9時半までに謁見の間に来てください」
そう伝えてローランは元の仕事に戻っていった。
「……ゼティフォールさん、この部屋すごいですよ」
兜越しにもわかるぐらいニヤニヤと嬉しそうな声だ。
「何がすごいんだ?」
ゼティフォールが尋ねると、フレアは待ってましたと言わんばかりに嬉しそうに手を引き、目当てのものの前まで来た。
「これ!
星の勇者が実際に使ってた聖剣の持ち手!」
「それは本当か!?」
ゼティフォールがガラス越しに目を見張ると、羽のような形のツバがついた乳白色のグリップが展示されていた。
「……刃は付いてないが、確かに本物で間違いない。
こうして冷静に見ると、ずいぶんメルヘンなデザインなのだな」
それは、まるで魔法少女のステッキのようでもあった。
「かわいい〜!」
ステラはこのデザインを気に入ったようで、もう顔面がガラスに密着してしまっている。
「懐かしいです……。
過去にこれを見たのは一度きりですが、僕を助けてくれた時に師匠はこれを携えてたんです。
その時の師匠の姿が格好良くて、聖剣にも憧れたから僕も聖騎士を目指したんですよ」
「へえ〜。
ゆうしゃはすきじゃないけど、せいけんはステラもすき」
その正直な反応にゼティフォールは少し苦笑いを浮かべた。
「他にも魔王歴の遺物と、勇者歴の初期の品が沢山ありますよ。ステラさん、一緒に見ましょう。師匠の良さを伝えたいです」
「うん、いいよ」
こうしてフレアたちは時間いっぱいまで展示室を楽しんだのだった。
お話を読んでくれて ありがとうございます。
良いなと思ったら 気軽に
ブックマークと ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎(ポイント)を
よろしくお願いします。




