21話 使えるツテは使っちゃお
ゼティフォールたちはお土産という名の、ルチアに渡すためのお礼の品(女神様へのお供物?)を買うためにディアマンテの街に来た。
ま、本当に助けてくれたのかは分からないが、仮に本当に助けてくれていた場合、その恩を返さなければ恐ろしいことになるだろう。
なにせルチアは、デミ・リッチどころか世界を一掃しかけたあの浄化の光を、怒ったら平気で使うバーサーカーみたいな存在なのだ(ゼティフォール談)。
「観光しながらお土産を買えば会った時に話題にも困らないし、ただ高いお土産を渡すより、思い出と気持ちがこもって嬉しいはずだ」
ゼティフォールはステラの手を引きながら目的地に向かう。
「ママもうれしいの?
じゃあきょうは、いっぱいあそぼうねっ」
楽しくなったステラはパパの手を握ったままフリフリした。
「それで、どこに向かってるんですか?」
日光を遮るためにフル装備のフレアがゼティフォールに尋ねた。
余談だが、今日はお出かけなのでキラキラした装飾でデコレーションされたピンク色の鎧である。
「やはり、ディアマンテといえば世界最大の城だろう。
聞くところによると、一部の区域を除いて一般解放され、予約をすれば謁見の間にも入れるそうだ。
……もちろん、予約済みだ」
ゼティフォールはドヤ顔でそう言った。
「おしろにはいれるの!?
やった〜!」
「え、ちょっと待って!?
倍率が高くて結構難しいのに、予約が取れたんですか!
中には2年待ちとかの人もいるのに!
ず、ズルですか……?」
フレアは怪訝な声色で尋ねた。
ゼティフォールが目覚めて2年どころか、1ヶ月も経ってないのだから、普通は予約が取れるはずがないのだ。しかし、さすがはゼティフォール。脅威の方法で予約を取っていた。
「魔王歴時代の金貨を大量に寄贈することで、展示エリアの立ち会いを依頼されてな。
関係者として一日自由に出入りできるそうだ。
その後、少し短い時間だがディアマンテ王が直々に会ってくれるとさ。
まあ、昔のツテも少し使わせてもらったが」
一般人にはできないズルだった。
それこそ、時代を築いた魔王の特権である。
「じっ、でいあっ、でぃあまっ、ディアマンテ王が!?
ここ半世紀は誰とも会わなかったあのディアマンテ王が……!?
僕も一度も会ったことがないのに……」
建国時やまだ国として安定していない頃はよく民と言葉を交わしていたそうだが、国が大きくなるとその役目は担当の大臣が引き継ぎ、次第に謁見の機会も無くなっていった。
外交で半世紀前に使ったのを最後に、今では観光スポットとして使われている。
ディアマンテ王はまだ存命ではあると言われているが、どんな状態なのか、なぜ姿を見せないのかはシークレットだ。
「ディアマンテ王さまって、すごいの?」
「ああ。きっとビックリするぞ。楽しみにしておけ」
ステラのその純粋な目を見たゼティフォールは嬉しくなり、ネタバレをせずに会ってその感動を味わってもらうことにした。
「──さあ、着いたぞ」
ゼティフォール一行が城門につくと、ステラは最初の驚きを見せた。
「はわわわ……!!?
おっきいねぇ……」
高さ500mもあるミスリル鉱の門、門番は200mの巨人、城壁は800m越え。高さ2km、端から端まで行くのに50kmもある超巨大な城なのだ。
観光客も数えきれないほど城の前に待機している。解放が朝10時からなのであと1時間、事前に並んでいるのだろう。
「すごいだろう?」
「何回見てもすごいですよね。
毎年引越しシーズンに、あまりの大きさに圧倒されて漏らしちゃう人がいるから、春にはオムツや下着が売れるそうですよ」
「だから売店がたくさんあるのか……」
ゼティフォールが周囲を見回すと、オシャレなパンツや大量セットのパンツ、オムツの投げ売り、高級セレブオムツなど、色んなレパートリーのパンツの売店が立ち並んでいる。
きっと、実際に漏らす人が利用するだけでなく、ディアマンテ城に来た記念のお土産として買う人が多いようだ。
「おパンツいらない。
オムツも、ステラはそつぎょうしたしいらない」
どうやらステラは気に入らなかったようだ。ちらっと見ただけで興味なさげに視線を外した。
『──お客人、入ってください……!』
その時、地響きみたいな重厚感のある声が降ってきた。門番の巨人さんだ。
一般解放時間前に金貨の展示を済ませ、特別枠で謁見をする手筈になっている。
「時間か。いくぞ」
「「は〜い」」
城の中に入ると、豪華絢爛な装飾やインテリア、オブジェがふんだんに使われた内装なのだが、やはり目を引くのはその規模感だ。
廊下に目をやると、あまりの長さに端っこが霞んでよく見えないし、シャンデリアもその粒ひとつだけで5mもあり、それがたくさん連なっている。
本体の階段は一段の高さが40m、2階に行くまでそれが20段もある。
ちなみに、その横には人間用の階段も用意されているが、途方もないので利用者は少ない。なので、登り降りは基本的に転送魔法陣を使う。
ステラが見惚れている間に、ゼティフォールは近くにいた人間の兵士といくらか話をすると、一度ステラ達に向き直って声をかけた。
「ステラ、フレア、金貨の展示中は展示室を自由に見ていいそうだ。
私たちの時代のものもあるはずだから、気になるなら見てみるのも面白いかも知れないぞ」
いくらツテがあるといえども、普段はこんなに警備は緩くない。
それほどゼティフオールの関係者がこの場所で信頼されているのであろう。
「パパのじだい?
パパがこどものころのやつ、あるかな〜?」
「ゼティフォールさん、本当にどんなツテを持ってるんですか?」
ワクワクのステラとは裏腹に、フレアはゼティフォールにそこ知れない恐ろしさを感じていた。
「ま、すぐに分かるさ。なにせ、この先で待ってくれているのだからな……!」
実力では勝てない分、ここで見直されて得意げになったゼティフォールは、軽やかな足取りで展示室まで先導するのだった。
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「お待ちしておりましたよ、魔王様……」
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